古い相棒

2015-04-12 20.12.33Mod210何年もの間、お蔵入りになっていた靴を掘り出した。この靴と一緒にアジアのいったい何カ国くらい行ったことだろうか、、、

1990年の春、大学院を終えてアメリカを発つ前に買ったASOLOのRambler Sというバックパッカー・ブーツ。本格的な登山靴ではないが、トルコのイスタンブールからチベットのカイラス山周回巡礼路を経由してラサまでを陸路で移動するのだからと、あらゆる地面、舗装路も地道も山も河原も歩くことを前提に選んだ。

チベットを目指す途中で高地順応のために立ち寄った北パキスタン、フンザ周辺の日帰りトレック、特にウルタル氷河を訪れた時は通常のアプローチではなく切り立った岩壁断崖に刻まれた水路沿いの狭い小径も不安なくこなせた。

結局は行かなかったが新疆の西域南道からケリヤ川を遡上し崑崙を越えてチベット、チャンタン高原を経由した場合、2週間は補給なしで歩くつもりだったから靴は命綱、デザインや軽さより堅牢性が大事だった。その後の別の旅、モンゴルでもネパールのムスタン・ローマンタンでも信頼に答えてくれたから、期待通りのオールマイティーな靴だった。

旅のあいだ山ばかりではなく舗装路も多く歩いたので、すっかり踵がすり減りソールの凸凹も低く丸くなっていつの頃からか履かなくなったが捨てられなくてしまいこんで、その後すっかり忘れていた。。。

若いころ履いていたハンス・ワグナー(今はハンワグという)の、昔ながらの縫い付け製法のソールは張り替えたことがあるが、Rambler Sはセメント製法(接着剤で靴底を着けてあるタイプ)。以前、「伝説のバックパッカー」の異名を取りチベットやインドヒマラヤ、北パキスタンで濃いフィールドワークを行ってきた友人のT君に、何度もソールを張り替えた歴戦の山靴を見せてもらうまで、うかつにも僕はセメント製法の靴底は貼り替えができないと思い込んでいた。

2015-04-12 20.10.56Modしかし、さっき発掘した僕の靴を見ているうちに、なんとか復活させたいと思った。いま履いているキーンのトレッキング・ブーツ(写真左側)のソールが去年の旅以来、剥がれる兆候を見せているから、その次の山行き靴にしたいと。。。 たとえ貼り替え料に軽くて慣らし履きも要らない今どきの山靴が買えるくらいかかるとしても。

今から古い相棒との山の旅を夢見てる。


『エクアドル報告会』 鉱山開発はいらない!!

昨日の日曜、京都の堺町画廊での「エクアドル・インタグの鉱山開発を考える実行委員会」の一井リツ子さん、一井不二夫さんの報告会に行ってきた。

『エクアドル報告会』
鉱山開発はいらない!!

森と大地と共に生き、抵抗する住民たち
~南米エクアドル・インタグ地方で起こっていること~

日時:4/12(日)PM3:00~5:00
場所:堺町画廊

民衆運動の支持を得て政権についた南米エクアドルのコレア大統領の反米、反新自由主義政策について、ぼんやりと革新的な社会改革をやっているとか教育に力を入れているくらいしか知らなかった。

しかし、インタグ地方での環境、共同体社会、家庭と個人の生活の破壊を「合法的」に推し進める政府と国営企業の銅鉱山開発のむちゃくちゃなやりかた(どうむちゃくちゃかはこちらのブログを読んでください)を一井さんたちから聞き、一面的な知識の危険さを再認識した。

教育に関してもSANE:「エクアドルの子どものための友人の会」の杉田優子さんの報告では、教育の無料化や機会均、無料給食等とは裏腹に、昔、社会構造を考慮しないで「教育改革」を推し進めたソビエト連邦やモンゴル人民共和国の混乱を想像させるものだった。

皮肉なことに、というか、問題の根が深いのは、まずコレアがこれまでの「泥棒」のような大統領ではなく、専制独裁的であっても少なくとも理想的な憲法の錦の御旗の元に改革を行っているということ。あまりにも酷すぎた過去の権力者よりは「まし」だということで、今も全国的には支持を受け「改革」を推し進めている。

しかしそれは、前述した第一世代の社会主義国がその成立からあまり時間を置かずに理想とはかけ離れて民衆を弾圧していった轍を踏んでいるように見える。さらに進んで、それらソ連、モンゴルの社会主義体制が崩壊した後に起きた貧富の差の拡大やそれに伴う教育の不平等化を見ると、シベリアの奥地、ゴビの辺境の子どもたちにも教育の光が当たっていた社会主義時代のほうが、ストリートチルドレンのいる社会よりは「まし」であったとも言えるかもしれないこと。。。

お話の中でも出てきたが、インタグなど一地方での開発や教育の問題がエクアドルの国民にどこまで理解されているか、振り返ってみると日本における沖縄の基地問題と類似した状況ではないかということ。。。

幾重にもややこしい話を重ねてしまったけど、昨日の2時間ほどの短い報告を聞きながら思ったのは一言ではとても言えない複雑な思いだった。

2015-04-12 23.57.15Mod 2015-04-12 23.54.44Mod帰りにエクアドルのフェアトレード・チョコレートを買った。乳化剤を使わず、カカオ栽培からチョコレートの製品化まで全てエクアドルで行われている、フェアトレードとしては珍しいケースだそうだ。いろいろ種類があったなか目についたのは「Nib」という名のココア豆のクランチが入ったのを選んだ。クランチの歯ざわりは今まで食べたどのナッツとも違う、不思議なサクサク感があった。美味い。地球の裏側への僕ができるささやかな協力。2015-04-12 23.59.18Mod