バイオリンのネック角度修正

後付けの前置き:この記事へのアクセスが増えてきて、若干不安になっている今日このごろ。。。僕はバイオリン製作の職人ではなく、ただの彫刻家。ここに書いてあることも「シロート」の日曜大工仕事の域を出ないものです。真似してもうまくいくとは限らないので、ゆめゆめ参考などになさらないほうがよろしいかと、、、
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バイオリンのネックが弦の張力に負けて角度が無くなってきた。そうなると指板の下端が表板に近づいて「指板下がり」という状態になり、指板と弦の間隔が広がってとても弾きづらくなる。そこで角度を元に戻す手術を施した。

指板下がりを矯正するにはいくつかの方法があるが、今回やったのは、ネックを全部外さずに裏板の出っ張り「ボタン」とくっついたままで胴との接着を剥がし、そこへ楔を入れてそのまま接着してしまう、というやつ。文字で説明すると長くなるので写真を。

今日の午後はこの作業で潰れた。首の大手術といえば僕自身のの頚椎脊柱管狭窄を思い出す。。。、6年前に頚椎を3つ、4つごっそり削り取って、そこへ腰骨を移植し、ボルトで留めた。僕は普通の人よりずっと早く恢復してたけど、それでも退院まで数週間かかったし、リハビリには数ヶ月を要した。ネックにノミを打ち込んで隙間を開けて木片を移植した今回の作業は、ほんとによく似ている。

しかし、バイオリンときたら、その日のうちに何食わぬ顔で普通に弾けるようになってる。駒も新調したし、弦による指板の削れも均したし、まったく調子がよくなった。(魂柱が倒れるという事故はあったが、それはまあ、可能性として織り込み済みだった)

ネックはこれでまた何年かは持つだろう。自分の首はあと何十年かは持ってもらわないとこまるけど。。。


「バイオリンのネック角度修正」への5件のフィードバック

  1. ありがとうございます^^
    ご無沙汰しておりましたが、報告です。
    クサビ方式で角度修正成功しました。以前のネック修理で使われていたのは、普通のタイトボンドだったようで、湿らせる・薄いノミで掘り進むの繰り返しで、裏のボタン付近まで到達しました。
    クサビはカエデの端材を入手して切り出し(硬いw)、接着剤は、人生初のニカワにチャレンジして、我ながら完璧に角度と硬化してからの剛性が決まりました。ここで気が緩んだか、指板の復旧で、わずかにズレてしまい、違和感が残ってしまいました。こういうところは、薄めのニカワでやりなさい、という記事を見つけたのは、作業後^^; 再度外す気力がわくまでは、現状で練習します。
    コメントいただいたように、タイトボンドにもニカワ風やウォータープルーフのがあるのを知ったり、勉強になりました。

  2. 「その日のうちに」・・・驚きの技術力です! ペグから弦をはずさずになさっているので、スピード感が伝わってきます。

    最近入手した古いバイオリンが、同じくらい下がっていて、駒を削ってみたものの、まだ弦高8~6mmもあってつらいです。ハードル高いですが、ワタシもくさび方式でチャレンジしたいと思います。ただ、ふるいニカワ?がはみ出ているのを見ると白っぽいのが気になるのですが。。

    1. ちゅうさん、コメントありがとうございます。

      「その日のうちに」というのは、ニカワが如何に速乾性があると言え、本当は無茶な話なんですが、裏板とネックをつなぐボタン部分を剥がしていないところにミソがあります。

      というのは、弦を張ったときにネックの付け根(接着面)にかかる応力はボタン部分が固定されている限り全て押し付ける方向に働きます。極端な話、弦を強く締めない限りは、ボタン部分がしっかりしていたら接着しなくてもネックは外れません。(本当にやっちゃいけませんよ)

      なのでセッカチな僕は半日ほどで一度チューニングをしてみたのです。本当はニカワが乾ききるまで数日は放置しないとクサビが水分で膨らんでいるのでネックの角度に影響が出ます。

      このバイオリンは元々いろんな実験のために買った安物だし、僕自もはバイオリン職人ではないし、もとよりバイオリン弾きでもないから音や弾き心地にもうるさくありません。なので、こんなプロから見たら恐ろしいようなことを平気でやっちゃえるんです。ペグも弦も外さずに作業するなんざ、怒られるようなズボラ加減です。。。

      古いニカワが白いというのはどこでしょうか?ノミを入れたときにネックの付け根にニスの塗れていない部分が露出します。その部分は当然白く木の色が見えますが、それをニカワと思われたのでは?

      このネックを外さないやり方だと当然、ネックと胴の隙間の古いニカワは除去できません。ただ、上記のように「ボタン部分の強度」にひたすら頼って新旧のニカワの接着力は二の次という現実には目を瞑っています。作業してから1年以上経ちますが今の所はなんともありません。

      ただ、、、僕のやり方だと、見た目の角度調整はできますが、ニカワが完全に乾き、実際に弦を張って圧をかけて角度が落ち着くまで、寸度の狂いが発生します。それを見越してやらないといけないのですが、もうそれはカンに頼るしかありません。

      もしも、指板のニカワを外す技術はあるけれど、十分に刃の薄いノミや正確にクサビの面や角度を工作する技術をお持ちでないなら、この方法はおすすめしません。代わりにネックと指板の間にクサビ形の板を挟むやり方のほうを試されるといいと思います。これなら、ネックが微妙に太くなりますが、工作精度は要求されず、ネック付け根の強度にも影響はありませんし、何より工作途中でいくらでも角度の調整ができます。

      1. アドバイス、ありがとうございます。まずは、指板を外してみて、御ブログの方法(ニューヨークリセット?)に挑むか指板下にクサビ形でいくかを検討してみます。
         
        白いニカワ?の件ですが、以前の修理で拭き残してある部分(指板裏)が異様に柔らかく、ひょっとするとニカワではない接着剤を使っている可能性もあるのではと心配しています。ちょうどアメリカのフィドル修理のおじさんが、なんとタイトボンドを使っている動画を見たところで。。

        実は出先におりまして、工具類(薄いノミやクランプ)を家から持ってきてからの作業になります。のんびりやってみます。

        ありがとうございました。

        1. ちゅうさん、返事が遅れてすみません。
          アメリカ製のタイトボンドブランドには製品の種類がいくつもあって、その中にニカワの代替品もああります(茶色いボトル)。また、日本の塩ビ系木工用白ボンドは乾ききっても完全硬化しないので振動が命の楽器に使うのはビミョ~ですが、一番ポピュラーな木工用タイトボンド(薄い肌色)のやつも、乾くとカリカリに固くなってニカワに近い感じがします。(接着剤が柔らかいということなら、塩ビ系かも、、、)
          問題は、これらボンド類はニカワのようにお湯や蒸気では簡単に外れてくれないのです。ヒートガンで炙るとボンドは熔けるけど、木部は焦げちゃうし。(笑)
          フィドル修理のおじさんはおそらくですが、修理のときにパレットナイフや金属ヘラなどを手で触れない程度の(赤熱じゃない)温度に熱して、それを接着面の合わせ目に差し込む、という方法で溶かして外すのだと思います。僕も以前そうやって自分で作ったタイトボンド馬頭琴の修理をしたことがあります。火で炙るとうっかりするとナイフやヘラを焼きなましてしまうので、なれないうちはヒートガンで加熱します。
          ご参考まで。

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