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珍しい業態のパーキング、、、

用事があって珍しく祇園界隈に出かけた。クルマだったんで安い駐車場を探したけど、場所が場所なんで少々裏道に入ってもそんなに安いはずもない。

うろうろして無駄に時間を使っていたら用事ができない。安いかどうかは諦めて適当に行き当たったところにとめようか、、、と思い始めたら、耳にハンズフリーのイヤホンマイクを着けたマウンテンバイクの若者が声をかけてきた。一瞬、真っ昼間に変な客引きか?と思って身構えたが、礼儀正しくちゃんと帽子をとって近づいてきたので、窓を開けて話を聞くと一見感じの良いお兄ちゃん。「駐車場をお探しですか?直ぐ近くに安いとこがあるんで、ご案内しますよ。今、ちょうど1台分だけ空いてますから。」と来た。変な店じゃないけど、やっぱ客引きじゃん、駐車場の。

「今、ちょうど1台分」って都合良すぎね?うっかり優しいお兄ちゃんの話に乗せられたら、後から別の怖いお兄さんが出てきておっそろしい金額ふんだくられるかも、とか妄想が頭に。。。でも「安い」というキーワードのマジックにかかってしまい、抗う言葉も出ずにフラフラとついて行った。

先導のマウンテンバイクを見失わないように追いかけるのに必死でNaviを見る余裕もないまま、裏道をぐるぐる回っているうちに一瞬方向感覚を失ってしまった。鴨川に行き当たってないし、四条より上(かみ)に居ることは判っていても、自分が東西南北どっちを向いてるかもよく把握できないと不安がつのり、そのせいか途中で「安い」マジックも解けてしまい、もしもヤバそうだったら逃げようとさえ考え始めていたほど。

お兄ちゃんがマウンテンバイクを降りた最後の曲がり角には「安い!←P」という手描きのプラカードを掲げたおじさんが立っていた。曲がって直ぐに駐車場に到着すると、待っていたのは強面のお兄さん、、、ではなく、案内してくれたお兄ちゃんと、また「P→」プラカード持った中高年の女性、そこへ直ぐ手前の角で案内プラカード掲げていたおじさんも駆けつけて、都合3名の人が笑顔で出迎えてくれた(笑顔と「安い」プラカードでマジック復活!)。

みんな愛想良く、言葉使いも丁寧。京都郊外の観光地でよく目にする(祇園だって観光地だけど、、、)、駐車場の前でカニのシオマネキのハサミよろしく、延々と手招きしている無表情なおっちゃん、おばちゃんたちや、大手ハンバーガーチェーンでひたすらマニュアルに忠実に「無料の笑顔」を振りまいているロボットみたいなお姉さんたちとは全然ちがかった。

彼らの身なりや立ち居振る舞いにタカビーな祇園とかそんな感じはどこにもなく、その辺の普通の家族のようにも見える。ともかく、気さくに話かけてきて、FIAT 500を珍しがってくれて、まるでウチの近所の人たちと会話してるような錯覚が起きる。よしんばそれが客に安心感を与えるための「営業テク」だったとしてもそれはそれで凄いことだ。けど、とてもそんな雰囲気でもない、、、。(お兄ちゃん、疑ってゴメンチャイ)

ただ一つだけ、僅かだけど微妙な違和感があった。その駐車場はコインパーキングだったのだ。コインパってマンパワーを使わないために自動設備を設置しているはず。それも、たった6台分しかない小さな駐車場で都合3人の大のオトナが案内・接客で働いている、ってどうよ?

クルマのこと、料金のこと、ひとしきり話をし、僕の用事の行き先の方向を教えてもらい、さて歩き出そうとしたら「いってらっしゃい!」と送り出してくれた。もちろんこれには気持ち良さこそあれ、違和感などないのだが、日本中探してこんなコインパーキングってある?という不思議な感覚ではあった。

思い出すのが、コインパではないが、何かを履き違えたコンビニのATM、はっきり言ってしまえば京都市内のファミマのやつを利用すると、システムのハキハキした説明ボイスとは別に、京都弁の若い女性の声で挨拶や礼を言う。そんで、それが異様に暗くてゾッとするんだけど、あまりに度が過ぎて逆に笑っちゃうほど!(数年前にFacebookに上げた動画はこちら、FB見れない人はこちら。あと、黙って釣り銭を投げつけるように吐き出す京都市営地下鉄の券売機。よく「お役所仕事」というが、最近の市庁舎や区役所での「人間」の職員の対応は目を見はるほど改善されているのに、あの不遜な機械の客対応の質はバカ高い地下鉄運賃に全く比例していない。それと比べたら死にかけているような声でも一応は礼を言うファミマのATMの方が百万倍マシだ。どうでもええけど、、、(笑)

そうそう料金といえば、祇園界隈なら近くにある市営駐車場は30分で200円(ただし、土日祝は混んでいてとめられない)だから、件のコインパ料金「30分で300円」というのはムチャクチャに安いというわけでもないが、お兄ちゃんに声をかけらる前に見た表通りのコインパは20分300円だったし、ここに来る途中にあったところは50メートルも離れてないのに後で調べたら15分220円だからそれらよりは安い。

面白いのは「2時間以内最大900円」という不思議な料金設定。昼間の時間帯に普通に2時間とめたら1200円のところ300円安くなる。でもそれを越えたらまた30分ごとに課金される(と看板には書いてある)。つまり、1時間半を過ぎて2時間までの利用なら1時間半の料金900円のままですよ、ということらしい。びったし2時間とめたら30分当り225円となり、安い市営駐車場の料金に近づくんだけど、「一番得する時間帯」がたったの30分間とは微妙、、、。何でこんな料金設定なのかよく解んないけど、まあ今回の用事はちょどそのくらいだったので問題なし。

用事を終えて戻ってくると「おかえりなさい」と出迎えてくれた。で、またFIAT 500をネタに会話が弾む。料金を払おうとすると、パーキングロット番号を見るまでもなく「1番ですよ」と教えてくれて、精算機に千円札を入れかけたら、女性が横に来て「光が点滅しているほうは駐車チケット用なんで、こっちに差し込んでくださいね」と親切に説明してくれる。なるほど、これは間違いやすいだろう。ミスリーディングな精算機は置いとくとして、それを人が補う丁寧さに驚く。そしてまたおじさんとチンクについてのクルマ話をひとしきりして謎のコインパーキングを後にした、、、「また来てくださいね」の言葉と3人の笑顔に送られて、、、。

小規模なコインパって大抵はチェーンの個人フランチャイズなんだけど、彼らはあの土地オーナーの一家なのかなあ。。。狭くて見つけにくい一方通行の裏通という不利なロケーションでは以前からああやって一本釣りで客を引っ張ってきて接客をしなきゃやってけないのかなあ。。。それともコロナの打撃を受けて祇園に来る客が減ってしまい、受け身で何もしない機械だけにまかせてはおけんと、この業態を発案してやり始めたのだろうか。。。

さっき、ここは特段安いというわけでもない、と書いたが、駐車場までの誘導、笑顔の出迎えと送り出し、入出庫の安全確認、料金説明、世間話、土地案内・・・コインパーキングという機械システムには絶対期待できないサービス込みだと考えたら、やっぱ安いのかもしれないな。逆に、1回2時間900円の顧客にこれだけの手間を注ぎ込んで、彼ら大人3人の生活をちゃんと維持できるほどの商売として成り立ってるんだろうか、と心配になるくらいだ。

10年に1回あるかないかの祇園での駐車だけど、もしも次回があればまた同じ所にとめるかもしれないな。そのとき彼らはまだそこにいるだろうか?