告白

恥ずかしくて言えなかったのだけれど、、、以前から、うちの家には僕の親が誘拐同然に連れてきた子供が居て、酷いことにその子は玄関先から内に上げてもらえずにいる。逃げられないようにまるで犬みたいに紐で繋がれて。

実の親ながら情けないのは、親がよそでヤクザと喧嘩して負けて逃げ帰ってきたとき、追って来た奴らにその子を殴らせておいて、自分は家の中で震えていたくせに家族には出て行って追い返せと威張っていたこと。

それに、親は結局どうにも勝てないと悟って平謝りしたんだけれど、喧嘩相手のヤクザの子分が今も玄関に居座って、その子をなぶりものにしている。ご丁寧に、居座っている輩の飲み食いの世話まで家族にさせる始末。

親は、土下座して謝ったくせに今はそれも忘れて家族にまた威張り散らかして、僕らがその子に家族として接しようとするのを邪魔をする。それどころか終いにヤクザと一緒にその子を足蹴にする、、、それでも、その子のことを自分の家の子だと言い張る。全く狂ってるとしか思えない、、、と今は言えるけど、長いこと家ではこれが普通なんだと思っていた。

うちの親もカタギじゃないんだけど、そんな親の元に生まれた僕はこの家から出られずにいて、玄関の柱に繋がれて三和土でうずくまっている子には手も差し伸べることもできないから、親同様に恨まれていると思う。世間ではきっとヤクザな人さらい一家だと思われているんだろうな。

前に一、二度、親が家を出て行き、知らないおじさんが来て家の面倒を見てくれたことがある。少しほっとしたけれど、おじさんはその子や僕に特段なにかをしてくれたわけでもなく、また直ぐ親が帰ってきて元通りになった。

近頃は親からしきりに、外へ行ってヤクザの手伝いでもしてこい、とうるさく言われる。ひょっとしたら僕は知らない間にヤクザの手下にされてしまったのかもしれない。喧嘩や抗争に借り出されるのも時間の問題だろうな。そしたらきっと、玄関から出かけるときにその子を踏みつけて行くことになる。そんなことは死んでもいやだ。

ああ、もう我慢の限界。玄関の子の紐を切って親の寝首を掻き、一緒に逃げようと思う。それよりも、、、このところその子の目つきが違う。たとえ僕が手助けしなくても、近いうちに必ず自分で紐を断ち切って自由になってやる、という意思が感じ取れる。(それにしても、あの状況によく絶えられるものだ。僕ならとっくに気が変になっていただろう。)

何もしてあげられなかった僕も、親と一緒に寝首を掻かれるかもしれない。それは嫌だけれど、仕方のないことかもしれないなとも考えている。


「告白」への2件のフィードバック

  1. スーツ来て、洒落たネクタイして、自由を謳うヤクザに僕らの親は憧れたのかな、犬みたいにその子つないでる僕らには自分たちが繋がれてるその鎖が見えてなくて偉そうにその子の飼い主さん気取り、ヤクザと一緒に吠える気満々だけど、実は僕ら親の背中に「チンピラ」って紙貼って遊んだりしてるんだ。この前は「元ヤンキー先生」って貼ったよ。だけど、ヤンキーに失礼だと思ってやめたんだ。

    1. でも、あのヤクザこそが、実はヤンキーあがりなんだ。頭、パツ金だし、、、。鉄砲もってるから逆らえなし、、、 うちの親なんてチンピラヤンキーどころか、黄色いモンキーさ。

      その昔、うちの親が、ていうか一家で引きこもりだったころ、あのヤクザが突然家にやってきて、無理やりドアをこじ開けて親を引きずりだしたんだ。親もあきらめて一緒に出歩くようになったんだけど、憧れていたのかもしれないし、そうでなかったかもしれない。ただ、いつの間にかそのヤクザと喧嘩できるくらい強くなったと勘違いして、歯向かったらコテンパンにやられちゃったってわけ。玄関に繋がれてるあの子をうちに無理やり連れてきたのはヤクザと付き合い始めてすぐのころのこと。世間見たわしたら、よそでも拉致ってる家はたくさんあるし、それどころか他人の家に土足で上がり込んで、家ごとぶんどってたところも。。。 家の中がこんなのだから、ああ、よその家が羨ましいと思ったこともあるけど、、、最近では、どこも似たり寄ったりだと判って暗澹たる気持ちで、落ち込む。だからもう、親を殺るしかない、という考えがずっと頭の中をぐるぐる回っているんだ。

      僕は最初、親がコテンパンにやられて逃げ帰ってきたとき、実はちょっとヤクザに憧れた。それほど親が情けないやつだったんだ。それに、家に居つくようになったヤクザの子分がコーラだとかハンバーガーだとかを僕らにくれたので、いい人なのかもしれないとさえ思った。でも、玄関に繋がれた子にうちの親より酷いいじめ方をするのを見て、すっかり怖くなっている。なにより、コーラもらって喜んでいたことに、どうしようもない自己嫌悪を覚えるんだ。コーラ飲む僕の姿を見ていたあの子の目が僕の心に突き刺さった。

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