いまどきのラグビーボールは合成素材だけど、昔は革製だった。
初めて触ったのは学生のとき。練習後のボール磨きは、革の上に「ツバ」を吐いて古パンストで擦るという、知らない人が見たらおぞましい方法でやっていた。臭くて不潔な方法なんだけど、不思議にツヤツヤに光る。汗臭い部室に唾液で汚れたパンストが散らかっている風景はあまり美しくはなかったなあ、、、
あれは二十歳の頃の話。その後三十代の後半にも、ウィスコンシン、マディソンのローカルなラグビークラブでちょっとだけプレーしたことがあった。その頃もまだボールは革だった。練習後にどうやって磨いたか、、、思い出せない。ツバじゃなかったような、、、。でもうっかり革磨き剤なんか使ったら伸びてダルマさんみたく変形しちゃうし、スベスベで扱いにくくなる。ツバだったかなあ、、、
ある時、旅の途中でコロラドのアスペンという街を通りがかったらラグビーの試合をやっていた。急ぐ旅ではなかったので車を停めて、ロッキーの澄んだ空気の中、きれいな芝生で行われている試合をずっと観ていた。アスペン、冬は高級スキーリゾートだけど、夏はラグビー合宿で有名な菅平みたいな感じなのかな。
話はそれるが、当時アスペンはメッチャクチャ物価が高くてハンバーガーの値段もL.A.あたりの倍はするんじゃないかというほどで、さっさと通りすぎるつもりだった。そしたら地元のクラブチームとイタリアだったかスペインだったかのチームが戦っていて、そのゲームが面白く、目が離せなくなったというわけ。
何が面白いかというと、アスペンは物価が高いだけでなく「標高」も二千数百メートルと高く、空気が薄いので平地からやって来たビジターは息切れで全然走れない。技術に勝る外国チームを相手に下手くそなローカルチームが互角に戦っていい勝負をしていた。どっちが勝ったか憶えてないが、、、
草ラグビーに毛の生えたようなものだったが、何故か土産物屋の屋台も出ていて、三々五々集まってきた観客がお菓子やグッズを買っていた。僕も、ずっと欲しかったニュージーランド製Adidasブランドのボールを見つけて、思わず散財してしまった。
あれから30年、、、そのボールは前の家でずっと飾っていたけれど、いつの頃か空気が抜けてしまっていた。チューブのパンクを、さっき思い立って修理してみた。大成功。さあ、ツバで磨こうか、、、どなたかパンストくださぁ〜い(変態か、、、)。