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楽器の調整をし始めたらキリがない(from Instagram)
楽器の調整をし始めたらキリがない。
元はと言えば札幌の某馬頭琴奏者がオシラアソバセを言い出して、そういや最近オシラサマ馬頭琴を触ってすらいなかったと調弦しようとした途端に、オシラサマ馬頭琴に文字どおりプッツン切れられたのがそもそもの始まり。
弦と胴皮の修理で足りず、魂柱立て直しやバスバーの新設をやり、そこで止めりゃいいのにネックの歪みも矯正した。これで弦のエクステに無理が掛かる釘を除去できる。が、弾いてみたら高音弦と低音弦で音色が違い過ぎる。これはどの弦楽器でも起こる現象で、それぞれの弦固有の音色を使い分けるのもテクニックなのだろうが、まるで違う楽器みたいな鳴り方はどうも気に入らない。せっかく組み込んだバスバーをむしり取り胴の中でへし折って音孔から引っ張り出した。
魂柱の位置も気に入らないので接着していたものを引っぺがし、あちこち移動させてみたがそれでも高音弦は甲高く低音弦は鈍い音のまま。いっそ魂柱を取ってみれば、と言うのは今まで作った紙や皮張りので全然ダメだというのがわかっている。バイオリン族などの板張り胴の楽器とは魂柱が働くメカニズムが全く違っていて参考にならないから、闇雲に動かしては音を探るしかない。これも嫌と言うほど経験してきている。
バイオリン族が参考にならないと言いつつ、これまでは魂柱を駒の高音弦側の足の下近くに入れていた。魂柱が全く違う理屈で機能しているのなら、いっそ反対側に移してみたらどうなるか、と考えた。以前作った紙張り馬頭琴は魂柱が駒の足からかなり離れて立っていたので、中途半端に弦楽器の知識がある人から、こんな場所に魂柱を立てるのはおかしいとクレームをつけられたことがある。音が出ないのなら話もちゃんと鳴っているんだからそれでいいんだと説明した。知識ではなく、実際にあちこち探ってで見つけた場所なんだから、文句があるなら自分で立て直しなさいって。
オシラサマ馬頭琴は本来楽器に向かない分厚く硬い馬の皮が張ってあるので薄い山羊皮や紙張りより魂柱調整はずっとシビアで、どうもちゃんと音が出るスイートスポットが狭いらしく、楽器の各部をあれこれいじったがためにそこを見失ってしまったようだ。
さて話を魂柱に戻すと、常識とは反対の、バスバーを取り去った跡に立て直したのは正解だった。これで2本の弦の音色の差異がかなり減ったので、今回の調整はここまでということにしよう。本当は低音弦の馬尾毛を少し増やして張力を上げてやればもっといいんだけど…そう簡単に遠野までサムライキング号の尻尾をもらいに行くわけにもいかないし、、、 (from Instagram)