17〜8年前に星泉さんが著して今も評価の高い辞書だが、気づいたときには在庫が無くなっていた。もともと発行部数が少なかったので古書として出てくることも滅多にない。たまにヤフオクとかに高額で出品されていたようで、少々高くても落札したかったが行き当たったことがなかった。
それが偶然、数年前に増刷されていたと知ったのはほんの4日前。また乗り遅れたか、と思ったけど、ダメ元で問い合わせみてみたら「在庫あり」とのこと。さらに、オマケと言う訳ではないが、『古典チベット語文法:『王統明鏡史』(14世紀) に基づいて』と言う星泉さんの新刊も配布されていて、どちらも無料でいただけるとのこと。早速「東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所多言語・多文化共生に向けた循環型の言語研究体制の構築(LingDy3)事務局」と言う恐ろしく長い名前の配布を元に申し込んだ。どういうわけか研究者・大学関係者と勘違いされて送料も免除と連絡があった。チベット研究をやっている知り合いの大学教授と共同編集した大学の刊行物がいくつかあるので、僕まで研究者だと思われたのだろう。チベット関係に限らず、大学や研究所はどこも予算が逼迫している昨今、配布元がそう言ってくれてもこれ幸いと無料でもらうわけにはいかない。丁寧にお断りして、着払いで送っていただいた。
今朝届いて、箱を開けるのももどかしくワクワクしながら手に取って、辞書と文法書を開いた。日本のチベット語研究は仏教を通じて始まったので、古い辞書や文法書はどちらかと言うととっつきにくいものが多いが、送ってもらった2冊はずいぶん様相が違っている。かといって旅行者用の簡易な会話手帳のようなものでももちろんない。星泉さんのお母さんの星三千代さんのチベット語入門書も読んだことがあるが、其処此処に「受け継がれた伝統」のようなものを感じる。