Fiat 500 ヘッドライトの光軸調整について

ユーザー車検で、いつも必ず落っこちるのがヘッドライトの光軸。

オリジナルの白熱電球は光量が足りず、ハロゲンに換えてもダメ。ワット数の大きいハロゲンにしたら、前オーナーに元々おかしな配線改造を受けているので、電圧降下があり、その御蔭で電流不足となって増々暗くなるという、とめどないデス・スパイラルに陥った。そこで少電流でも十分機能するLEDランプにしたのだが、かなり明るくなったものの、ヘッドライトのミラーとの相性が悪く、最大輝度の点(つまり光軸中心)がどこか判然としないのだ。

その原因の一つには、レンズ径が130mmという、チンクのヘッドライトの小ささ。そしてもう一つ、LEDランプの発光素子がある程度の幅のある板状ボディーの両側に別れて貼り付けられていること。つまりランプの中心にあるハロゲンなどの発光フィラメントと違い、LEDヘッドライトでは中心から若干外れたところが発光点になる。そのため、光源から出た光がミラーに反射する角度や拡散パターンが変わり、配光の中央に僅かな暗がりができる。ミラーが十分に大きければ拡散光がその穴を埋めてくれるから暗部もあまり問題にならないのだろうが、ミラーの小さなチンクでは割と露骨に現れてしまう。

知り合いの自動車整備工場で光軸検査してもらうと、LEDはうまく測れない、と言われる。それでも、車検前には、アバウトでいいからと無理を言っておおよその調整をしてもらう。しかし、車検場に行くとやはりダメ。(車検でのライトの苦労はこちら

ヘッドライトの検査は「すれ違い用」(ロービーム)で行うように車検方法が変わったが、古いクルマは以前のまま「走行用」(ハイビーム)で検査。

ここ数回の車検では、LEDライトによって光量の問題が解決した代わりに、新たに光軸の問題が出しまったわけ。車検場でヘッドライトの光軸検査に通らなかった場合に、そのズレの方向と数値を紙に書いて教えてくれる。これまで方向はともかく、距離はヤマカンでやっていた。古いチンクの場合、検査は「走行灯」(ハイビーム)で行われ、10m先で最高光度点が本来の光軸中心から左右に27cm(つまり54cm)の幅に収まる必要がある。たとえば右28という数字であれば、光軸を左へあと1cm以上〜55cm以下の範囲で動かせばいいことになる。しかし、調整用のボルトを何回回せばどれだけ動くか、ということは手元にある幾つかの整備書にも書いてない。

3年前の車検で落ちた時の値は右のライトが左28、去年の車検では右ライトが右27となっていて、当てずっぽうに調整ボルトをそれぞれ5回転することでなんとか再検査を通すことができた。幸い上下については今まで問題になったことはないが、上下の範囲は(ライトの高さが60cmのチンクの場合)幅が25cmと狭く、当てずっぽうが効かない恐れがある。

メジャーの「10」の横にある出っ張りがライトを固定する「支点」となるツメ。その反対側にガタやグラつきを抑えるバネがみえる。右上のボルトは上下、左下のボルトは左右の光軸調整用。

ネジを回せばどんだけ光軸が動くのか、どこにも書いてないなら自分で計算すればいいだけのこと、と、いまさっき思いついた。計算の基になる数字はヘッドライトケースの調節ボルトとライトの固定点までの距離A=10cm」、「調節ボルトのピッチP=0.8mm」、「ライトから投影面までの距離D=10m」で、求めたいのは「光軸の移動距離L=xcm。ちなみに、ピッチとはボルトを一回転した時にそのボルトが軸方向に移動する距離。単位がバラバラだと面倒なのでセンチメートルに統一しておこう。

A=10cm、P=0.08cm、D=1000cm、L=xcm

本来なら、正確を期すためには三角関数で計算することになるが、直角三角形を構成するのに、投影面に垂線を引く基準になるのがライトの固定点なのか、ライトの中心光軸なのか、、、元々がボルトも適当な深さにねじ込んであるので確定できないし、そもそも、車検場でクルマを停めるときに恐ろしく適当なので、正確な計算自体に意味がない。欲しいのはネジを一回まわしたらアバウトどれくらい光軸が動くか、だけである。

三角形の一辺に対し、他の二辺が十分に長ければ長いほどその二辺の長さは同じに近づく。ここではライトの支点と調節ボルトの距離が10に対しピッチは0.08の比率だから二辺の長さに125倍の開きがある。とっても「十分」と言えるでしょ?

なら、大雑把にA : P ≒ D : Lできることから、外項の積は内項の積で、Lが約8cmと導かれる。(図参照)

何のことはない、今まで車検場でドキドキしていたことが、こんな中学1年生みたいな簡単な計算で霧散するとは、、、

そんで、以前、ヤマカンで調節ボルトを5回まわしたことの検証。5回転だから8cm × 5で40cm動かしたことになる。さて、過去の車検2回とも、左右にギリギリ外れていたのを内側へ戻そうとしたわけで、幅54cmある規程の範囲には収まったものの、これが幅25cmしかない上下の調整だったら、、、完全にアウト。(汗)

先日もLEDヘッドライトを前後に移動することで中央部の暗さを解消しようとあれこれいじりたくったので、光軸がまたズレてるだろうから、次回の車検で上下のズレを指摘されるかもしれない。こんな子供だましみたいな計算を知っているだけで、車検場での安心感は万倍になった。(以前は、車検で落ちてもその日のうちなら調節後に何度でも受け直せたが、今はスリーアウトチェンジ。3度目には「別の日にまたおいで」と言われる。これは、現場で光軸調整する時にかなりのプレッシャーだった)