街に下りた帰り、バイクを駆って西に向かうと真正面に月の傾くのが見えた。その斜め下には金星が山の端に近づいていた。
金閣寺付近まで来て空の写真を撮ろうとしたが、すでに煌々と街灯が灯っていて絵にならない。それに、もう金星は衣笠山の肩に掛からんとしている。山に近づき過ぎたのだ。
諦めてそのまま西大路を北上し、鷹ヶ峰の下の千束経由で帰途に。千束は谷底で、金星より少しは高いはずの月も見えない。が、ふと思いついて、昔、若狭へ抜ける街道であった長坂越の旧道の途中に西側の開けたところがり、そこまで登ればまだ金星が空に残っているのでは、と真っ暗な細道に乗り入れた。
先の台風で落ちた杉の葉が敷き詰められ、良い香りの漂う山道を駆け上がること数分。件の場所まで来た時にはしかし、タッチの差で目当ての星は姿を消していた。
ここには建築途中で打ち捨てられたログハウスの残骸がある。その石垣にもたれて、暮れなずんでいる西空を眺めながら、たまたま担いでいたバイオリンを弾いた。
やがて月も沈み、気がついたら真っ暗闇の中。こんな山中の古径を通る人もいないから怪しまれることもないだろうが、独り居ると薄気味わるいっちゃあ確かに気味がわるい。後ろの廃屋の中で誰かが聴いているような気がしてきた。
だいたい何でこんな所でバイオリンを弾いてんだ、俺?と我に返って、そそくさ片付けてバイクですぐ先で交わる新道まで走った。
そのまま新道を鷹ヶ峰へ下って千束に戻り、原谷へ帰るつもりだったが、もうちょっと先の堂ノ庭から見える比叡や京都の夜景でも写してやろうか、とさらに上へ。
きれいに枝は打たれているものの、並んだ杉の幹に遮られて、残念ながら思ったようには夜景を楽しめなかった。まあ、それでもせっかくここまで登ってきたんだしと、いじましくシャッターを押した。(いま見たら案の定、凡庸な夜景写真でしかない。。。それに、所詮iPhoneのカメラだし、、、W)