疑似科学は四月バカのジョークでも許されないの に、光り輝く嘘が「恩恵」をもたらす希望のニュースとして降り注がれる。その対象は病気や災害や社会の軋轢に弱り困り果てている弱者だ。
(1)で「放射能を中和させる方法を発見」という記事への批判を書いたのは、僕の読む限りでは先に書いたような「疑似科学」の特徴をよく備えているからだ。
も ちろん、僕が間違っている可能性はある。がしかし、この話を読んでも、常温核融合やSTAP細胞のニュースに接したときのようなある種のトキメキを全く感じなかった。 逆に、あまり科学的態度ではなく、言ってきたことと矛盾するかもしれないが、読めば読むほど「本能的」にウサンクサイい臭いを嗅ぎとってしまうのだった。
「放射能を中和」(何度聞いてもアホくさい用語だ)する技術が本当にあれば素晴らしい。しかし、今言えることは、放射能を簡単に無害化できるというのは欺瞞だということ。たとえ「中和」なることが事実であったとしても、現段階ではあの記事でも書かれているようにレーザーを溶液に照射するという試験管レベルの実験でしかないし、実用化できたとしても広範囲な土壌に使えるわけでもない。
悲観的だが、現実にはどんな技術をもってしても大規模で完全な 「除染」などできない。汚染地区には住んではいけないのだ。そういう冷酷な状況を作り出すのが原発事故であ り、僕ら人間は自分たちで制御できない技術に手を出し、そして失敗てしまったのだ。
この現実は、真正の科学技術はもちろん、絵空事の疑似科学でもスピリチュアルな「正と負のエネルギーのコントロー ル」でも解決できるものではない。悪意でそれらの元ネタをばら撒いている輩はもちろん、善意だけど無邪気に賛同し、無批判に引用し、やみくもに拡散してい る人たちも、被害者をぬか喜びさせ、政府の「帰還政策」の後押しをするという意味では同罪だ。
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追記: この「放射能を中和させる方法」という未検証の実験報告が、そのメカニズムを理解しない人たちや、そもそも科学的な思考を持ち合わせていない人たちによって引用され、まるで希望の新技術のように扱われている。僕はたまたまそういう所で最初にこのニュースを目にしたからウサンクサさを直感してしまったのかもしれない。「ロシアNOW」の元ネタのおかしな用語やまずい翻訳がそれに環をかけ、読めば読むほど色眼鏡のレンズが濃くなってしまったのかもしれない。
今は一歩引いて、第三者による追試の報告を待ちたいと思う。