応量器

知り合いから頼まれて、ある出版物の版組みと表紙のデサインをやっている。その中で使うイラストをデッチ上げた。

禅宗の坊さんが使う食器セット「応量器」の絵、2種類。(出版前にこんなところで曝してええのんかいな。。。まあ、僕の絵は賑やかしに使うだけで、本文でもないし、メインの挿絵でもないから大丈夫でしょ。知らんけど)

仏教の本来の教え(何が本来か?)では、食器は質素な鉄でないといけないらしい。漆、特に黒漆はその代用としてオッケーなんだって。黒漆には発色させるために鉄粉を入れてある。それで鉄って方便か。めっちゃ高価なのにさ。

で、絵の方はAdobe Illustratorでシコシコ描いた。始め、実物を借りてきて採寸したり、曲線ゲージで輪郭を測ったり、でも、図面を起こして実物を作るわけじゃないから、かなりテキトー。

出来上がった線画は、なんだかみすぼらしい。。。てか、線だけじゃサビシイ。なんか、葉物野菜の断面か、古代の三葉虫みたいにも見えるな。応量器-01Sこれじゃイカン、ってんで、もうちょっとリアルなイラストもやってみることにした。

できるだけシンプルにパスやシェイプを組み合わせて、黒漆の表面に映り込んだ空間が再現できないか。ペンタブ使わずマウスでクリックリック、スーイスイて、簡単にやっつける。(つもりだった。。。)

実物はもう返しちゃったし、撮っておいた写真は映り込みのこととか考えてなかったし、ネットで見ても下敷きにできそうな良い画像は見つからない。しかたなく、脳内で空間の再構築。曲面に映った歪んだ立体の景色を平面に変換していく。

スプーンの裏側のにように写る凸面はまだまし。皿の内側の凹面は反射が交錯してとっても無理(スプーンの内側に反射した画像は、距離によって上下左右が逆転したり、しなかったり、とっても難しい。。。丸一日、こればっかりやって、一番上のお皿1枚が表現できない。いくら描き直しても皿の上部が凹んで見えない。。。

と、うっかり違うシェイプの色を間違えて変更してしまったら、あら!おやまあ!なんとなく思っていたのに近い反射の描写になっちゃったい。

黒い円盤から始まって、返しちゃって手元にない応量器を思い出しながら、モニター画面の黒丸をジーっと見つめていたら、なんとなく、ここんところに天井が、こっちには壁と窓が、とイメージが湧いてくる。そんで、最後にふと気がついたのは、描いてる僕が映っていないこと。

そりゃ当たり前で、実物を見てないもん。エッシャーの絵に、彼が手に持った球体に映る自画像があったなあ。。。僕の場合、どうせでっち上げの空間だから観察者が写り込んでいなくてもいいのだけど、本物らしくするためにウソを描くことにした。ウソついでにカメラも構えさせてやった。まあね、絵ってのは所詮虚構の世界ですから。応量器Line2-01S応量器Line3-01S-01

追記と新しい画像↓↓

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