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ポリカーボネートの蒸し器内箱

頼まれて染色の絵付けした生地を蒸して色を固定するための蒸し器を作ってる。先日、その内箱をポリカーボネートで作るのに必要な折り曲げ器(ベンダーという特殊工具)をでっち上げた話を書いた。

材料を手近な有り物で間に合わせたら、長ネジが短すぎて車載用パンタグラフジャッキの一番低いポジションで荷重をかけることになり、かなり無理をさせていることが発覚。また微妙に傾くので長ネジ上部のナットを締め込むことで曲げ角の微調整をした。

とりあえず、思ったように曲がってくれたので、ほぼ図面通りの内箱ができあがった。

一番大きい部品である内箱の胴は4面のパネルを接着せず、分解できるようにビスとナットで留めた。問題は複雑な形の底に部分で、鍋との連結や、結露した水を鍋に返すための水勾配など、めんどくさいことこの上ない。

蓋も水勾配を考えないといけないが、三角形が組み合わさっただけなのでいくらかは簡単になる、と思いきや、耐熱性のある接着剤(セメダインのスーパーX)が扱いにくいこと、扱いにくいこと、、、。アクリルのようにシャバシャバの接着液を隙間にスーッと流し込むようには行かない。両面に塗布してしばらく放置し、粘着性が出てきたらエイヤっとくっつけろと説明書には書いてあり、底はその方式でやったがポリカ板が透明なので接着剤のムラムラや泡々が透けて見えるし、あまり美しくない。底とちがって蓋は目に触れる場所なのでもう少しきれいにしようと、大量に塗布してムラや泡を押し出そうと試みたが、空気に晒すオープンタイムを取らなかったため接着剤の固化までやたら時間がかかり、その間に接着剤が流れ出したりして、結局、泡を消すどころか余計にきたなくなってしまった。

ま、美術品じゃないんで機能すればよし、としよう。。。(でも、やっぱきれいなほうがいいんだけどなあ、、、)


ポリカーボネートを曲げる 蒸し器作りで

熱に強いポリカーボネートを使って染物の蒸し器の内箱を作ろうとしている。(外箱は檜)

家庭用簡易染物蒸し器

本当はステンレスの板金でやろうか、と思ったんだけど、型に合わせて切り抜くのが面倒だし、シャープで手を切りそうな切り口の処理も必要。かといって外注するととんでもなく高くなりそう。

そこで、130℃くらいまで耐熱性があるポリカを選んだと。蒸し器内部は水蒸気で満たされるため100℃止まりだから、30℃のマージンで十分だろうと。ところがその耐熱性が仇となって、アクリルや塩ビのようにニクロム熱線での曲げが難しい(できないことはないけど結構高熱にするためタイミングが微妙)らしい。じゃあ、ポリカがアクリルより強靭であることを逆手に取って、板金のベンダーのようなもので曲げればいい。実際、ヘルメットのシールドや帽体などに使われる丈夫な素材なので、曲げRがきつくても割れたりしないし、折れ曲がり降伏後の極端な強度低下がない。ただ、強靭なだけにモノサシや机の角でひょいと曲げたりはできないので、ベンダーがどうしても必要になる。

株式会社アマダ Websiteより

上の機械は数千万円だとか。もうちっと小型のヤツもアマゾンとかで数千円で売ってるけどね。

Amazon websiteより

しかし、うちにそんなベンダーなんぞ都合よく有るわけもない。。。今後、使う予定のないものに数千円ですらもったいない。が、無ければ作るだけのこと。

いつもお世話になる昆布金物店で鉄アングルをわけてもらい、あり物の2X4材にネジ留めして、長ネジとバネ、ワッシャーとナット、自動車のジャッキを大釜に放り込んで半日グツグツと煮込んだら、あ~ら不思議!ベンダーが出来上がったじゃあーりませんか!(嘘)

手製ベンダー

ありものの2X4材は長さ61cmしかなく、50数センチのポリカを曲げるために長ネジの孔を外へ追いやらねばならなかった。強度計算したわけじゃないけど、曲げたいポリカは1mm厚だからなんとかなるんじゃね?曲げのRができるだけ小さくするために、1本のアングルの辺がエッジ状に尖るようディスクサンダーとヤスリで研いだ。受けになる方のアングルの辺は丸みを帯びたまま。

長ネジも長さ30cm足らずしかなく、図面なしで場当たり的に作ったのでジャッキを噛ませたらカツカツだった。押しバネ圧縮最短の長さが長すぎてエッジが下がらないので、バネを逃がすためにアングルの両端をディスクサンダーで削り下げた。

0.5mm厚のアルミ板で試運転。楽々曲がって、曲げRも申し分ない。だが、裏側のアングルに触れたところが若干傷になった。そこで、ポリカではタイヤチューブを切って下に敷くことにした。

次は本番と同じ厚み1mmのポリカ板を直角に曲げてみた。幅も本番で曲げる最大に近い45cm。かなり抵抗があり、ジャッキのハンドルを回すのに力が要る。(もっとも、長ネジの長さ足らずのために上下スペースが窮屈でパンタグラフ・ジャッキがペチャンコ状態でしか使えず、あまり力が発揮できないんだけど、、、)。

1mm厚ポリカーボネートを曲げる

上部アングルの形状から90°より急な鋭角にはできないことになってる。でも、そこはポリカの柔軟性で、スプリングバックを考慮して鋭角まで無理に押し込んでみた。結果は、スプリングバックのせいで鈍角の120°ほどで落ち着いた。実際の蒸し器の部品としては直角に曲げることが無いので、これで十分である。(アングルに施した「エッジ」自体が90°ほどなので、無理やり押し込んでもアングルの厚みによって折れ曲がりのシャープさが失われる恐れがある)

曲げの内側は直角にならず、鈍角までスプリングバックした。

大成功である。が、蒸し器の製作以後はポリカも板金も曲げる予定がないので、なんとも無駄な特殊工具として作業場に転がることになる運命だ。


以下、製作過程おさらい

 

 


蒸し器 檜の外箱


蒸し器 製作開始

人に頼まれて、染色に使う蒸し器を作ることになった。

ステンレスや銅製の円筒形の既製品はあるけど、生地を巻いた状態で蒸すのでいろいろ問題があるようだ。そこで、プロ(蒸しの専門工場)でやってるように生地を針が付いた木枠に引っ掛けて吊り下げるようなものにすることにした。

5メートルくらいのものが吊れるようにするには、あれこれ考えたら1辺が60cmくらいの立方体になる。これはかなりデカい。本番は木製だからそれなりに重い。檜の厚板を使う予定だけど檜は比重が大きいからさらに重い。ダンボール箱を使った実験とは違って、そんなものをガスコンロにかけた鍋の上にポンと置くわけにはいかない。

そんで小型のやぐら炬燵みたいな台を作ることに。しかも、鍋やコンロが変わったときのことを考えて高さ調節ができるもの。

イケアで高さ調整可能なテーブル用の脚が売ってたので、カットして使う。(いつも、しょーもない、というかバカくさい頼み事を聞いてもらっている昆布金物店にお願いした。超凄腕の職人さんに申し訳ないような雑用させてる、、、m(_ _)m)

 


蒸し器 製作前の実験

染色用の蒸し器を作るにあたり、IHコンロと寸胴鍋ではたして各辺が60cmもある立方体の内部を水蒸気で満たし、はたして温度を100℃ちかくまで上げられるのか、、、悩んでいても仕方ない。やってみないと判らないので、ダンボールで箱を作り、アルミフォイルとポリ袋で防水して実験してみた。(ついでに倍の高さ、120cmの箱でも試してみた)

ダンボールだけではグニャっといきそうなので木枠を仕込んだ。ダンボールの利点は、ロッドタイプ温度計のプローブをブスッと突き刺せること。これで蓋を開けることなくかなり正確な温度を測ることができた。

IHコンロでは思うように温度が上がらず、せいぜい90℃どまり。ガンガンやっていたら結露した水が漏れてポタポタ落ちるので、コンロの周囲にタオルを巻き付けた。そしたらパスッっと音がしてIHが死んでしまった。IHコンロの底にはファンが付いていて、IH自体は発熱しないんだけど、鍋からの熱が伝わって加熱しないように冷却している。そいつがタオルで窒息して、温度ヒューズが飛んでしまったようだ。

仕方なく非常用に置いてあったカセットコンロを持ち出して実験続行。あら、何と!温度がガシガシ上るじゃない。IHは1400Wもあるのに90℃しか行かなかった、、、始めからこっちを使えばよかった。

めでたく99℃を達成。これで蒸し器の目処はついた。