「ポイント」タグアーカイブ

Fiat 500 の点火系を更新

まず、コイルの交換。以前、2気筒同時点火のためにハーレー用のコイルに取り替えて、ディストリビューターによる失火が無くなり、以後、快調だった。ポイント点火用のコイルは一次側抵抗が5Ω前後あるのが一般的で、その時入手したのも5Ωのものだった。

が、最近になって、ヘインズのマニュアルで1次コイルの抵抗は3.2Ω以下はダメ、となっているのを見てしまった。てことは5Ωだとダメじゃないけど、抵抗大きすぎじゃね?と。抵抗が大きいと発熱しないのでコイルには良いんだけど、点火するための電磁エネルギーを溜めるのに時間がかかるから、高速回転では追いつかなくなる。エネルギーが溜まりきらないまま点火すれば、当然点火プラグのスパークは弱まる。普段、高速道路とか走らないからあまり気にはならなかった。むしろ、低速走行では機嫌よくエンジンが回ってくれる。

問題はコイルじゃなく、このコイルに溜めたエネルギーで一気に高電圧を発生させるために、ポイント(コンタクトブレーカー=一種のスイッチ)を開放するのだけど、このポイントが発生する火花で表面が荒れたり減ったりするし、またポイントを開閉するためのカムのヒールが摩耗したりして、数千キロごとにメンテナンスが必要になること。まあ、火花吸収のコンデンサがいかれたとかじゃない限り、ポイント自体は1万キロやそこらでは寿命にならないから、コマメな調整は苦にはならないんだけど、、、

先日もドエル角(ポイントが閉じて通電し、コイルに電磁エネルギーを溜めるための、カムの回転角度)やポイントのギャップの調整をやった。ポイント摩耗により点火時期も狂ってくるので、エンジンの回転に違和感が出るのだけど、少しずつ進行するから気が付きにくい。もともと、低速走行中にアクセルを踏み込むと少し息つきする傾向があったのだけど、踏み込み具合を微妙に調整することで回避できた。というか、症状が進行してもそれに慣れてくると、自然に足が対応してしまう。ただ、それも限界がある。

話が逸れてしまった。ポイントに不満や不安があったわけじゃないし、ポイントやドエル角の調整が嫌いではないけど、もっと効率の良いものがあれば試してみたい「性分」なので、電子式の点火機構を導入することにした。同時に、コイルも電子点火に適合した3Ω(2気筒同時点火)のものに変更する必要がある。

Fiat 500(に限らず、ポイント点火の古い車)を電子式の点火にするには大きく別けて、(ここではCDIは除外して)セミトランジスタとフルトランジスタがある。前者はポイント(コンタクトブレーカー)の機構を残して、その開閉で点火のタイミングを取るので、ポイントのメンテが必要になる。一方、後者は物理的な接触を伴うポイントを廃して、回転する磁石やLEDの光でタイミングを測るから、物理的な接触がなく、ポイントそのものが必要なくなる。また進角を元のディストリビューター内にあった遠心力やバキュームを使う原始的(だがシンプルな)ものから、電子回路を備えて単純な進角だけでなく、ドエル角の調整まで行うものもある。

トランジスタ点火を導入するにあたって、アンプと呼ばれる大掛かりな装置をディストリビューターの外に設置するものは高価で始めから除外したが、始めに検討したのはIgnition 123というものだった。これはディストリビューターの中身(ローターとコンタクトブレーカー、それに進角機構の一切合切)を全て取り払い、エンジンの回転数から点火に関すること全般をコントロールしてくれるので、たしかに効率は良くなるはず。ただ、少し高価なのと、出先でぶっ壊れた時に一時的にポイント点火に戻すには、ディストリビューターの主要部品をすべて元に戻さなきゃならないので、ちょと手間がかかる。

Fiat-500
123 ignition for FIAT 500 123ignition.comより

次に検討したのは、進角に関しては元々の物理的な機構をそのまま利用するタイプなので、上記の123のような至れり尽くせりの機能は期待できないが、その分だけ電子回路も単純だろうから故障しにくそうだし、なにしろ値段が安い。このタイプはいろんな会社からたくさん種類が売られているが、なんか、どれも同じものに見える。多分、中のICかLSIか知らんけど、ほぼどれも中国製のワンチップで後は磁力センサー付けただけだろうからどれでも同じじゃね?と比較的安いものを買うことにした。(でも最安値はよう手をださん)。トレーラー牽引の登録で陸運局にエンジン諸元の提出を求められたときに、Italosportエンジンの資料を提供いただいた kitaさんに、苦しい時の神頼みで色々うかがった。が最終的に比較した2つのイギリス製、AccuSparkとPowerSparkは、やはり同じものだろうというご意見だった。

手に入れたのはPower SparkK35で、2気筒のFiat 500 用のもの。値段は£39.95、約6100円ほど(VAT抜き)。で、何故か1割引クーポンがあって、そこに送料が£9ほど。計£42.19、約6450円。他にも色々と似たようなものが売られているが、あれこれ比較の上、これをポチった。高いのか安いのか、ようわからんけど、とりあえずポイント周りをあれこれ調整したり、メンテしたりからは開放される。

K35 - Powerspark Electronic Ignition Kit for Magneti Marelli 2 Cyl Distributor
PowerSpark for FIAT 500 with Magneti Marelli distributor

コイルは上述のように従前のハーレー旧タイプ用5Ωではダメなので、同じくハーレー用のトランジスタ点火対応の3Ωのものを新古品をヤフオクで安く入手して取り付けた。ハイテンションコードはあまり安物を使うと電子回路に影響が出るらしいが、既にそこそこのシリコン皮膜にカーボンコアのものをおごってあるからこれで良さそげ。

ハーレー スポーツスター XLH883 1200
ハーレースポーツスター XLH883 1200cc 用点火コイル

この手の電子点火装置は、物理的スイッチであるポイントのみ電子スイッチに置き換えるだけなので、進角機構はオリジナルの遠心力/バキュームのコントロールを残している。取り外した部品を携行していれば、出先で故障の際にはすぐに元のポイント式に戻せる利点がある。ただし点火時期は簡易的な合わせ方しかできないし、コイルの抵抗が規定の3.2Ωより僅かに下回っていて、電流が多く流れ過熱するのであまり長くは走れない。それでも応急的に家まで乗って帰るくらいは可能だから安心感がある。

PowerSparkはイギリスから半月で届いた。取り付けは、ディストリビュータキャップを外し、コンデンサ(キャパシタ)とポイント(コンタクトブレーカー)を取り除いたあとに、何の加工も不要のポン付け。点火時期を調べたが、狂ってなかったので無調整。うちのチンク嬢は元々、エンジンのかかりがとても良い人だったので、始動性が変わった感じはないが、走らせてみると、最初に同時点火コイルに換えた時のように、エンジンの回転がまた一段とスムーズになったのが体感できた。高速走行からの加速も、登坂も力が増したように感じた。これで6500円でお釣りが来るのだから安い。あ、コイルは3500円。じゃ、計10000円か。。。それでも悪くない。

これで、ポイントギャップやらドエル角やら、それらの調整不足による不具合の心配はなくなった。調整サボリによる不調はともかく、旧式であればあるほど目視で故障箇所が確認し易く、修理対応も比較的簡単。しかし電子的な機構に頼る今度の点火システムは、物理的に壊れたり機械的摩耗による不調は起こりにくいが、半導体は熱に弱いかもしれないし、そうでなくてもICなどはポックリと突然死することもままあり、しかも外見からは何がなんだか判らないので修理のしようもないから、どちらが良いかは判らない。

ま、そんな「かもしれない」をいちいち気にしていたらFiat 500には乗れない。とりあえずエンジンは快調になったのだから、これでひとまず正解なんだと思う。


Fiat 500 点火プラグチェックとポイント、点火時期の調整

ここんとこ、高いギヤでアクセルを踏み込むとほんの少し息をつくような感じ。また連続で高速運転するときも音にばらつきや振動も増えたような気がした。微妙にデトネーションを疑う。スターター回すときにも、エンジン切るときも僅かな違和感。これは点火時期の狂いや点火プラグの不調かもしれないと思った。(エンジンの始動も少し渋くなってるような気がしていたし、、、)

そういや点火プラグのチェックは長いことやってなかった。ズボラでちゃんとした記録を付けないから憶えてないけど、キリの良い距離でやったかもしれない。だとしても距離計が最近25000kmになったばかりだから、多分5000kmはやってないだろうな。ひょっとしたら15000kmも放ったらかしだったかも、、、(汗)
ごめん、チンクちゃん。m(_ _)m

で、プラグを外して驚いた。何ジャコレ~!? アカンでしょう、、、。

半分真っ白に焼けすぎ、半分真っ黒に煤けてる!デポジット大量。。。

半分真っ白、半分真っ黒!まあ、真っ黒の方は油気とか無いし高速で回せば燃えちゃうだろうが、真っ白はいけません。焼けすぎじゃん。それだけじゃない、アース側の電極や碍子にデポジットが大量に付着している。点々とかツブツブどころじゃなく、分厚い層を成している。溜まったデポジットをカッターナイフの背中やマイナスドライバーでコリコリ削り落とすと、プラグ自体は電極の摩耗も無さそげだけど。。。こんな燃え方させたんじゃエンジン壊れるし。プラグの熱価を上げて少し冷ましてやらないといけないかも、、、。プラグが原因と決まったわけじゃないので、とりあえず手元にあったほとんど使ってない同じ番手(NGKのBP6HS)のプラグに交換。

不調は最近だけど、この堆積物はいつから溜まってるんだろ?

焼けすぎとデポジットの原因は何だろ?

間違ったプラグ選択−Yes & No(そもそもがItalo Sportのチューンドエンジンだし、、、でも、ずっと使ってるNGK BP6HSを変えてないんだけど、、、)

  1. オイル上がり/下がり−No(排気ガスはきれいだ。オイルは減らないし、汚れ方もひどくない)。
  2. 粗悪なガソリン−Yes(貧乏性で、誘惑に負けて安いところで入れてる。でも、ずっとここで入れてんだけど、、、)。
  3. 濃い混合気−Yes(前のエンジン、薄すぎでピストン溶かして孔を開けちゃったんで少し濃くしてある)。
  4. 点火時期狂い−Yes(プラグ同様、ここんとこチェックしてなかった。ポイントも荒れたり減ったりしてるだろうな、、、)。

2は同じ店で入れているが今まで問題はなかった。もっとも店がガソリンの質を落としたらどうしようもないが、、、。3のキャブのセッティングも大事だけど、まずは簡単にできる点火時期から調べてみなきゃ。

自作のチェックプレートとタイミングライトで角度を見ると点火が早い、つまりピストン上死点手前の角度が大きい方(反時計回り)にズレていた(写真を撮ったけど発光が同期せず、写らなかった)。多分コンタクトブレーカー(ポイント)のヒールが摩耗して、点火時期が狂ったのだろう。

タイミングライトを当てたが、カメラのシャッターと同期せず写らず。肉眼では白い線が10°より少し大きい位置に見えている。

四の五の言うより、ディストリビューターを開けた。そんでポイントを開いて接点を覗いて見た。したっけ、接触面が汚れている。てか、荒れていしまってる。どうせこの後ギャップとディストリビューターの角度調整はやんなきゃなんないから、構わずヤスリでゴシゴシ磨いてやった。

しかし、荒れどころか窪みまでできているようで、いくら磨いても白い点が消えない。予備のコンタクトブレーカーは持ってるので取り替えてもいいのだけど、ここでもついボンビー性(症か?w)が出て、一旦このまま使うことに。(買っても数百円の安い部品なんだけどね)

発電機のプーリーボルトにラチェットレンチかけて、エンジンのクランクシャフトをゆっくり回して、ポイントの開き具合をチエックした。ゴシゴシ磨いた後で、規程の0.5mmより見るからに狭い(1/3mmくらいか?)。そんで、ネジを緩めてギャップを広げ、そこに隙間ゲージ挿し込んでやるんだけど、0.48mmだとスッと入り、0.51mmだと抵抗があるところで固定するのが難しい。ここぞというところでネジを締めるとギャップがわずかに開いてしまう。ネジを締める間、何かで押さえつけろとか言われても、狭いデスビの内側でそう上手くはいかない。まあ、何度かやってギャップをズレを見越したところに持っていってから固定ネジを締めると。(もっときっちりした正規のやり方があるのかも知れんけど、結果よければ全て良しで、いつもこの方法)

ついでに、コンデンサーがサビサビなんで接触不良になるとポイントも早く消耗するので手持ちの予備と交換しておいた。

点火時期の狂いの原因がポイントの摩耗(正確にはカムに乗っかってるヒール部分がすり減って、ギャップが狭くなること)だとしても、このポイントのギャップ調整で直る保証はない。ヒールの摩耗やポイント接触面の研磨で微妙にドエル角(ポイントが閉じている角度)も変わってるはずだし、、、

エンジンをかけ、再びチェックプレートを装着して、タイミングライトを当ててやったら、案の定、点火時期の線(プーリー上の長い白線)は大きく左にズレたまま。ていうかズレが悪い方へ大きくなっている!

プーリー上の長い白線をエンジン本体の矢印マーク(プレートの0°の線)に合わせた時にピストンが上死点にある。エンジンがかかった状態でタイミングライトで照らした時、この線の13mm(角度にして10°)右側に引かれている細い線がエンジン側の矢印マークの場所に来るよう点火時期を調整うする(あるいは長い白線がプレートの10°の線に揃うように、ディストリビューターを捻って調整する。この写真では大きく20°ほどズレている。

即、点火時期調整が必要だった。ディストリビューターの裏のやりにくい位置に固定ネジがあり、それを緩めるとディストリビューターを左右に捻って点火時期を調整できる。すでに調整域の捻じりしろが少なく、ゴニョゴニョやってようやくギリギリ10°に近づける事ができた。しかし、もう目一杯なのでやはりポイントの替え時なのかもしれない。ポイントの摩耗や新品ポイントへの交換がこの部分にどう影響するのかは今のところ判らない。近々、ポイントを交換してみようと思う。(新品にして更に悪化するようなら、ディストリビューターの駆動ギヤを一山ずらさないと。これも面倒な仕事だ。やるたくないなあ、、、)

ディストリビューター捻った後にタイミングライトで点火時期の再確認。プレートを装着し忘れたので、エンジン側の矢印(白三角)とプーリー上の追加の線(赤矢印)で点火時期の角度を見る。

とりあえずポイントのギャップと点火時期はほぼ正規に戻ったので試運転。結果、セルを回す時間が以前のように短くなり、加速時の初動の息つきも、高速回転でのばらつきや振動もなくなった。エンジンのシャットダウンもガツンと止まる感じはしなくなった。この手の症状は少しずつ進むので気が付きにくいが、調整して直してやると、劇的とは言わないが、かなりはっきり体感できる。なにより、エンジンが壊れるのを防げたわけだ(ならもっと早く、症状が出る前に定期的にチェックしろよって言われそ)。もっとも、ポイントそのものの交換、ガソリンの質やキャブの空燃比調整の問題についてはまだ手を付けてないから、今後どうなることやら、、、。

あと、もう少し走ったらプラグのやけ具合も再度チェックする必要があるし、今回の調整で完全解決と言うのは時期尚早だね(イリジウムやルテリウムの高級点火プラグにしたいのだけど、この辺をきっちり押さえておかないと合わないもの買ってカネをドブに捨てることになるし、、、)。