「放射能を中和させる方法を発見」という話を読んで、まず思ったのは、また例の「疑似科学」だろうと言うこと。
放射能というのは核分裂などによる放射線を出す物理的な現象のことであり、中和という化学の用語は全く馴染まない。こんな初歩的な間違いを犯している記事が除染を促進する「希望の光」としてもてはやされている。
この記事には他にも「レーザー電磁場」、「中性バリウム」とか、特段融解温度の高くない金を「高融点金属」とするなど、ありそうで実はでたらめな語句がいろいろ出てくる。原文がロシア語だろうから翻訳が下手なのかもしれないと、用語にこだわらず読んでみたが、いろいろな説明がどれも納得いかない。
ある条件下でレーザー光線を照射することで半減期30年のセシウム137が1時間で全て「中性バリウム」(バリウムの安定同位体のこと?)に変換されるという。方や半減期、方や全変換という値は単純に時間単位の変換整合だけでの比較はできないが、それにしても強烈な速度でβ崩壊が起きるわけだから恐ろしい量のベータ線が放出されるはず。それって、ある意味超危険じゃね?と言いたい。
半減期141億年のトリウム232や半減期45億年のウラン238もサラッと「放射線を放出しなくなった」と書かれているが、それは結果であろう。ここで言われる「中和」に何時間かかったかは述べられていないが、何時間ではなく何日、いや、たとえ年のオーダーでもその間に放出される放射線は半減期30日のセシウム232どころじゃない天文学的な量になる。
検証もできていないのに「研究者はすでに、未来の開発の具体的な応用についてすでに考えている」のだそうな。仮にこの技術を応用して実用的な除染ができるとしても、それなりの量の放射性物質を安定化させるプロセスで恐ろしい被曝が発生するのは避けられない。あるいは相当大掛かりな遮蔽が必要になり、それが実用化を妨げることになりかねない。(それとも、放射線を出さない未知の核崩壊現象が発見されたのだろうか、、、うーん、あり得ないだろうなあ、、、)
この記事には、そういうことについて一切述べられていない。なのに福島の汚染水浄化への応用まで話が及んでいる。ずいぶん先走ったことだ。未検証の仮設やでっち上げの夢物語がもてはやされるというのは、常温核融合やSTAP細胞で見てきたことだ。
いや、僕は常温核融合もSTAP細胞も完全に嘘だ、あり得ない、とは言い切れないでいる。そこに、かすかな可能性の夢を見るのだ。果たしてこの「放射能中和」なるものが疑似科学なのか、パラダイム・シフト的なブレイクスルーなのか、まだよく判らない。が、僕の本能と嗅覚は臭い臭いと言っている
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