ガラスファスナー

十年以上も前だろうか、知り合いの堺町画廊の窓ガラスにヒビが入り、その修理をしたことがある。おそらく戦前から嵌っていたであろうガラスは良い感じに表面にムラがあって、新たに平滑なガラスと入れ替えたら違和感がある。

そこで、昔、まだガラスが貴重だったころに(と言っても昭和3〜40年代だが)よく見かけたヒビ割れを継ぐファスナー状の部品で修理することになった。(画廊のオーナーから頼まれた、というか、僕が買って出た)

その部品の名前は知らないし、おそらくもう売ってもいないだろう。無けりゃ作るだけのこと。

とは言うものの、どこかに見本があるわけでもなく、もちろん作り方もわからない。おぼろげな記憶を頼りにおそらくこうだろうという構造を考えだした。

まあ、さほど複雑でもないし、工作が難しいわけでもない。ビールの空き缶(その時はスチール缶)をリボン状に切り出し、両側にタブ状に切れ目を入れて交互に上下に折り曲げ、ムカデみたいになったファスナーをヒビの隙間に挟み込む。ただそれだけ。

子供の頃に見かけたものは工業製品だからタブが細かく揃っていたが、間に合わせのブリキバサミではあまり綺麗には手作りできない。タブは1辺が5mmくらいの方形になってしまった。でもまあ、許容範囲だろう。

折れ曲がったタブを木槌の頭で押さえつけたり、軽く叩いたりして、ガラス平面に馴染ませた。

もうずいぶん前のことだからどれくらいの時間を費やしたか憶えていないが、まあ、チマチマとめんどくさい仕事ではあったなあ、、、

(忘れられた方法でガラスを継いだら、戦前生まれだった当時の画廊オーナーには喜んでもらえた)

GlassFastener-compressed


ああ、なんてこったい、、、

先日、偶然に精華の同級生Sと出会った。後に彼と少し話をする機会があり、同じラグビー部OBの別の同級生のTが数年前に亡くなっていたことを聞いた。Tは僕の結婚の証人になってくれたり、所帯道具の足りないものをダンボール箱にいれて持ってきてくれたり、釣りに連れて行ってくれたり(これは全く僕に向かなかったけど)と、若い頃はたくさん世話になった。そういえば一緒にバイクで彼の奥さんの里である九州まで夫婦二組4人でツーリングしたなあ、、、。その後、僕は山奥に引っ込んだり京都を離れたりして彼とはすっかり行き来がなくなっていたが、たまにOB会などで顔を合わす度に離婚したことや教員を辞めたことをこっぴどく咎められた。だから顔を合わすのは気が重かった。しかしその後はいつも「しゃあないやっちゃな、おかぽんは」となってそれ以上は言わない。いつも同じパターンで叱られた。彼がいなくなってもうそれもない。
 
そうそう、Sからはまた、精華のラグビー部が数年前に廃部になったと聞かされた。さらに、近ごろ再びクラブが復活し、部員は少ないものの京都芸大との対戦が12月1日にあるとも。足りないメンバーをOBで補うのだとか。試合に出ないまでもOBはたくさん来るだろう。でもTは来ない。それでもぜひ行ってみよう。