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XL250Sのリアショック

XL250Sも購入・レストアしてからもう9年になるか。。。

レストアしたてのホヤホヤ写真
2021年2月の現状。写真の色味が悪いので古びて見えるが、リアショック以外はまだまだ全然元気。

もともとリアのショックアブソーバーは抜けてスカスカだった。路面の荒れにボヨンボヨンと揺れるので、乗り心地が悪いだけじゃなく危なっかしい。色々探してみたが、長さが40cmを超えるXS250Sのショックはタダでさえ普通じゃないのに、今となっては40年以上も前の部品は新品どころか中古でも程度の良いものは手に入らない。なんとなく姿形を似せたものはあるにはあるが、倒立(ダンパーが上に来る状態で取り付ける)での使用ができなかったり、微妙に短かったりと、これもしっくり来るものがない。

代替品が手に入らないのなら今ある物を整備するしかないな、と。本来は分解できないタイプのダンパーが付いているけど、オイルとガスのシールを替えてやればなんとかなるはず。調べてみたらオークションでXL250S用と銘打ってシールを売っている人がいた。ダンパーに封入されているガスは、おそらくオリジナルは窒素ではないかと思うけど、オフザロードを攻めるような乗り方はしないから空気で十分。オークションの説明にはチューブレスタイヤの空気バルブを取り付けた画像もあった。バネの圧縮変更に加えて空気圧の調整も行えたら微妙なセッティングも可能になる。まあ、このシールは純正部品じゃないけど、他車用でもサイズさえ適合すれば使える。少し高かったけど、ある程度のサポートもするということで買ってみた。と、喜んで早速購入。

ヤフオクより

ショックアブソーバーを分解するにはスプリングを縮めておいて中のダンパーを抜き出すんだけど、正式にはスプリング・コンプレッサーのような専用工具が要る。プロならいざしらず、僕のような日曜整備のシロートは一生に何度も使わないのに高い工具は買えない。しかし、世の中には色々と工夫して、ホームセンターで買える長ネジなど安い材料で自作したり、紐を掛けて捻って絞り上げ、バネを縮めるという人もいる。しかし、僕はそれすら面倒くさくって、バネの両端近くに長い柄のモンキーやパイプレンチを挟み込み、そこれらを長めのFクランプで締め上げることにした。

やってみたら割と簡単に行って、無事にショックアブソーバーの分解ができた。ところが肝心のロッドに錆が出ていて、再生、再利用は難しそうだった。せっかく補修シールを手に入れ、ここまでやって、やっぱアカンというのは悔しいけど、錆を落としてもまたすぐに錆びるし、それを防ぐには硬質クロームメッキに出さないといけない。

シールは無駄になるけど、ま、それは勉強代。それなら、純正じゃなくても代替品のショックで我慢してもいいか、とまた振り出しに戻って、探し始めた。

実は、中古や代替品についてはもう数年前、いや、XL250Sを購入したときから気にかけていて、事あるごとに検索したりしていたが、これ、っていうのには出会わなかった。中古はロッドに錆があればハナから論外だし、見た目が良くってもダンパーの機能がどうなのかは写真では判らないから、なかなか手が出せなかった。ていうか、ロッドが錆びてないのなんて皆無だった。

シールに無駄金はたいてから再生を諦めた途端、オランダのTheo Louwes というバイクショップがXL250Sの中古ショック(下の写真)を売りに出しているのが目に止まった。見た目の程度は良さげだし、機能もしっかりみたいなことが書いてある。後先になるがFiat 500のエンジンマウント強化スプリングもやはりオランダから買ったけど、品質の良いものが安く売られていた。ただ、送料が高い。このショックも2本セット本体税抜(海外販売は無税)€123=16,000円のところ、送料が€60で25,000円ちかくに跳ね上がった。

Shock absorbers XL250S 1978up off road used 405 L
Theo Louwes のウェブサイトより(クリックしてサイトへ遷移)

それでも、こんな状態の良さそうなものは見たことがないし、バイクショップのオーナーの経歴とか書いてあるのを読んだらガチのレーサーだったらしく、今は相当のお年のようだけど、日本製バイクのレーシングパーツとかを製作しているとかだからおかしな物は売るまい(ずっと後のものだけど、Facebookに出てる葉巻くわえて旋盤作業中の写真とか見たら、この人は信じれる!と思う)。ともかく、そのショップがちゃんと動くと言うのだから間違いない、と。

はたして、ほんの数日でモノが到着し、恐る恐る、でもワクワクしながら梱包を開いた。ジャジャーン!ピッカピカで期待以上。一点の曇りもないメッキとガス圧、ダンピング。新品じゃね?と思うほどだけど、消耗品のラバーブッシュが傷ついているところから、これが中古だというのが判る。

念のため一度分解し、傷なども調べたが、全く問題なし。スプリング無しの状態でのダンパーもガッツリ効いている。分解ついでにメッキ部分にはメッキングというクロームメッキ用のコーティングを施し、スプリングにもスプレー塗料で上塗りをして防錆。

さてさて、新しい(っても中古だけど)リアサスを組み込んだXL250Sは、まるで別の単車になったかのような乗り心地でありましたとさ。

 


FIAT 500 のラグトップ張り替え

キャンバストップのビニールレザーは固くなっただけでなく、激しく縮んでいるた。

うちに来てからずっと路駐で、気候の変化や紫外線に晒され続けてきたビニールレザーがいよいよ危なくなった。裏側には長雨の後など僅かながら水滴が付くのだ。座席に着いて見上げて目を凝らすと、空の光が点々と漏れているのが見える。それに、いつの頃からかオープンにする時、布地に硬さを感じるようになり、折れたりひび割れたりするのを恐れて、だんだん開かなくなっていた。

プラネタリウムの星のように見える光の点々は、キャンバストップのピンホール

Fiat 500の天井の開口は元々プレジャーユーズのためではなく、設計者のDante Giacosa(ダンテ・ジャコーザ)が採用を後悔したという振動の激しい2気筒空冷エンジンの音圧をキャビンから抜くためのものだったという。だからといってせっかく頭の上が開放できるのに、その機能を使わない手はない。元々、ジムニー、ジープ、ミジェット、ビートと幌付きの車に乗ってきたので、Fiat 500を選んだときにもラグトップは重要な決め手であったのだから。

で、始めはちょっと派手なボルドーワイン系の赤で自作を考えたが、せっかくの赤耳(サイドミラー)があるのに、赤が多くなると暑苦しいだろうと思い直し、却下。それなら既製で今のと同じ安い黒が無難だろうと、日本や海外のWebサイトで物色してみた。安くて7000円、高いと1万円を超す。さてこれが適価かどうかは人によるだろうが、、、。

と、しばらく引っ張りながら探していたある日、ヤフオクに5000円で「キャンバストップ」の布地を新品を出している人がいた。しかも京都市内からの出品で取りに行けば送料もかからないという良いことずくめ。ダメ元で入札したら競合者もなくすんなり落ちた。良いことはここで終わらず、実際に受け取りに行ってみたら、リサイクル業の出品者は他にも沢山のFiat 500のパーツを所有していて、これからぼちぼち仕分けしながらオークションで売ろうと思っている、とのことだった。

オークションでキャンバストップがお安く、、、

聞くところでは、ある人がFiat 500のレストアを試みたが挫折。エンジンのないドンガラと新品パーツ類をまとめて処分するのを引き受けたのだとか。ところが、彼はバイクには詳しいけど、Fiat 500はさっぱり判らず、ドンガラはさっさと売れたらしが、残ったものを出品しようにもどれが何の部品なのか特定できないので手間取っていたそうな。僕はキャンバストップの落札価格に5000円を上乗せして、めぼしいパーツをまとめてわけてもらった。ワイヤーやゴムの消耗品、それに中古だけど傷もないピッカピカのホイールキャップ1セット(これだけで1万5千円くらいする!)などが、キャンバストップを普通に買う値段にちょいプラスで入手できてしまった。用途不明部品の特定をしてあげたので、まあ、おまけしてもらうのに見合いうだけの貢献もしたけどね。

どんだけきれいか、夜じゃ判らんか、、、

さて、それは5ヶ月も前のこと。冬は寒すぎて新品でも偽レザーのビニールが固くなり上手く張れない恐れがあったから伸び伸びになっていた。3月半ばになって気候も緩み、ぼちぼちやるか、、、と重い腰をあげた。

ネジを外し、キャンバスを取り替えるだけだと思っていたが、カチカチ、パリッパリになった生地を取り外してみたら、、、幌フレームの前方部分がサビて孔が空いていた。サビが全体に回っていて補修しても強度が持たないだろう。ある程度は覚悟していたがここまでとは。。。 が、しかし、こういうときのために以前、放置されていた別のFiat 500から(持ち主の承諾を得て)いただいた幌付きフレームを取ってあったのだ。このビニールもパリパリだったのでカッターで切り開いてフレームを露出させたら、、、こっちはもっとひどい状態だった。結局、フレームを大枚1万5千円でオーダーする羽目に。せっかくキャンバスを安く手に入れたのに、、、
(;´д`)トホホ…

幌とフレームの交換作業は何のこともなく終わった。途中、トップを閉じた時に固定するプラスチック製ラッチ(キャッチ)がひび割れている事が発覚。これも金属製の新品にすることに。うっかりいじりだすと、モグラ叩き状態になるのが旧車の常。

ちょっとピンぼけ

そんで、全部新品のキャンバストップと相成ったわけ。めでたしめでたし。

追記:
貧乏性なので次は自作しようと思う。そのために、キャンバストップを張る前に採寸しておいた。


Fiat 500 のエンジン マウント スプリング強化

先日、Fiat 500 のマント関連のラバー類を交換した。車体の最後尾でエンジンを吊っているスプリングマウント関連のブッシュ類、それに加えて、特にトランスミッションを支えているラバーブロックは前オーナー時代に斜めって付けられたままになっていたので気になっていたところだった。あらためて下に潜って見てみたら、案の定、経年硬化とそれに従って微細なひび割れが入っていた。また、トランスミッションがサポートメンバーの最下部にずり下がった位置になっていて、ケースの底が当たって乗っかる形になったメンバーには緩衝材がタイラップで巻きつけてあった。これではラバーブロックをいくら柔らかい新品に取替えても意味がない。ラバーブロック(つまりトランスミッションケース)の位置は長穴で調節できるので、少し持ち上げて固定した。

ヤレたラバーブッシュと新品
トランスミッションケースのサポートメンバーとラバーブロック(ネジが長穴の最下部まで下がって、トランスミッションがメンバーに鎮座していた)
新旧ラバーブロック
新しラバーブロックがトランスミッションケースに付いた状態でサポートメンバーの復旧(ブロックのボルトが長穴の最下部より上がっている)

そしたら、後輪のアクスルをテコの軸として最後部のスプリングマウントで、エンジンの位置が少し下がったのだろう。走ってみると、アクセルの開閉、つまりトルクの変動に連れてエンジンが前後に揺れる感じがひどくなった。とりわけアクセルペダルを戻してエンジンブレーキがかかる瞬間は、前につんのめってるのが感じ取れる。もとより、オリジナルのエンジンからパワフルなItalo Sportチューンのエンジンに換装したときからこの傾向があった。それは、オリジナルの非力な110Fよりも、後期の126よりも、パワーもトルクも太っているのだから当然のことだけど、今まではスロットル開閉をおとなしくすることでなんとか揺れを押さえてきた。ところが、そういうダマシが効かないほど、ユッサユッサと盛大に揺れてくれる。(前段で書いたように、以前はトランスミッションケースを底づきさせていたためか、ラバーブロックの硬化のためか、ともかくテコの片側が固定されたような状態で揺れを防いでいたようなものだった。しかし、これはあまり褒められたものじゃない)

オリジナルのエンジンマウントスプリング

そこで、増大したトルクに見合った硬さのスプリングを奢ってやろうじゃないか、とあれこれ当たってみた。いつもお世話になってるMaluch 126さんのノーマルスプリングは2,400円、強化型はなんとその4倍の9,600円もする。こちらの部品は他と比べて良心的な価格だから、強化型だけふんだくってるわけではなさそげだけど、ちょっと手が出ない。かと言ってトランスミッションケースをまた底づきさせて、、、というのも、もう選択肢にはない。他のチンク専門店とかも当たってみたけど、1万数千円ってのが出てきて、もうMaluch 126さんの価格がリーズナブルなものに見えるだけだった。

急ぐものでもないので、海外に目を転じたら何かみつかるだろう、とネットを漁っていたら、、、オランダのFD Ricambiというところで、強化型スプリングが€11.20で売られていた。付加価値税込みの価格だから海外からの購入であればこれより2割以上安くなる。日本円で1,150もしない!ってんで、早速注文。ところが、オランダの送料が恐ろしいことに商品の3倍!(いや、これでも店のおすすめのUPS扱いより€12安いんだ、、、)。さて、5,400円。。。 迷ったあげく「ポチッ!」

店の「おすすめじゃない」方のオランダ郵便によって、UPSなら4〜5日のところ、2週間かかって昨日やっと到着。スプリング本体1個分より安いだから文句はない。ていうか、発送方法をUPSから郵便に代えたらスプリング代金がタダになった、って、、、ちょっと得した気分!(ちがうか、、、W)

ふと思い出したのは、XL250のリアサスを買った、元レーサーがやってるバイクショップもオランダだった。わずか一月ほどの間にオランダからスプリングを3本も買うとは、、、何かの因縁か?春だからか?(笑)

関係ないけど、こんなに状態の良い中古のリアサスが手に入るとは思わなかった。サビなし、抜けなし、改造なしで€123(16,000円)!

さて、目当てのマウントスプリングが入手できた。本当はスプリングと一緒にラバーバンパー(ダンパー?)も交換と良いのだけど、先日、マウント周りのラバーブッシュを換えたときに見たところ、あまり傷みもヘタリもないようなので今回はパス。

話は元にもどるが、このラバーバンパーの上方にあるゴムの凸の部分が、サポートアームというかリンクというか、アルミの部品の内側に当たることでエンジンが前後に傾く動きを制限することになっている。ところが、先の整備で前方のギアボックス側が上がったぶん、テコの反対側に当たるエンジン後端部がさがり、ラバーバンパーの上部に隙間がおそらくほんの数ミリ空いてしまっていた。その遊びの分だけ特に前方へ傾く動きが多くなたわけ。

何はともあれ、いそいそとオイルパンにジャッキを噛まし、マウントバネからエンジンの重量を開放してやった。今日は潜らなくていいので楽ちんだ。

作業半ば

今度の強化型スプリングはノーマルより短い。しかしバネレートが高くなっているので実際にエンジンが上がったのか下がったのかは見当がつかない。高さゲージとかメモリとかあるわけじゃないし、ラバーバンバーの上部のクリアランスはアームのリブの影に隠れて見れない。

強化スプリング(左)とオリジナル(細い!)
強化スプリングを組み込んだ状態(調整シムはオリジナルの3枚重ねのまま)

組み換えはなんなく終わったので、早速試運転しようとエンジンをかけた瞬間に「こりゃアカンわ」と。シート上で体が上下に揺れ、半開きのサイドウインドウがビビリまくり、ドアポケットの中身がガラガラガチャガチャと騒ぎ出した。おそらくラバーパンパーがアームに当たったままになって、アイドリングの振動をモロに車体へと伝えているのだった。。。「声をだしたら、あわわわわわわわわわわ・・」と、冗談のように震える!
(;´д`)トホホ…

Fiat 500 のオリジナルの状態では、このラバーバンバーの下に左右3枚ずつのシムが噛ませてあって、上部のアームの裏との距離を微妙に調節できるようになっている。トランスミッション位置の上下でも調節可能だが、ジャッキアップして潜り込むのは面倒だし、微調整も効かない。まずはシムを3枚(両側で6枚)一気に抜いてみた。抜きすぎかな?でも様子を見て一枚ずつ戻せば良い、と思ったらこれでバッチシ。

シムの除去(反対側も同様に引き抜いた)

アイドリングでの振動はノーマルより大きいが、始めのようにびっくりするような揺れ方じゃない。今のクルマのレベルから見たら、そりゃ驚くほど不快と感じる人もいるだろうけど、、、 まあ、その辺はノーマルの柔らかいスプリングとは比べ物にならない代わり、エンジンのトルクをがっしり受け止めてくれるはず。(実際、トランスミッションケースのサポートブロックを新品の柔らかいものに替える前も、それなりに振動していた)

走り出したら、まるで嘘のようにエンジンの前後揺れは消えて、スロットルの開閉にストレートに反応してくれる。今まではグニャっと1テンポ遅れていたものが、アクセルを踏み込んだらその開度に連れてリニアに加速する。しかも、振動は以前と全く変わりない。おお、良いんでないの!

花背別所に用事があったのでテストドライブしてきた。帰りは京北周山まわりで、杉坂、京見峠、鷹峯、千束と大回り。最近張り替えたばかりのラグトップをオープンし、花粉と黄砂にまみれながらのんびりと走った。(この道は大部分が大堰川沿いでなだらか、しかも交通量が少なくて、新しいマウントの状態を調べるには丁度いい)

黒田から周山の間のどこか
エンジンマウントの強化でどこか威勢がよく見える(笑)
大堰川/桂川上流域

 


蒸し器 製作前の実験

染色用の蒸し器を作るにあたり、IHコンロと寸胴鍋ではたして各辺が60cmもある立方体の内部を水蒸気で満たし、はたして温度を100℃ちかくまで上げられるのか、、、悩んでいても仕方ない。やってみないと判らないので、ダンボールで箱を作り、アルミフォイルとポリ袋で防水して実験してみた。(ついでに倍の高さ、120cmの箱でも試してみた)

ダンボールだけではグニャっといきそうなので木枠を仕込んだ。ダンボールの利点は、ロッドタイプ温度計のプローブをブスッと突き刺せること。これで蓋を開けることなくかなり正確な温度を測ることができた。

IHコンロでは思うように温度が上がらず、せいぜい90℃どまり。ガンガンやっていたら結露した水が漏れてポタポタ落ちるので、コンロの周囲にタオルを巻き付けた。そしたらパスッっと音がしてIHが死んでしまった。IHコンロの底にはファンが付いていて、IH自体は発熱しないんだけど、鍋からの熱が伝わって加熱しないように冷却している。そいつがタオルで窒息して、温度ヒューズが飛んでしまったようだ。

仕方なく非常用に置いてあったカセットコンロを持ち出して実験続行。あら、何と!温度がガシガシ上るじゃない。IHは1400Wもあるのに90℃しか行かなかった、、、始めからこっちを使えばよかった。

めでたく99℃を達成。これで蒸し器の目処はついた。

 


Radio Flyer と 戸車カート

アメリカで学部生時代に僕の指導教授だったLyle Laske(今は友達だから敬称なしの呼び捨て、、、てへっ)が、かの地では知らぬものがいないほどの、もう「文化の一部」と言ってもよい玩具をモチーフにした楽しい動画を知らせてくれた。

かつて多くのアメリカ人の子どもたちが遊んだ、いや、今も遊んでいるミニチュア荷車のような赤い手曳きの「Radio Flyer」というワゴン/カートがあるんだけど、Antonio Pasinという若いイタリア移民の家具職人がシカゴで木製のワゴンを作り始めたのがその始まりだったそうな。第一次世界大戦前夜の1913年に16才でアメリカに来たPasinが作る、本物の荷馬車を模したワゴンにも希望と気合が入っていたことだろう。船旅時代にアメリカにたどり着いた多くのヨーロッパ移民と同じように、彼がまず最初に目にしたものは自由の女神像(Statue of Liberty)だったにちがいない。Pasinは彼の最初のワゴンを「Liberty Coaster」と銘打ったことからもその気概がうかがい知れる。

さて、Pasinが木製ワゴンを作っていたころ、世界で最初の流れ作業ラインでT型フォードが大量生産されていて、その板金パーツ製作には金型プレスが使われていた。それまで自動車は当時のハイテク技術の塊で、先端技術者や熟練職工が技術・労働集約的に製造していたので、めっぽう高価で一部の大金持ちのものでしかなかった。しかしHenry Fordは自動車をライン量産により効率化とコストダウンをすることで(相当に大変な出費だけどね)一般の労働者でも買えるようにして、一躍時代の寵児なった。フォードの成功にヒントを得たPasinも金型プレスで打ち抜き整形すれば、手間のかかる木製より製造コストがさげられ、誰でも子供たちに買い与えられる安価なワゴンが作れる、と板金ボディーのワゴンを作り始めたという。そして、今度はラジオ(Guglielmo Marconi)と飛行機(Wright brothers)という当時最先端の技術からそのワゴンを「Radio Flyer」と命名した。(この辺りはWikipediaなどから掻い摘んで書いている)

生まれついての家具職人であったPasinがその木工技術に固執することなく、いかにもアメリカ的な大量生産方式へサクッと転換できたのは彼がまだ若かったからだと思う。アメリカという国もまだ若く、その成長に乗っかって成功した若者の一人だったPasinはちっさい4輪を作っていたので「リトル フォード」と呼ばれたらしい。もちろん彼の成功は若さや時流に乗っただけでなく、その目先の利く決断力や行動力があってのことだけど。

それにしても「Radio Flyer」という安直で意味のわからん名前を考えついたのはラテン系という彼のおおらかな素質のお陰か、それともまだ英語が上手く使えなかったためのか、、、(「不思議な英語の商品名」と言えばSonyの有名な音楽プレイヤーで、英語的には不自然な響きの「Walkman」を思い起こすけど、あれとて初めアメリカではもう少し英語らしい表現の「Walkabout」と称されていた。何かの拍子に日本での商品名の「ウォークマン」があちらでも使われるようになり、いつの間にかそれが受け入れられてしまったとのこと)。何にせよ、今ではアメリカ社会で「Radio Flyer」もこの手のワゴン/カートの代名詞となっている。そしてそれとともに育ったアメリカ人たちは、人種・貧富を問わず老いも若きも、それぞれに自分だけの夢や思い出を「Radio Flyer」に乗っけているのだ。
Radio flyer wagon 1950's and young girl

ちなみに、下の動画に登場する男の子の名前はAntonioで、それは当然Antonio Pasinへのオマージュであり、また、彼のグランパがびっくりしたときに発する「Santa Maria!」も彼らがイタリア系であることを示唆している。シンプルな3Dアニメだから英語が解らなくてもこの動画は観れば話の筋は判るけど、このあたりはやはり聞き取れないと、判らないだろう、、。

振り返って、僕が子供の頃つまり60年以上も前の話だけど、残念ながら日本では誰も「Radio Flyer」なんぞ見たことも聞いたこともなかった。ただ、子供のニーズは世界共通で、今のようにネットがなくても、自然発生的に似たような玩具が存在していた。ていうか、当時の(日本を含め、アメリカのように裕福じゃなかった国の)子供は欲しいものは自分で作るか、年長者に作ってもらっていた。だからRadio Flyerそのものじゃなくても4輪のワゴン/カートだって有ったのだ。ただし木製。木の切れっ端を幾つかつなぎ合わせた板に釘で戸車を4つ打ち付けて縄を付けただけの、いわば台車のような代物だけど、機能的にはアメリカのカウンターパートに引けを取らない。気の利いたバージョンは飛行機のラダーを動かすフットバーのように足で操縦するステアリング機構さえ奢られていたのだった。

この戸車カートについてLyleに説明しようとPhotoshopで写真をコラージュしてでっち上げた。なかなか上手くできたのでここに上げておく。ああ、僕の木製「Radio Flyer」が懐かしい。

My version of Radio Flyer cart

4輪のワゴン/カートではないけど、アフリカには「チクドゥ chukudu/tsikudu」という、木でできたキックスクーターのような2輪の乗り物がある。これは、子供の玩具としてだけでなく、大人が荷物の運搬に実用しているらしい。発祥の地、コンゴ民主共和国に繋がりの深い友人によるとあちらではもっぱら大人用、でもタンザニアじゃ子供の玩具とか。そういえばアメリカでも大人が「Radio Flyer」で花の植木鉢やガラクタなどちょっとした荷物を運んでいるのを何度か見たことがある。今、大人の僕は玩具としての「chukudu/tsikudu」が欲しくてたまらない。作りたいな。

chukudu/tsikudu
Chukudu/tsikudu: アフリカで利用されている木製二輪車。地域によって大人が荷物運搬に実用していたり、子供の遊び用乗り物であったりするそうだ。(POPOFカレンダーより)
タンザニアの木製二輪。コンゴとちがい、子供の玩具として使われることもあるようだ。写真のものはルカニ村の子供の手作りだとか photo: Nojiko Fushihara

大人が使うということで思い出した。子供の頃に乗っていたあの木製「Radio Flyer」の自作バージョン(上の写真)とよく似たものがうちのガレージに転がっている。うちの古いFiat 500(Cinquecento:これも玩具っちゃあ玩具なんだけど、、、W)がしばしば故障するので、修理のためにその下へ滑り込めるように、合板の切れっ端にキャスターを付けたクリーパー(寝板)をでっち上げたのだった。もしも僕の木製「Radio Flyer」が今もあったら、それを使っていただろうな。

自動車修理用にでっち上げたクリーパー
自動車修理用にでっち上げたクリーパー

なんか、Lyleの知らせてくれたYoutube 動画から、あちこち妄想が走り回ってとりとめがないというか、収拾がつかなくなっちゃった。長くなったのでこれでおしまい。