リッツェム→ヴァッコタヴァーレ→テウサヤウレ





















昨日、ヴァッコタヴァーレまで乗せてくれるという人を編み物の先生と思い込んでいたが、どうやらサーミの人たちの手編みミトンに詳しい出版関係の方のようだ。ヨックモック在住のエリカさんという。
Kungsleden再スタート地点のヴァッコタヴァーレより先に長さ数十kmにわたる大きな人造湖がある。車の中で水力発電で得られる電気と、その引き換えに、その湖が環境や周辺に住んでいる人たちに与える影響の大きさと、もっと言えば害についてエリカさんに色々話をしてもらう。(あとで気づいたが、それはストゥーラ・ヘォファレットのことだった)
ヘマヴァンからここまで来るあいだに何度か、スウェーデンに残されたダムのない主要河川はたった4つしかないと聞かされた。うーむ、、、日本にはダムのない河川が幾つあるのだろう。恥かしながらよく知らない。清流として有名な四万十川はどっかにダムがあったかな、同じ高知の仁淀川はどうだろう。。。思いつかない。
Kungsledenを歩いているから当然、そういう意識の高い人たちと出会うのだろうけど、、、そこへお邪魔している僕は、日本のこと知らないまま、またスウェーデンの環境について調べもしないで来てしまったなあ。。。
エリカさんは出版関係者などではなく、サーミの手編みミトンについて講演をしたり、展覧会をオーガナイズしたりしているそうだ。邪魔になったら人にあげて、と綺麗なパンフレットをもらう。日本まで持って帰りますよ。(スウェーデン語で読めないけど、、、汗)
ヴァッコタヴァレでお別れし、車の道からすぐそばの山小屋で次の小屋の手前にある湖を渡るボートについて訊く。モーターボートは日に2回、夕方は6時半から7時半までの間だけ。それ以外は手漕ぎボートで渡ることになる。
急な道を登り切るとあとはダラダラ平坦。やたらにトナカイがいるが、意外と近くまで寄っていってもあまり警戒するふうでもなく、一度はこちらに向かって群れが走り始め、こっちが驚く。
だんだんと下りになったころ、ちょっと深い谷に道が直交している場所に出くわす。靴を脱いで徒渉かな、一瞬覚悟。川へ向かってちょっと進むとbroと書いた表示がある。どうやらbridgeの事らしい。その指し示す方へ10分ほど川下へ降ると、やはり橋がある。なんだかんだで、2〜30分ほど遠回り。でも、冷たい川を裸足で渡るよりはいいか。。。な
手漕ぎボートは全部で3艘。こちら側に2艘あればラッキー。もしも、1艘しかなかったら、、、先ず、それを使って向こう岸まで渡り、もう1艘を引っ張って戻り、引っ張って来た1艘を残して、また向こう側へ、、、と片道1kmを都合3回漕ぎ渡ることになる。。
果たして、湖岸まで下りてきたら、、、1艘しかない!やっぱりね。。。
ボートの側にモータボートを待つ人が年配の3人、ライフジャケットを着けて待っている。もう1時間半、寒い風に吹かれて待ってるのに、合図してもちっとも来ない、と怒っている。まだ4時なんですけど、、、と言っても聞かない。いや、合図(白いポリタンクを棒の先にかかげる)をしたら今までなら直ぐ来た。サボってるにちがいない、と。
寒そうでかわいそうなので、僕が手漕ぎボートで向こう岸の小屋へ行って、待ってる人がいると言ってきてあげる、とボートに飛び乗る。横風がが強く、かなり風上に向かって漕がないといけないうえに、横波もあって横揺れが激しくメッチャおっかない。
何分漕いだか夢中だったので判らないが、なんとかたどり着く。小屋の管理人さんに直ぐモータボートを出してあげて、と言うが、やることが山積していて時間になるまで行けないとのこと。実は、僕もスケベ心があって、モータボートを出してもらえたら乗ってきた手漕ぎボートを引っ張って帰ってもらえるかも、、、と。でも、そうは問屋が卸さない。ぐずぐずしてると、次のトレッカーが来てボートが必要になるかもしれない。それに、待ってる人らに、迎えは時間まで来ないよと言ってあげないと、、、
ある意味ガッカリしながら漕ぎ戻る。3人に迎えは来ないと説明したら、ここは何度も来てるからそんなはずはない、とカンカン。とくに犬を2頭連れた女性は激しく毒づいている。
僕は事実を伝えただけなのに、なんかいたたまれないので、引っ張って来たボートを岸に引き上げて、取って返そうとしたら、カップルの2人が僕のボートに乗り込んできた。犬が一緒の女性は手漕ぎボートには乗れないけど、自分たちは寒くて待ってられないからって、、、。彼らはどう見ても僕より10歳は上にに見える。まあ、どっちにしても僕が漕いで戻るつもりだったからいいんだけど。。。重い。
3度目となると握力が上がってしまう。背筋や上腕二頭筋はトレッキングに使わないのでまだ元気なんだけど、、、。3人乗りで一つだけ良いことは、重心が下がり吃水が深くなってボートが安定すること。最初の2回ほどは揺れない。それにしても、覚悟はしていたとはいえ、ボート漕ぎでひどく苦労する。
かくして3人は無事に渡り終え、やがて運行時間になって犬連れの女性もモータボートでやってきた。が、もうメチャクチャ怒りまくってる。幸い、犬が一緒の人は別棟のキャビンに泊まらないといけないので、それ以降、彼女の口汚く罵るのを聞かなくても済む。
管理人夫妻は融通の利かない人たちなのかな、と思ったが、そうでもなく非常に親切。待たされた人たちは自分たちの経験と古い情報から離れられず、事情が変わったことについて行けなかっただけなんだな。
どこかロビン・ウィリアムズに似た男性の管理人さんが、施設を案内してくれて、薪小屋の前で「こちらがフィットネスジムで、思う存分エクササイズしてください」と言うが、ボート漕ぎ3本やった今夜は堪忍してね。
ヴァッコタヴァーレからKungsledenのトレッキング再開のために早朝、イェリヴァーレ行きのバスでヨックモックを発つ。逆にイェリヴァーレからヴァッコタヴァーレ方面に向かうバスに乗り換えで、途中のポリウスという村の先6kmのところでバスを降ろされる。何もない三叉路で3時間待ち。。。
ヨックモックから乗ったバスはわざわざルートを外れて、次のバスが来るバス停まで送ってくれた。そのバスもUターンして行ってしまった、、、
予定を変更して、ヴァッコタヴァーレを通過して、バスの終点リッツェムに向かうことに。詳細はこちらのテキスト投稿で。
朝6時のバスがに寝過ごすのを恐れて、やたら夜中に目がさめる。しかも風邪気味の様子。熱っぽいし咳も出る。シベリア鉄道でアクバルくんからもらった風邪は緊張していたためか、たいしたこともなく治ったのに、今回のは計画変更で気が緩んでしまってるから、イヤーな感じ。だるい。
結局よく寝られないうちに5時に起きてお茶を沸かし、のんびり荷造り。昨日まで体調良かったのに、この体たらくで計画の切り捨て度合いがどんどん進む。つまり、楽な方に流れてる。残りの8泊ほどの行程を全て山小屋泊まりにする。もともと、今回スキップしてしまった部分で山小屋の無い地域で連続5泊ほどテントを張る必要があったため、慣らしも兼ねてスタートしてからずっとテントで寝ていたが、これからのコースではもうその必要もなくなった。テントやガソリンストーブなど、かさ張り思いものをどこかで日本に送り返そう。
半世紀前に観た映画「太陽のかけら」で主人公が10年前の思い出と、今、山小屋ひとつ先を行く昔の恋人を追いながら歩いたのは、まさにこれから僕が歩くコース。彼らも小屋泊まりだったから、僕が彼らの軌跡をなぞるのにスパルタンな幕営行軍を自分に強いるこたあない、、、と楽に流れる自分を自ら庇う。
時間通りバスに乗る。昨日、バスステーションに着いたときに新たなKungsledenトレッキング出発点、ヴァッコタヴァレへ行く乗り継ぎをしつこく確認してあるので間違いはないはずだが、村もなにもないただ三叉路があるだけの森の中に放り出されて、バスを3時間も待つのはちょっと心細い。たまに車が通るから、いざとなれば親指立てる方法もあるにはあるが、、、
ついにバスが来る。この道を通るのは日に1本だけだから間違いない。乗り込んでから、はて、、、と考え込む。これから向うヴァッコタヴァレストゥガンの小屋は自動車道に近いとはいえ、まごうことなき山小屋。周辺に集落も無く、郵便局など望むべくもない。使わないテントなどをあれだけ時間が余っていたソルセレで送っておけば良かった。
窓の外はずっと湖とその向こうに見える氷河を戴く岩山。反対側は針葉樹林。ほんの一昨日までダケカンバや針葉樹の樹林帯を出たり入ったりしていたが、景色の質がすっかり変わっている。
途中、1時間以上のお昼休憩停車があるストゥーラ・ヘォファレットというところで、お土産ショップの人に荷物は送れるか訊いてみるが、ハガキだけでパッケージはダメとのこと。再びバスに乗り、ヴァッコタヴァーレが近づいてくる。あーあ、思い出の映画の道を辿る荷物は重いで、、、とか、くだらないシャレが頭をよぎるが、そんなこと言ってる場合じゃない。
ヴァッコタヴァーレに着いてバスを降り、荷物室からバックパックを受け取るときに、思い切って運転手さんに、終点のリッツェムで荷物を外国に送れるか訊いてみる。と、横に立っていた若いのにリップ・ヴァン・ウィンクルみたいにやたら立派なヒゲを蓄えた兄ちゃんが、外国は無理だけど、Kungsledenの終点まで行くのならアビスコにある山岳ステーション宛に送っておけばいい、と教えてくれる。その手があったか。日本に送らなくても事が済む。
Kungsledenのことしか調べてなくて知らなかったが、リッツェムもこの辺り、ラッポーニア(Lapponia)のトレッキング拠点のひとつで、STFの山岳ステーションがあり、ヒゲ兄ちゃんはそこで働いているデニスくんという。たまたま休みから職場に戻るところだったとか。天の助けはいつも突然現れる。そのまま素直に降りていれば、、、デニスくんがバスに乗ったまま居眠りしていれば、、、明日からは不要の重量を担いて歩くことになったはず。いやもう、その覚悟はできていた、ていうか観念していた。
リッツェムの山岳ステーションはヘマヴァンのそれと比べて、うんとこぢんまりしている。編み物講習会か何かの初老の女性グループが編み物講習会をやっている。氷河の山々と湖と森を見ながら毛糸の編み物をする。贅沢だけど、良いものが編めるだろうな。しかし 僕以外に登山客はいないように見える。ここでも、トレッキングシーズンは終わりに近づいている。
職員の一人が編み物の講師らしき人に声をかけてくれて、明日朝、ヴァッコタヴァレまで車に乗せてもらえることになる。
荷物を整理し発送する手続きをする。先日、バスの後部が貨物室になってるアレ(Bussgods)で僻地を結ぶ配送サービスを行っているのだとか。まさかここでお世話になるとは!伝票書いてバスドライバーに直接渡すんだって。明日、早発ちなら、やっといてあげるよって。これで後は出る前に残った ホワイトガソリンをこのステーションに寄付して、身軽になって登山を再開できる。体調も整えなきゃ。風邪と寝不足で頭がぼーっとしてるので、何書いてるのかよくわからない。。。あ、いつでもか。
もう寝ます。
ヨックモックって、聞いたことあるなあ、と思ったらどっかのお菓子屋さんの名前。縁もゆかりもなさそうだけど、、、調べてみたら、その会社の社長かだれかがこの街が気に入って、名前をイタダキ〜、みたいな感じだそうな。どうでもいいけど。。。
サーミ語だけどね。
急ぎ旅でなかったらのんびりゆっくりしたいところだけど、、、