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ロックタイトでドライブシャフトのスプライン(仮)修復

これは「FIAT 500 ONLINE MANUAL」に僕が投稿した内容をそのまま横流ししている。自分の作業記録としてこのブログにも残しておく。


はじめに

この稿で紹介するのはあくまで一時凌ぎの実験的、応急的な処置であることをご理解いただきたい。この修復で、はたして傷んだスプラインがいつまで持つかも判らない。作業は2023年1月下旬だが、次回、異常が起きる(つまりスプラインが舐める!)か、あるいは不安に駆られてドライブシャフトを交換することになれば、改めてこちらで報告するつもり。(せめて1年は頑張って持ち堪えてほしい、、、)
  • はじめに(この項)・・・何が起きたか:ドライブシャフトのスプライン摩耗
  • 原因と対策・・・・・・・原因:Cクリップの脱落 対策:「はめ合い用接着剤」の充填
  • 本題・・・・・・・・・・下準備(予備実験):離型剤の効果確認 実地に応用(具体的には):作業手順
  • おわりに・・・・・・・・まとめ

何が起きたか

先日リアのフレキシブルジョイントとドライブシャフトを繋ぐドライブシャフトスリープにガタがあることを発見した。ドライブシャフトとスリーブを嵌合しているスプラインが摩耗していたのだった。一般的に、硬い鋼製のシャフトより柔らかい鋳物のスリーブの方が摩耗するので、スリーブのみ交換すれば事は簡単なはず。ところがスプラインをチェックしてみたら両方とも傷んでいて、スリーブのカップ状フランジ内部に鉄粉が付着していた。恐らくギアボックスを下ろしてドライブシャフトを交換する必要がある。

原因と対策

原因

こうなった原因はドライブシャフトの先端に在るはずのCクリップが脱落していて、軸方向に大きな遊びができたドライブシャフトがギアボックス側に移動し、スプラインが半分ほどしか掛かっていなかったために過大な荷重が掛かり続けていたからではないかと想像する。(シャフトを正規の位置に押し込むとガタは無くなるが、仮にシャフトがその位置に留まってくれたとしても遅かれ早かれ傷んでしまったスプラインはオシャカになる。そして走行不能!)

外れたCクリップはスリーブのカップ状フランジの中にグリスでへばり着いていた。しかし腑に落ちないのは、前回整備したプロがクリップの付け忘れをするだろうかということと、忘れたのならクリップがその近辺に残っていたのはおかしい。そもそも溝にきっちり嵌ったクリップがそう簡単に脱落するのも考え難いのだが、自分でクリップを着脱してみたらどうも様子が変。クリップが開いてしまっているわけでもないのに指だけであっさり外れる。そこで反対側のドライブシャフトと比べてみたら明らかに溝が浅いことが判った。これではいくら復旧しても同じことの繰り返しになってしまう。スプライン復活以前にまずはヤスリでクリップの溝を深くすることから始めなきゃならなかった。

【下:きっちり嵌ったクリップ】

対策

作業概要:
本来なら交換すべきドライブシャフトだが、そのためにはトランスミッションを外して分解しないといけない。これを機会に太いシャフトに交換して、スプラインの負担を減らすとかも考えた。しかし、いずれはそれも必要になるとしても、当面の手間(と外注した場合は費用)を考えたらやはり躊躇してしまう。そこで何とか傷んだスプラインを修復できないものか、色々と思案してみた。
シャフトのスプラインを溶接で肉盛りして歯を切り直すという技もあるらしいが、当然ドライブシャフトをギアボックスから外す必要があり、そこまでするのなら補修部品が潤沢にあるFIAT 500ではあまり意味がない。http://usahato-blog.seesaa.net/article/407750490.html
昔、モンゴルやチベットの運転手たちが、傷んだネジのスレッドやスッピル(キー)の嵌合に出たガタをタバコの銀紙(錫箔)やアルミフォイルを隙間に巻き込んでその場凌ぎの応急処置をやるのを見たことがあり、自分もオルタネーターのプーリーハブの半月キーがナメて摩耗したハブのガタ取りに利用したが、流石に重い車体を動かす力が一手に掛かるドライブシャフトのスプラインには使えないだろう。https://okamoo.com/blog/2022/10/14/fiat-500%e3%80%80%e3%82%aa%e3%83%ab%e3%82%bf%e3%83%8d%e3%83%bc%e3%82%bf%e3%83%bc%e7%95%b0%e9%9f%b3%e3%82%92%e4%bf%ae%e7%90%86/
が、隙間を何かで充填してやれば暫くは持つのではないか。ただ、瞬間接着剤やエポキシ樹脂などは剪断や引き剥がしには強そうだけど耐圧荷重にはどうなんだろうとネットを探っていたところ、ネジの緩み止め剤のロックタイトのバリエーションに「はめ合い用接着剤」というものがふと目についた。https://www.henkel-adhesives.com/jp/ja/products/industrial-adhesives/retaining-compounds.html
中でも強力なのは「ロックタイト660」と「ロックタイト638」で、前者は隙間0.5mmまで充填できて硬化し、しかも能書きに「スプライン」に応用可能となっている。後者はスプラインとは書いてないが最強力と謳われている。今回は経済的事情から638を選んだが、隙間が大きい場合は660の方が良いだろう。

本題

ロックタイト638は母材にかなり強力に接着するらしく、ドライブシャフトのようにスイングアームの上下動で軸方向に若干の摺動の余地が必要な場合、しっかり固着してしまっては面倒なことが起きかねない(先述のようにCクリップがあり、ドライブシャフトの先端に小さなバネが仕込まれているのはその動きを規制するため。軸方向の動きができないと荷重によりスイングアームが上下したらシャフトやジョイント、ひいてはギアボックス内部の歯車、特にディファレンシャルに異常な応力が掛かって、ダメージはシャフト交換どころではなくなってしまう。そこで、オス・メスどちらかのスプラインの歯に離型剤を塗布して接着を抑止することで軸方向の動きを確保することにした。

下準備(予備実験)

ロックタイト638に離型剤が有効かどうかを確かめないと、スプラインの嵌合は強固になったは良いが、二度と離れてくれないとなると厄介。手近に合ったボルト・ナットで離型剤の有る無しでどう変わるかの実験をしてみた。
  • 3/8のインチボルトとナットを2本用意。
  • コントロールとして1本のボルトは離型剤を塗らずにそのままロックタイトを垂らし、ナットを固定。
  • もう1本のボルトに離型剤のシリコングリスを塗布(一般的な油性グリスはロックタイトと変な反応をするかも知れない。シリコングリスが大丈夫という保証はないが、その不活性に期待して、、、)。
  • 離型剤の上にロックタイトを塗布し、ナットをロックタイトに部分まで回し込む。
  • 24時間放置(すべきだったが今回は十数時間)後に、夫々にトルクレンチを掛けて回してみた。
  • 離型材なし:約20Nm(固化したロックタイトが砕けたように白くなっている)
  • 離型剤あり:スルリと回って計測不能。
離型剤なしのほうは思ったより低い値だが、耐圧力荷重を重視した「はめ合い用接着剤」である638は「ネジ固定剤」ではないので剪断応力には力を発揮しないのだろう。だからといって実際のドライブシャフトのスプラインの接触面積はこのネジよりはるかに大きいので離型剤が不要なほど簡単に抜けないだろうし、抜けたとしても写真のように破壊的な分離の仕方では困る。
しかし一方、離型剤を使ったほうは目論見通りあっさり動いた、というかあまりに拍子抜けの無抵抗だったので、シリコングリスのせいでロックタイトが変質し、固化しなかったのではと心配になった。歯の溝をキリの先で突いたりしてみたがグリスっぽい表面の下はしっかり固まって剥がれなかったので使えそう。スプラインが固着せず、軸方向に摺動できることが判ったのはありがたい。(歯の傷みが酷くない場合はグリスでなくシリコンスプレーでも良いかもしれない)

実地に応用(具体的には)

  • スリーブブーツはギアボックス側に追いやっておく。
  • ドライブシャフトとスリーブ、両方のスプライン部分をパーツクリーナーなどできれいに洗浄する。
  • スプラインの歯にまくれや大きい突起などがあればヤスリで修正する。
  • 傷みの少ない方(今回はたまたまスリーブの方が歯がきれいだった)のスプラインにシリコングリスを薄く塗布。
  • 歯の谷間にグリスが多く残らないように、しかし完全に拭き取ってしまわないようにグリスの厚みを均す。(シリコングリスの白い色が見えないくらい。先述「下準備の写真参照」)
  • 傷みの多い方(今回はドライブシャフト)のスプラインにロックタイト638をたっぷり塗布する。はみ出ても空気に触れる部分は硬化しないのでOK。
  • スリーブをドライブシャフトに押し込み、Cクリップを嵌め込むための溝を少し行き過ぎたところで止め、はみ出て固まっていないロックタイトを拭き取って1昼夜放置しておく(まだクリップは着けない)。
  • 一日後、スリーブの前後にロックタイトが滲んでいたら拭き取り、シリコングリスをたっぷり塗布する。
  • ギアプーラーをスリーブのフランジとシャフトの先端に掛け、外れない程度にフランジを引く(抜いてしまわない)。完全に固着していたら失敗なので、ヒートガンやバーナーで250℃ほどに加熱して引き抜き、1からやり直すか、諦める。
  • スリープの後ろに露出したスプラインにシリコングリスを塗のばしてから、スリーブを奥まで押し込み、手前に露出したスプラインにグリスを塗る。
  • 押したり引いたりを繰り返しスプラインの当たりをつけてなじませる。必要ならグリスを追加したり、シリコンスプレーを吹き付ける。
  • スリーブが手で動く*ようになればスリープブーツを戻し、シャフトにCクリップを装着し、先端の穴にスプリングを入れて、スリーブとフレキシブルジョイントをボルトで結合(トルク2.8kgm)する。(*手で動かないくらいだと駆動系に負担が掛かる恐れがある)

おわりに

繰り返しになるが、このその場凌ぎの応急処置が果たしてクルマにとって良いことなのか(財布には優しいが、、、)全くもって判らない。とりあえずやってみて、少なくとも「数日」経った現在、スプラインに異常はなく、クリップの脱落(とスプリングのヘタり)を放置しているままの状態よりは幾ばくかでもマシではある。
旧フィアット500でスプラインをナメて動けなくなったという記述はよく目にするも、これまではまるで他人事。知らぬが仏でずっと普通に走ってきたが、その前兆を見てしまったらもう放ってはおけない。とりあえずの手当はしたものの、この実験的補修の信頼性は全く不明であり、不安が無くなったわけではない。
「独自」開発の補修方法の信頼性を担保するものではないが、唯一、この「傷んだスプラインの隙間に何かを充填する」ということを報告している事例は自分の知る限り「しのはらプレスサービス株式会社」のスプライン補修システムがある。これはスプラインの途中に孔を穿ち充填剤を圧入して固化させるというもので、マツダが特許を保有しているらしいが詳細は判らない。当然自動車に応用できるからマツダが開発したのだろうけど、分解時にスプラインを抜くためにどのような方法を使うのか知りたいものだ。http://www.shinohara-press.co.jp/service/04.html
いずれにしてもある程度距離を走って検証が必要。やってみられるのなら人柱になる覚悟で。。。(笑)   そうでないなら続報を待たれたい。

追記:
Cクリップの脱落やスプラインの摩耗と関連があるかどうか判らないが、ドライブシャフト先端のスプリングが反対側のドライブシャフトのそれと比較して少し短く思えた。シャフトの穴からほとんどスプリングの頭が出ていなかった。新しいのを入手して比較したら下のように、単にヘタりによる長さの違いだけでなく、線の太さや巻数などバネレートも違うようだし、古いのは座面研磨もされていない。ウ~ン。。。

割れたTEXミラーの復活 FIAT 500

クラシックMiniによく使われている英国Tex社のミラーを取り付けて早半年。ナス形のスッキリした外観はとても気に入っていたのだが、ある日、角度を調節しようと鏡面を掴んで捻ったところ、パシッと音がしてガラスに亀裂が入ってしまった。シマッタ!バックプレートはぺらっぺらのステンレス薄板だからもう少し慎重に扱うべきだった。でも遅かりし。

Texはミラーヘッドだけ売っているし、日本でも入手可能だが、5〜7000円とやたら高い。ヤフオクで安く出ていたがコンベックス(凸面)ではなくフラットな鏡面。ただでも小さいのにフラットだと後方視界も狭まってやだ。

いつもの自作

そんで、安く上げるためにミラーヘッド全体ではなく、鏡面(ガラス部分)だけ取っ替えることにした。幸い割れた鏡面は粉々になってないからそれを型取りして、中古のミラーから切り出そうという寸法。前の赤耳ミラーから取り外す手もあったが、壊れてないのでまた使えるかもしれないし、ユーノスロードスターの初期型のミラーは少ないのでそれなりの値段で売っとばすことも可能。ヤフオクでドアミラーの鏡面のみなら送料込みで1000円もしない。

下準備

熱いお湯に割れたミラーをミラーヘッドごと浸してパッキンを柔らかくしてから引っ剥がすと鏡面はバックプレートから簡単に外せる。

Try 1(失敗)

まず手に入れたのはBMWのブルーレンズのミラー。しかし、切り方が解らず、ガラス屋さんがジジーッ、パリンとやってるダイヤモンドガラス切りを使ったが、敢え無く失敗。思った線で割れてくれない。曲線は難しい!

Try 2(失敗)

次にワゴンR用のを手に入れた。同じ失敗は繰り返さないため、小型のリューターを買った。1500円でもう一本タダって、2本も要らんし。ま、小さいので邪魔にはならない。今度はダイヤモンドカッターディスクで流水を当てながら慎重に切り出した。しめしめ上手くいった。(水が跳ねるのでペットボトルのネックを使った自家製カラーを取り付けた)

鏡は元のサイズかたちピッタリに作ったので問題なくバックプレートに嵌った。プラスチックのパッキンをお湯で温めて柔らかくし、鏡の周囲の隙間に詰め込んだ。うーん、、、あまり美しく納まらない。押し込んだパッキンが鏡の上下の長辺の中央部分でハミ出してくる。また熱いお湯に浸けて柔らかくしてグイっと押し込むと、パシっ!どっかで聴いたような音とともに鏡面にひび割れの筋が一閃。あちゃあ、、、 (;´д`)トホホ…

気づき

これって、あれじゃない?欠陥。凸面鏡を横長に切り出したら、緩い鞍形になる。ところがバックプレートは平面に作られている。パッキンがはみ出てしまうのはその鞍形の頂点とバックプレートの縁との隙間が狭くなっているからだ。それを無理に押し込んだら2mmほどのガラスは堪らず割れてしまう、と。元々の破損の原因もこれじゃね?

浅いお椀形にプレスされているバックプレートを鞍形の鏡に合わせて反り返るように曲げるのは容易じゃない。それで長軸に沿って凹ませるように曲げることにした。これは完全に曲線を添わせるわけじゃないけど、鞍形の両端を凹みに落とし込むことで狭まっている部分である程度の隙間を確保できるはず。(下の図では鏡の曲率やバックミラーを曲げた部分の形状を誇張してある)

下の画像は未修正のミラー。黒いパッキンがはみ出ている。

Try 3(なんとか、、、オッケー)

満を持して入手したムーヴのミラー。下1/4の曲率が大きくなっていて後方下部を見るための」無粋な補助ミラーを付けなくても良いし、願ったり叶ったりじゃん。先のワゴンRミラーでコツは掴んでるから手際よくカット。大きいので2枚取れるし。

整形したバックプレートは上下の辺の間が狭くなっているので、鏡も前2つより若干狭めておいた。その他、若干の修正を施してバックプレートに装着。パッキンも思い通りに嵌った。

めでたしめでたし。

車体に取付

散々あーだこーだの挙げ句、運転席側のドアミラーは復活。何か進歩とかがあるわけじゃなく、割れたミラーで不便だったわけでもなく、強いて言えば車検に通る状態に戻っただけ。曲率の変化も下方確認にはあまり役に立たない。無いよりマシな程度。

でも、まあ、バックプレートの修正で鏡自体は前より割れにくくなったかも。多分。


追記:

結局ミラーに3000円ほど、リューターに1500円。それでも5〜7000円もするミラーヘッドを買うよりは安い。(英国Tex社の直販ならミラーヘッドは3000円ほどだけど。2000円ほどの送料考えたら同じくらいか?)


FIAT 500 どうでもいいけど時計をぶら下げた

チンクのダッシュボードはミニマルでよろし。

其れ故に跡付けカーナビもインダッシュ化したのだが、時計が無いのでいちいちスマートフォンの画面を見なきゃならんくなった。(山歩きでもしない限り腕時計を着けなくなった今日此頃)

以前、元の職場を退いたときに同僚から贈られた鉄道時計を列車の運転台宜しくダッシュボードに埋め込もうと考えたこともあったが、うっかり置き忘れると盗難に遭いそうで止めた。代わりに盗られても一向に構わないような百均の安物時計を物色してみた。が、どうも余りにチープで面白くない。

腕時計の画像のようです

ところが先日、ネットで偶然見つけたナンチャッテのミリタリーウォッチが何気に良さそげだったので、ダイソーに立ち寄ったときに買ってみた。流石に100円とはゆかず500円也。

早速マグネットのフックでダッシュボードに吊り下げてみたが、悪かない。盗られても良い、とは思わないが、大切な記念の時計よりはダメージが少ないだろう。

 


FIAT 500 禁じ手、シートベルトのアンカー移動

座席のスライド量を増やすためにシートベルトのアンカー位置(巻取り装置のある方)を移動した。果たして安全なのかどうなのか、、、。できるだけの検討と対策は講じたが、力学的、工学的な裏付けのあることじゃないのでねえ。それでも、まあ、元々自動車のシートベルトが一般的じゃなかった時代のFIAT 500だから始めからベルトなんぞ付いてなかったんで、どんな状態であれ無いよりはマシと、とりあえずやっちゃった、と。(本来これはやっちゃダメなことなんでマネするな、と言っておこう、とりあえず、、、。自分が何やってんのか解らない輩がいるんで、一言書いておかないとねえ、、、)

以下にゴチャゴチャ書いたけど、あんまり意味ねえし、写真を見れば一目瞭然。(下のアルバムをクリックすれば自動でスライドショーが始まる)


以下、元の文章(うざい)。消すのがもったいないので残すが、読む価値はあまりないと思う。

元々FIAT 500にはシートベルトが装備されていなかった。最後期の500Rにはベルトが在ったか無かったか知らないが、アンカーとして前席シートレール直後のフロアパン裏側に座金とナットが付けられていた(らしい)。後にフロアパンを取り替えたような車体にもアンカーが在るそうな。ていうか、ウチのチンク嬢は中期型で一番多く生産された500Fだがアンカーが付いていて、それも後からやっつけで取り付けたようなものではなく、フロアパンの件の座金が取り付く部分は、その座金の形に合うようにプレスでくぼみがつけてある。考えられるのはこの個体が上記のようにフロアパンの交換を受けたか、あるいはF型の生産時期に既にシートベルトのオプションがあったのかもしれない。

巻取り装置のアンカーボルトを外す。(実はこの写真は助手席側だが、他の運転席側の写真と方向が整合するように「裏焼き」にしてある)

何であれ、ウチのチンクちゃんにはシートベルトが装備されている。そんで、ベルトの巻取り部分は厚さ3mmのごつい鉄製フラットバーでできたL字金具でアンカーに固定されている。ところがこの巻取り部分の位置がよろしくない。こいつが在るお陰でシートが金具に当たって後ろに下がりきらないのだ。昨日、運転席側の座面を若干下げる改修をしたのだが、それとは別に、わずか数cmだが前後のドライビングポジションが窮屈なのだ。純正のシートは背もたれがパイプ一本の薄っぺらいものなので、おそらくこの問題は発生しないのだろう。ただ、以前載せ替えたミラ・ジーノだか何だかの現状シートは背もたれがそれなりに分厚く、後少しスライドできたらなあ、と常々考えていた。

ベルトの巻取り装置が邪魔でシートが下がりきらない。

で、その「数cm」を稼ぐためにアンカーポイントを後ろに移す決断をした。問題は安全に関わる部分を勝手に移動させて、強度を確保できるのか、また法的には如何なものか等々、ひょっとして「やっちゃイケナイこと」なのかも知れないな、、、と。強度計算も法的裏付けも無いが、唯一の根拠、ていうか言い訳は「元来シートベルトは装備されていないのだから、今付いているものは単なるインテリア小物、もっと言えば装飾品と何ら変わりない。故にその改造についてお上に文句を言われる筋合いは無い」という強引なもの。(実際、シートベルト装備が法令化された1069年(昭和44年)以前の旧車の多くは元からベルトが付いておらず、したがってベルト装着の義務もない。たとえ後付けしたベルトを装着せずに運転していてお巡りさんに見咎められても反則切符は切られないのだ!)

とは言え、やはり我が身は可愛い、命は惜しい。だからアンカー移設に当たり、ボルト・ナットや座金についてそれなりの考察は行っている。現行のボルト・ナットはおそらく高張力・高強度のもの。だが座金は幅が約30mm、長さ60〜70mm、厚さ1mm程度の薄い鉄板をプレスで浅いコの字にしてあるだけ。そこにナットが溶接してある。フロアパンはボディーの中でも最も分厚い部分だけど、座金と合わせても2mmやそこらしかない。いくらL字金具やボルトに強度を持たせても、強い力が加わったら薄っぺらい座金がちぎれるか、フロアパンが破けて座金ごと引っこ抜けてしまうのではないか。

いざ事故のときにどれほどの力が働くのか考えてみないとね。「時速40kmの車が壁などに衝突したときの衝撃はビルの3階(約6m)から落下したときの衝撃とほぼ同じになります。このとき、身体には体重の30倍以上の力がかかり、体重が60kgの大人だと約1.8t(交通事故慰謝料協会HPより)」だそうで、仮に座席両サイドの2つのアンカーに均等に力がかかったとしたら1本のボルトに約0.9tの荷重がかかることになる。ところで、今回使用したのはM12で強度区分10.9の高強度ボルトだから、最小引張破断荷重は87,700N、およそ8.95tの荷重まで耐えられることになっている。40km衝突時の約10倍。まっすぐ引き抜き方向に力が働くとは限らないからせん断力耐力を考慮したり、事故では静的荷重ではなく衝撃荷重なども取り込んだ上に、安全係数も、、、と言い出したらキリがないが、ともかく高強度のM12ボルトが破断するような事故が起きたらベルトが先に切れるか、人間の身体の方が音を上げてしまうだろう。(ちなみに新しいナットは、座金にロウ付けした方が通常の4.8強度区分のフランジナットで、その上から高強度(S45C-H) のロックナットで締め付けてダブルナットにしてあるので、これも強度は十分と考えている)

おっと、元々のボルトはM11だから、途中省略するが、M12の断面積の約0.7倍であり、破断荷重の強度も面積の比に対応して約6.3tだった。それでも十分な強度だった。(あくまで両方とも同じ強度区分「10.9」だとしてという仮定)

新たに作った座金はオリジナルより厚みをウンと増して4.5mmとした。これで、少なくとも座金+フロアパンの合わせ鉄板の孔がボルト引き抜きの力に負けて、ボルトがナットごと引っこ抜ける、ということは起きないだろう。

新たにM12のフランジ付き高強度アンカーボルトを用意し、ナットをロウ付けした座金(4.5mm厚)をでっち上げた。

よく「鎖の強度は一番弱いリンクの強度によって決まる」とか、「木桶や樽の側板の長さが不揃いであれば一番短い側板でその容量に制限がかかる」と言われる。いくらボルト・ナットが強くても座金がペラペラじゃ話にならない。しかし座金を分厚くしてもフロアパンが引き抜き方向の力に負けたら今度はボルトや座金ごとブチ抜けてしまう。。。うーん、強度計算を行うための十分な情報や知識がないので、これじゃあいくら思案しても堂々巡りだわ。

どうせ話が元に戻るのなら、結局はボルトにしても座金にしても、元々のものより幾分かなりとも強度を上げておけば何とか同等の安全性は確保できるんじゃないか、という漠然とした期待と、もっと遡って「本来、このクルマにはベルトが付いてないんだから、どのような改造であるにせよ「無いよりましじゃね?」というケツまくりの最後っ屁。

ちゃんちゃん!


あれから4年 FIAT 500 フロントシート改造 その後

ウチに来て最初の車検当日
4年前(2018)バケットシート取り外し

10年近く前に中古でうちに来たときはバケットシートが付いていた。だがあまり実用的ではないし、乗り心地も今ひとつ。そんで今からちょうど4年前、ヤフオクで見つけた軽四用の中古シートに載せ替えた。

左:ミラジーノのレザーシート(赤ステッチ)、右:Fiat 500のオリジナル(といっても多分張り替えてある)

  

シート交換の顛末は↓から、、、

Fiat 500 フロントシート交換 その1

と、まあ、この辺は以前の投稿やFB、インスタなどに書いた。シートのベースフレームは昆布金物店にお願いして、そのプロフェッショナルな仕上がりには大満足だった。・・・が、自分の設計がマズく、着座すると普通のドライビング姿勢で視点が若干高い。あと2cm座面が低ければなあ、、、。

アイポイントが高いとウインドシールドの上辺がかぶさって交差点で停車中に信号や標識が見にくいことがある。また、乗り込む際に屋根で頭をぶつけそうになるので窮屈な感じ。座ってしまえばどうということもないのだが。

図面で決めた高さはあくまで「勘」によるもの。それと助手席座面下の小物トレイのスペースも確保する必要もあった。果たして出来上がったフレームと座席を合体させ、車内に取り付けたら「ほぼ完璧」。しかしその「ほぼ」が上記のアイポイントの高さ問題だった。実用上の問題とか運転に支障や危険があるわけではないが、フィーリングがどうもしっくりこないまま4年が過ぎて、もうこっちの身体がそれに慣れてしまっているという感じも無きにしもあらず。。。

今朝、急に思いついて(っても以前から目論んでいたけど)、座面の高さを変更することに。助手席は弄らず、運転席だけ。それも4点あるフレームとシートレールの結合部の後ろ側2つだけを2cm下げる。つまりヒップポイントだけ沈ませるという、まあ手抜きではある。

後ろだけ下げると前方の結合部を若干こじるようなことになるし、正確に言うと前後の長さも変わってくるが、まあそこは目をつむる。何しろ公差なんて概念が無い、いい加減な仕事をする僕ですから。(昆布金物店の仕事に泥を塗るようなことで申し訳ない)

実際にやったことは以下の通り。

  • 後方右手側は頭をカットして2cm下に新たなネジ穴を開ける。
  • 後方左手側は天板にネジ穴が開いた状態なので、これをカットし、垂直の壁を折り曲げて新たに低い天板を形成、ネジ穴を開ける。(ガスバーナーで炙り、鉄床の角を使ってハンマーで叩いて曲げる)
  • 焼けた塗装とサビを落とし、塗装する。

加工と塗装を終えて、シートの復旧。先ずフレームを車体のフロアに戻してネジで締結。座席を乗せると予想通り、シートレールとフレームの間に若干のズレはあったが取り付けが困難というほどでもなく、加工した後方の結合部から仮止めし、すべてのネジが位置についたところでまた後方から本締めしたら歪もレールのスライドに支障もなく、スムーズに動く。下の写真でもヒップポイントが下がっているのが確認できる。

手前のシート座面が画面左側で下がっている。(赤線角度)

改造後に座ってみると、座面後方が2cm下がっただけで先ず感じたのは乗り降りがかなり楽になったこと。普段から先にお尻をシートに乗せて、後から頭を車内に入れるのだが、首を窮屈に曲げる必要がなくなった。

前方視界も、ウインドシールド上部の覆い被さる感じが減り、まだ街乗りしていなが、きっと交差点で停止中に信号等も見えやすくなっているにちがいない。逆にハンドルが目の前にせり上がっているような感じがあるが、圧迫感があるほどでもない。

もともと天井までのヘッドクリアランスは十分なので、助手席は弄らないことにした。(こちらは座面下のトレイが干渉するので改造はおそらく不可能だろう)

めでたしめでたし


追記:座面が下がり、いい感じになった座り心地。でもまだ不満があった。その辺は次の「FIAT 500 禁じ手、シートベルトのアンカー移動」で。