テウサヤウレ→カイトゥムヤウレ















テウサヤウレの小屋を出る前に、昨日見せてもらった薪小屋で「エクササイズ」をやる。太い薪は節があって、なかなか割れない。それでも、僕が使ったよりずっと多くの薪を作る。
出かけるときに、管理棟へ寄ってほしいと言われ行ってみたら、昨日の犬連れの女性は怒って支払いを拒否して出発したとか聞かされた、、、。あ、用事はそれでなく、次の山小屋カイトゥムヤウレへ届けてほしいという封筒を言付かった。こんな所で山の郵便配達夫をやるとは、、、。彼らの居住室に入れてもらい、ついでに色々話をする。今日の行程は9kmと短いので、のんびりできる。
モータボートの朝の時刻が5時半から、と異常に早いのは、ヴァッコタヴァーレのバスが今年からお昼頃の1本になってしまったからだという。そのバスに間に合わせるには朝の早く出ないといけないし、逆にバスでヴァッコタヴァレに着いて、こちらに来ると夕方6時半とかになる。バス会社の都合でおかしな時間になってしまったが、自分たちはどうしようもない、と管理人さんたちは言う。昨日の老人たちはそのことを知らなかったために、泊まったヴァッコタヴァレの小屋からずいぶん早く出てしまったというわけ。しかも、何度もここに来てるので、小屋での情報確認を怠って、長く待たされるハメになったと。。。結局、自業自得なんだけど、それを認められないのが老化なんだろうな。
のんびりしていたら10時を随分過ぎている。午後から風雨が強くなるとのこと。管理人のレナさんとベニトさんに別れを告げて、小屋の裏から急坂を登る。
小一時間ほどで道は緩やかな登りに変わり、あとは高原上の開けたところをあるく。向かい風が段々はげしくなってくるが、今日の最高地点の鞍部に到達すると風が緩む。3つの頂に挟まれた特殊な地形のせいかもしれない。しかし、下りに差し掛かると雨。風もまた強くなる。
下りがまた少しずつ急になる頃、下の方に湖らしい水面が見える。2、3百mは下らないといけないな。せっかく、今朝ガシガシ高度を稼いだのに。
やがて、また樹林帯に入り急流の右岸に至る。川沿いに木立の中の道を進むとトナカイの金網柵に沿うようになる。途中に木でできた出入り口があり、丸太の横棒を引き抜いてそこを通り抜けないといけないのに、サインを見落として柵に沿ったまま数分歩いてしまう。それまでぬかるみにあった登山靴や犬の足跡が無くなっているのに気付き、こりゃおかしいと思って引き返す。柵を越えてしばらくすると吊り橋があって左岸に渡り、1〜2kmも行くと前方の高みに木の葉の間から今日の目的地、カイトゥムヤウレストゥガンの小屋が見える。
小屋は2人の女性が管理していて、最初に出迎えてくれたレナさん(偶然、テウサヤウレのレナさんにと同名)に封筒を渡す。朝の薪割りで遅くなったと言うと、ここでもやってね、と。でも「超重い封筒」を運んだんだから、今日はいいっしょ、ということに。
もう一人の管理人はシーアさんで、スペルはCIA、危険な名前でしょ、と名札を見せながら冗談を言う。
客室棟に行くと、先の小屋で一緒だった老夫婦が先に着いている。犬と一緒の女性はやはり別棟泊まり。一切本棟には顔をださない。人嫌いなのかも。昨日、結構ずうずうしくボートに乗り込んで来た夫婦は、今日は意外と愛想よく、また僕の部屋へ薪を運んでくれたりと気遣いしてくれる。フィンランド同様、高齢者は英語がそれほど得意でないのかも。そのせいでボートでのやり取りがうまくいかないまま乗り込んで来たのかな。
小屋には他にもスウェーデン人やスイス人の男性がいる。夕食後、一緒にサウナで汗を流し、いろいろ話をする。とくにスウェーデン人のおじさん、っても僕より若いだろうが、は話好きで、かつ、英語が堪能なスウェーデン人一般のレベルよりさらに飛び抜けているので、いろいろ話しが弾む。彼の英語をアクセントを聞いていると、ミネソタにいた頃、スカンジナヴィアからの移民の子弟が大学に溢れていて、いや、町や村にスカンジナヴィア訛りの英語で話す人が苦労したことをおもいだす。
スウェーデンに来てからずっと、食堂などで皆がスウェーデン語で喋っているのが聞くともなく耳に入ってくるが、ふとした拍子にあの頃の英語をに聞こえてしようがない。たまに、僕の英語のアクセントが米中西部の北部のものだと言い当てる人がいるが、、、ま、そんなこたあ、どうでもいい。
昨日の小屋で買ったジャムがリンゴンベリーのだったので、ブルーベリーと一緒に木に生っていた赤い実がそうなのか尋ねてみたら、大きいのじゃなくて小さい赤いのだ、と話好きの人が教えてくれる。なるほど、僕は何度か赤い実を食べてみたが、まるで味がなかった。根が欲どおしいから損をしていた。でも、小さい本物のリンゴンベリーを食べてもやたら酸っぱいらしい。ちなみにブルーベリーのモドキ(kråbär=crawberry=カラスのイチゴ)があるそうで、こちらは小さい方が美味しくない、と、話の最中におじさんは外へ出て行き、戻ってきたら、ブルーベリーとkråbärとリンゴンベリーを積んできてくれた。さらに、幸運ならHjortronという黄色いベリーも見つかるかも、とか。とても高価なので、ブルーベリーとともに外国からの労働者が摘みに来るらしい。ソルセレンで見た、袖やズボンの裾が青く染まった作業着を着たタイ人の一団を見かけたが、タイ料理の屋台のオヤジさんがベリー摘みに来てる人らだと言っていた。
夜中になって、風がすごい。山小屋が揺れている。眠れるかねえ、、、(外でテント張ってる強者のドイツ人青年がいるが、大丈夫かね。。。)
昨日、ヴァッコタヴァーレまで乗せてくれるという人を編み物の先生と思い込んでいたが、どうやらサーミの人たちの手編みミトンに詳しい出版関係の方のようだ。ヨックモック在住のエリカさんという。
Kungsleden再スタート地点のヴァッコタヴァーレより先に長さ数十kmにわたる大きな人造湖がある。車の中で水力発電で得られる電気と、その引き換えに、その湖が環境や周辺に住んでいる人たちに与える影響の大きさと、もっと言えば害についてエリカさんに色々話をしてもらう。(あとで気づいたが、それはストゥーラ・ヘォファレットのことだった)
ヘマヴァンからここまで来るあいだに何度か、スウェーデンに残されたダムのない主要河川はたった4つしかないと聞かされた。うーむ、、、日本にはダムのない河川が幾つあるのだろう。恥かしながらよく知らない。清流として有名な四万十川はどっかにダムがあったかな、同じ高知の仁淀川はどうだろう。。。思いつかない。
Kungsledenを歩いているから当然、そういう意識の高い人たちと出会うのだろうけど、、、そこへお邪魔している僕は、日本のこと知らないまま、またスウェーデンの環境について調べもしないで来てしまったなあ。。。
エリカさんは出版関係者などではなく、サーミの手編みミトンについて講演をしたり、展覧会をオーガナイズしたりしているそうだ。邪魔になったら人にあげて、と綺麗なパンフレットをもらう。日本まで持って帰りますよ。(スウェーデン語で読めないけど、、、汗)
ヴァッコタヴァレでお別れし、車の道からすぐそばの山小屋で次の小屋の手前にある湖を渡るボートについて訊く。モーターボートは日に2回、夕方は6時半から7時半までの間だけ。それ以外は手漕ぎボートで渡ることになる。
急な道を登り切るとあとはダラダラ平坦。やたらにトナカイがいるが、意外と近くまで寄っていってもあまり警戒するふうでもなく、一度はこちらに向かって群れが走り始め、こっちが驚く。
だんだんと下りになったころ、ちょっと深い谷に道が直交している場所に出くわす。靴を脱いで徒渉かな、一瞬覚悟。川へ向かってちょっと進むとbroと書いた表示がある。どうやらbridgeの事らしい。その指し示す方へ10分ほど川下へ降ると、やはり橋がある。なんだかんだで、2〜30分ほど遠回り。でも、冷たい川を裸足で渡るよりはいいか。。。な
手漕ぎボートは全部で3艘。こちら側に2艘あればラッキー。もしも、1艘しかなかったら、、、先ず、それを使って向こう岸まで渡り、もう1艘を引っ張って戻り、引っ張って来た1艘を残して、また向こう側へ、、、と片道1kmを都合3回漕ぎ渡ることになる。。
果たして、湖岸まで下りてきたら、、、1艘しかない!やっぱりね。。。
ボートの側にモータボートを待つ人が年配の3人、ライフジャケットを着けて待っている。もう1時間半、寒い風に吹かれて待ってるのに、合図してもちっとも来ない、と怒っている。まだ4時なんですけど、、、と言っても聞かない。いや、合図(白いポリタンクを棒の先にかかげる)をしたら今までなら直ぐ来た。サボってるにちがいない、と。
寒そうでかわいそうなので、僕が手漕ぎボートで向こう岸の小屋へ行って、待ってる人がいると言ってきてあげる、とボートに飛び乗る。横風がが強く、かなり風上に向かって漕がないといけないうえに、横波もあって横揺れが激しくメッチャおっかない。
何分漕いだか夢中だったので判らないが、なんとかたどり着く。小屋の管理人さんに直ぐモータボートを出してあげて、と言うが、やることが山積していて時間になるまで行けないとのこと。実は、僕もスケベ心があって、モータボートを出してもらえたら乗ってきた手漕ぎボートを引っ張って帰ってもらえるかも、、、と。でも、そうは問屋が卸さない。ぐずぐずしてると、次のトレッカーが来てボートが必要になるかもしれない。それに、待ってる人らに、迎えは時間まで来ないよと言ってあげないと、、、
ある意味ガッカリしながら漕ぎ戻る。3人に迎えは来ないと説明したら、ここは何度も来てるからそんなはずはない、とカンカン。とくに犬を2頭連れた女性は激しく毒づいている。
僕は事実を伝えただけなのに、なんかいたたまれないので、引っ張って来たボートを岸に引き上げて、取って返そうとしたら、カップルの2人が僕のボートに乗り込んできた。犬が一緒の女性は手漕ぎボートには乗れないけど、自分たちは寒くて待ってられないからって、、、。彼らはどう見ても僕より10歳は上にに見える。まあ、どっちにしても僕が漕いで戻るつもりだったからいいんだけど。。。重い。
3度目となると握力が上がってしまう。背筋や上腕二頭筋はトレッキングに使わないのでまだ元気なんだけど、、、。3人乗りで一つだけ良いことは、重心が下がり吃水が深くなってボートが安定すること。最初の2回ほどは揺れない。それにしても、覚悟はしていたとはいえ、ボート漕ぎでひどく苦労する。
かくして3人は無事に渡り終え、やがて運行時間になって犬連れの女性もモータボートでやってきた。が、もうメチャクチャ怒りまくってる。幸い、犬が一緒の人は別棟のキャビンに泊まらないといけないので、それ以降、彼女の口汚く罵るのを聞かなくても済む。
管理人夫妻は融通の利かない人たちなのかな、と思ったが、そうでもなく非常に親切。待たされた人たちは自分たちの経験と古い情報から離れられず、事情が変わったことについて行けなかっただけなんだな。
どこかロビン・ウィリアムズに似た男性の管理人さんが、施設を案内してくれて、薪小屋の前で「こちらがフィットネスジムで、思う存分エクササイズしてください」と言うが、ボート漕ぎ3本やった今夜は堪忍してね。
ヴァッコタヴァーレからKungsledenのトレッキング再開のために早朝、イェリヴァーレ行きのバスでヨックモックを発つ。逆にイェリヴァーレからヴァッコタヴァーレ方面に向かうバスに乗り換えで、途中のポリウスという村の先6kmのところでバスを降ろされる。何もない三叉路で3時間待ち。。。
ヨックモックから乗ったバスはわざわざルートを外れて、次のバスが来るバス停まで送ってくれた。そのバスもUターンして行ってしまった、、、
予定を変更して、ヴァッコタヴァーレを通過して、バスの終点リッツェムに向かうことに。詳細はこちらのテキスト投稿で。