蒸し器 試運転 その2

さて、出来上がった蒸し器に実際に蒸気を入れる。そのために鍋をコンロごと上下させる昇降台も作った。

使用したコンロはうちにある2.6kw (2300kcal/h)のカセットコンロに、250gのガス缶を装着した。燃焼時間は1時間26分(実測)。ちなみに一般的なものは3.5kw、3000kcal/hほどで燃焼時間は約1時間ということなのでかなり省エネだけど、その分だけ温度の上昇が遅くなっているかもしれない。

鍋に入れた水の量は3リットル。水温を計り忘れたけど、水道から出たままなので室温より少し低いくらいだったろう。3リットルの根拠というほどでもないが、以前にIHコンロで鍋に水を2リットル入れて、蓋をせずに蒸発するまま沸騰させておいたら2時間ほどでほぼ空になったので、それより火力のあるガスコンロで1時間半近く火にかけたら5割増しくらいの量がいるだろう、といういい加減な推量で決めた。

温度計を外箱最上段の土手っ腹に開けた計測孔から挿し込んで、内箱の内側で、且つ内部に吊り下げた生地よりは外側の位置で計測。(実際に使用する時には、内張りの新聞紙や布があるのでこの位置での計測になる)

実際の使用に準じて、生地の代わりに新聞紙を中枠のカギ針に引っ掛けて吊るした。生地を痛めないよう針の太さはφ0.8mm。バネ用のステンレス棒の先を研いで針にしたものだが、細くて見えづらく、うっかりすると手や腕を針先に引っ掛けて怪我をする。ひどく痛いし、血も出るが、針が細いのが幸いして弾力があり、ブスッと突き刺さらないで済む。

温度変化のメモ(iPhoneより)

加熱スタート時点での水温が低かったので、おそらく沸騰するまでかなり時間がかかるだろう、と予測。案の定、最初の15分ほどは温度上昇が遅かった。20分以降は順調に上がったが、それでも目標の98℃に達するのにスタートから55分もかかってしまった。

それから5分間は98℃以上を維持していたが、スタートからちょうど1時間目に異常が発生! 蓋の角から蒸気が漏れ出したかと思うと、木ネジと耐熱接着剤で固定しているはずのコーナーに隙間が開いているではないか。同時に温度が下がり始め、スタートから1時間26分でガス切れして加熱終了した時点では92℃ほどに。これはアカン!

最初に恐れていた構造(強度)上の問題がさらけ出されてしまった。このザマでは、いくら丈夫な檜材を使っても接合部分が剥がれてしまうようなものを納品できない。

ただ、収穫は、蒸気漏れがなく、内部温度が上がってさえいれば、火力が弱めのカセットコンロでも十分に98℃以上を維持できそうだと判ったこと。

湿った外箱の木が十分に乾いたら補修と補強を施して再度挑戦する。以下は「完成」っした蒸し器の試運転の顛末写真。


蒸し器 試運転 その1
(コンロ昇降台)

外箱外観

形は出来上がったものの、いろいろ不安がある。

まず、構造上の問題。基本的に継ぎ目はステンレス木ネジで固定してあり、外蓋の枠と板は熱に強く固化後も弾力性のあるシリコーン系接着剤(セメダインのスーパーX)で固め、補助的にズレを防ぐ真鍮釘を打った。そして、外箱の板には反り止めの溝を彫り込んである。はたしてこれらが熱と湿気による板の変形応力に耐えてくれるのか。

木取り完了。。。ふう。。。

もう一つの問題、というか心配は、丈夫さを第一に考えて檜の厚板(t25mm)を使ったことで、板の温度が上がりにくくなる可能性があること。軽い杉や桐などのよりずっと重く、比熱容量が大きい檜の厚板が熱をどんどん吸い込んでしまったら、内部の温度が100℃近くに達するまで恐ろしく時間がかかるんじゃないか。

強度も、温度も計算したわけではなく「だいたい、こんなもんじゃね?知らんけど」というヤマカンでやっつけたものだ。もちろんダンボールで予備的な実験はしているが、ダンボールと桧材では比較にならない。

悩んでいても始まらないので、まずはコンロに水を入れた鍋をかけて実地にやってみるしかない。

ところがここで、別の問題が発覚。蒸し器自体が非常に重いため、コンロと鍋を台の下にセットしてから、その上に蒸し器を組み上げると、途中で鍋を下ろして水の量を確認したり、水を足したりするのが困難になる。鍋は外箱の底にある接続のための円筒に挿し込んであるので、そのままでは横に引き出すことができない。まず、コンロと鍋を数センチ下げて円筒をクリアする必要がある。コンロの下に鍋敷きのような板を敷いておき、それを引き抜いてやれば下げることは可能だけど、ぐらぐら沸騰している熱湯が入った鍋が傾いたり、ガタンと落ちるのはやっぱ危ないし、、、。

ラボジャッキ(Amazonより)

そこでラボジャッキのような昇降台を探したが、天板がコンロを置ける30cm四方あって、最低厚みが数センチで、上下の移動幅もほんの数センチという都合のよいものは売ってなさそげ。危険がなく、無理な力も要らず、コンロとその上の熱湯入り鍋を上下させる「装置」をでっち上げることにした。パンタグラフや歯車、チェーンなどで均一に連動する凝った構造はパス。断面が長方形の2本の棒を底板と天板の間で90°回転させるだけの原始的なジャッキを思いついた。他で見たことがないので「新発明」と言えるかも(笑)。ちなみに、ハンドルが90°を少し行き過ぎて止まってるのは、ジオメトリック・ロックがかかるようにしてあるからで、こうすることで少々の揺れでもパタンとハンドルが倒れることがない。

自家製昇降台の上下の高さの差は約2.5cmで、これだけあれば鍋の縁は接続円筒より下に下り、コンロごと差し入れたり、引っ張り出すことができる。(それでも鍋の最上部が蒸し器の台をクリアできないという、ちょっとおマヌケなアクシデントがあったが、台を削るという荒業で解決)

この後、実際に水を入れた鍋をコンロの火にかけて蒸気を発生させ、温度の上昇具合を計測したが、長くなるので今日はここまで。ふう、、、