十年以上も前だろうか、知り合いの堺町画廊の窓ガラスにヒビが入り、その修理をしたことがある。おそらく戦前から嵌っていたであろうガラスは良い感じに表面にムラがあって、新たに平滑なガラスと入れ替えたら違和感がある。
そこで、昔、まだガラスが貴重だったころに(と言っても昭和3〜40年代だが)よく見かけたヒビ割れを継ぐファスナー状の部品で修理することになった。(画廊のオーナーから頼まれた、というか、僕が買って出た)
その部品の名前は知らないし、おそらくもう売ってもいないだろう。無けりゃ作るだけのこと。
とは言うものの、どこかに見本があるわけでもなく、もちろん作り方もわからない。おぼろげな記憶を頼りにおそらくこうだろうという構造を考えだした。
まあ、さほど複雑でもないし、工作が難しいわけでもない。ビールの空き缶(その時はスチール缶)をリボン状に切り出し、両側にタブ状に切れ目を入れて交互に上下に折り曲げ、ムカデみたいになったファスナーをヒビの隙間に挟み込む。ただそれだけ。
子供の頃に見かけたものは工業製品だからタブが細かく揃っていたが、間に合わせのブリキバサミではあまり綺麗には手作りできない。タブは1辺が5mmくらいの方形になってしまった。でもまあ、許容範囲だろう。
折れ曲がったタブを木槌の頭で押さえつけたり、軽く叩いたりして、ガラス平面に馴染ませた。
もうずいぶん前のことだからどれくらいの時間を費やしたか憶えていないが、まあ、チマチマとめんどくさい仕事ではあったなあ、、、
(忘れられた方法でガラスを継いだら、戦前生まれだった当時の画廊オーナーには喜んでもらえた)
GlassFastener-compressed