テレビをつけたら、NHKで Asia Insight「すべての人に靴を~ブータン~」という番組の最後数分のところだった。
最初から通して観てないから番組自体の意図は判らないし評価もできないが、ブータンの現実につて部分的ではあってもとても重要なことが見て取れる。
スイッチ入れたとたん、先ず僕の目に入ってきたのは、普段ほとんどメディアで採り上げられることの無いネパール系住民とその村の場面。首都ティンプーの靴修理屋さんがボランティアで山間僻地の人たちに無料で靴を配り、修理を教えるという話でだが、そこに映しだされていたのは日本の巷に溢れている「ブータン=幸せの国」というでっち上げのイメージではなく、貧困で靴も買えない人たちの現実の姿だった。
番組のメインのテーマではないにしても、テレビでブータンの少数民族や貧困ということについて隠さず伝えらるのは、これまで僕の知る限り極めて少なかった。再放送があるので最初から観てみたい。
Asia Insight HP
https://hh.pid.nhk.or.jp/pidh07/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20160710-11-07818
追記:
ブータンでは王族も含めよく知られている「日本人に似た」顔立ちのチベット系住民が主要民族を構成している。でも実は他にもネパール系などの少数民族がいくつも存在する多民族の国で、その多くは貧困や劣悪な生活、差別に苦しんでいる。なのに日本のメディアはそんな側面には目を瞑り、「国民総幸福」が先代国王の提唱した「目標」にすぎないのに、あたかも実現されているかのように伝えてきた。また、日本の多くの人がそれを疑わず鵜呑みにする。僕がブータンに行ったことがある、と言うとたいていの人は「ああ、あの幸せの国ですね。いいなあ、、、」とくる。
僕が泊まったティンプーの宿には、10代半ばのお姉さんと一緒に住み込みでかいがいしく働く10歳くらいの少年がいた。ヨレヨレの服にゴム草履の彼に親のことを訊いたら「Mystery」とはぐらされた。あるとき部屋の掃除に来た彼は、僕の連れが捨てた破れ靴下をゴミ箱から拾い出して大事そうに持ち帰っていった。僕らは後ろめたさと恥ずかしさできまりが悪かった。彼らはブーティアというシッキム北部の民族の出だった。
インド国境のジャイガオン/プンツォリンの街からヒマラヤの懐に抱かれた首都ティンプーへの道すがらしばしば見かけた道路工事では、土埃とコールタールまみれになりながら働く人達が大勢いた。彼らはモンゴロイドではないネパール系の住民だった。ブータンの国籍をもつ国民かもしれないし、ネパールからの出稼ぎなのかもしれないが、その後、道路建設などのインフラが整うにつれ、余剰となった肉体労働者(=少数民族)は国外へ排斥されるこになる。(ネパール系でもブータン国籍を持つものはその限りではないと政府はいうが、元々戸籍などの制度がなく、貧乏であればあるほどそんな証明ができないから、十把一絡げに追い出された。体のいい民族洗浄ではないか。)
いずれにしても劣悪な環境で働き生活している人たちは、王様の思いついた絵空事の「Gross National Happiness」とは縁遠いところにおかれていた。あれから四半世紀経ったが、テレビに映った村のネパール系の人たちの暮らしぶりが格段に良くなっているようにも見えなかった。。。