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おかんのフィアット850スポルトクーペ

僕が最初に所有した車はスズキのジムニーだけど、免許のある無し(ナイショナイショ)にかかわらず運転したまさに最初の車といえばフィアット850 スポルトクーペだ。

FIAT 850 Sport Coupé (ただし、おかんのは真っ赤だった)

その車は僕のおかんので、僕が運転免許を取ってからは好きな時に運転させてもらえた。そのフィアットは僕が18かそこらの時にウチにやってきたが、そんときはまだ免許持ってなかった。にもかかわらず、おかんの留守に乗じて時たま運転した。運転現場を見つかることはなかったから、おかんに気づかれてないと思ってた。今となっては、おかんが僕の悪行を知ってたに違いないと確信しているけどね。

その頃よりずっと以前、おかんはポルシェというもんが欲しいとよく言っていた。1963年といえば、日本最初の高速道路、名神高速が開通した年だ。開通後数年経たないころ京都府警の交通機動隊がポルシェ911の廉価バージョンである912を導入。スピード出したい向こう見ずなドライバーたちを萎縮させるために権威をひけらかし、交通を支配しするって寸法だった。おかんは当時まだ珍しかった女性ドライバーで、どういう風の吹き回しかそんなのに熱をあげていた。(クルマは5速マニュアルじゃないと、という変なこだわりのある人だったし、、、後にはホンダのCRXとかにも乗ってたし、、、)

東京オリンピック(’64)と大阪万博Expo 70のあいだ頃で、日本の経済は急成長していた。そんでおかんの商売もまた好調だった。思うに、おかんが買おうと思えばポルシェも夢じゃなかったはず。でも代りに選んだのがフィアットだった。「なんでフィアットやねんな?」と、ポルシェが来たらいいのにと思いながらおかんに尋ねた。うろおぼえだけど、おかんが言うにはガレージが狭く、特に幅はナローボディーのポルシェですら収まらなかったんだとか、本当かどうか知らんけど、、、。で届けられた(「真っ赤なポルシェ」ならぬ)真っ赤なフィアット850スポルトクーペはめっちゃキュートで僕もひと目ぼれ。

昨日、夢の中でウチに来たおかんのフィアット850スポルトクーペ。「母と子」ですよ、わかるかなぁ〜・・・

下のYoutubeビデオ見て初めて気が付いたんだけどフィアット850とフィアット500のリアエンジンの配置形態その他は– 前者は水冷、後者は空冷の違いはあるけど– 互いによく似ている。850のマウント方法見てみ。エンジンが後端でバネマウントされてるけど、それって500のと同じやん。エンジンフードのストップしかた見てみ。キャッチの機構は丸い滑車使う500のドアキャッチから直に借りてきたやつやん。その他、フロントのトランクにある、ジャッキやらウオッシャー液バッグやら、スペアタイヤとバッテリーの置き方やら、みんな500とそっくり。内装見ても500のそれと雰囲気が良く似てる。まあ、ちょっとだけゴージャスだけど。センタートンネルの上のシンプルで慎ましい小物トレイやシフトレバー、ベダル、その他諸々も、直に500の血を引いているのを示していて、思わずニヤリ。

年月が過ぎ去って年を取り、今さっきまで僕の初恋、、、いや、初車のフィアット850スポルトクーペの細かな部分を忘れてしまっていた。このビデオに行き当たって、いろんなことが蘇ってきたし、結局、車選びということでは知らず識らずにおかんの足跡を辿ってしまったんだなあ、としみじみ。まあ、今日そういうことを発見して嬉しいけどね。


Mom’s FIAT 850 Sport Coupé

日本語はこちら

Although my first car owned by myself was a Suzuki Jimny, the very first car I drove with and without (hush hush) driver’s license was a FIAT 850 Sport Coupé.

昨日、夢の中でウチに来たおかんのフィアット850スポルトクーペ。「母と子」ですよ、わかるかなぁ〜・・・

That car was my mom’s, and after I got driver’s license she would let me use it whenever I needed. The FIAT came to our home when I was 18 or so. I didn’t have driver’s license then. Nevertheless,  I occasionally drove it while mom wasn’t home. I never got caught in action, so I thought she didn’t notice the fact. Now, I am pretty much for sure she somehow knew my misdeed.

Long before those days, mom used to say she wanted to have one of those Porsche sports cars. In 1963, Japan’s first car express highway, the Meishin Expressway was inaugurated. In few years, the Highway Patrol of Kyoto Prefectural Police introduced a Porsche 912, an economy version of 911, to show off their authority and to dominate the traffic so that they can intimidate the speeding daredevil drivers. My mom was a then rare  woman driver and for some reason longed for one like that.

That was sometime between Tokyo Olympic games and Osaka Expo ’70 when Japan’s economy was skyrocketing, and mom’s business, too, was thriving. I think she could’ve bought a Porsche if she wanted to.  What she chose to buy instead was the FIAT 850. I asked her “Why FIAT?”, having been expecting a Porsche to come. I don’t remember exactly what she answered but it was something like her garage was so small especially in width that even a narrow-body Porsche couldn’t fit in– I don’t know if it was the very reason, though. But the FIAT 850 Sport Coupé delivered to our home was cute and I immediately loved it.

It wasn’t until I watched the Youtube video above that I realized the basic layouts of rear-mounted engines of the FIAT 850 and FIAT 500– though the former comes with a water-cooled engine and the latter with air-cooled one– and many other things are very similar to each other. Look at the way the FIAT 850’s engine is mounted. The engine is suspended with a spring at its tail end, which is the same method as that of the Fiat 500. Look at how the engine hood is stopped. The catch mechanism with a nylon wheel must be borrowed directly from that of door catch of  the 500. Other things in the front trunk bay– like the jack, washer liquid bag, the way the spare tire and battery are stored– are all similar to the 500’s. Turning eye to the interior, I notice that the entire atmosphere is close to that of the 500, only slightly gorgeous, and cannot help smiling for the simple and modest shapes of the clutter-catcher on the center tunnel, transmission shift lever, pedals, etc., too, show the fact that they are the descendant of the 500.

Years passed by, and as I got old, I had forgotten miscellaneous details of my first car, FIAT 850 Sport Coupé until just now. Now that I came across the video of the car, many things have revived into my mind, and heartily think, after all, I have ended up with following my mom’s foot steps in terms of the choice of car without noticing it. And I am glad I discovered it, today.


FIAT 500 電磁フューエルポンプのマウント製作 その後

昨日作ったMitsubaの電磁式フューエルポンプのマウントは、取り付け後に寸法ミスが発覚し、垂直であるべきポンプが前傾してしまった。取り外して加工するのが面倒なのでその場でアルミ板を捻じ曲げるという荒っぽい方法でとりあえず問題解決。機能的には全く支障ないし、普段は見えない場所だから、目を背けてそのままボンネットを閉じて「ハイおしまい。。。」

しかし、その晩は若干の後悔があった。ブログ記事を書いていて「反省の弁」に至っては「こんなものを一生のうちにそう幾つも作るわけじゃないから、反省もクソもないな、、、」と思いつつ、、、。翌朝も何だか寝覚めが悪く、一日経ってやっぱ作り直そう、、、と。

偉そうに反省の弁では「ボール紙のモックアップで取り付け状態の実地検証」と書いていたが、今回も図面からいきなり板金切り出し。もっとも、昨日の作品が人柱になっているんで、寸法については問題ない(はず)。

しかも、ケガキを省略して、プリントアウトした実寸図面をアルミ板にスプレー糊で直に貼っつけた。さほど精度の必要なものでもないから、これでオッケー。

最大の問題であった天板の前後幅を狭くしたので、ベンダーでの折り曲げがやりにくい。それでも何とか曲げて、後は歪み取りと角度修正。そうそう、昨日は後付けでやっつけた縁の折り曲げも「計画的」に加工。全てうまく行った。。。と思った。

さて、チンクのところへ行って、昨日の醜く歪んだ天板を見て「そうか!」と、また後から気がつくことがあった。バンドとマウントを繋ぐツバ広ビスに締め込むナットへのアクセスのために開けた孔では、いくら広くしてもラチェットレンチは入らない。なら、正面からナットにアクセスできるように前面の板をえぐってやればよろし。

こんなことは折り曲げ加工する前にやっときゃ、ずっと楽ちんなんだけどねえ。とか思いながら作業場に戻り、ドリルソーでゴリゴリ削った。

古い方から「腰当てクッション」を移植し、スポンジラバーを貼っつけて、後は普通に組み込んで、今度こそ「ハイおしまい」


FIAT 500 電磁フューエルポンプのマウント製作

近々、ワイヤリング・ハーネスを総取っ替えしようと目論んでいるので、現状のフューエルポンプの位置にヒューズボックスを置きたいと思う。そこで、とりあえずポンプにどいてもらうことにした。

今動いているMITSUBA製フューエルポンプに何かあった時のことを考えて、すこぶる程度の良いものを入手してあるが、もったいなくて使えない。今回は現行ポンプをそのまま(文字通り配線もホースもそのまま)燃料タンクの固定バンドにくっつける方法を採った。

くっつけると言っても固定バンドは薄い鉄板だから、そこに大きくて重いポンプをぶら下げるのは避けたい。そんでポンプを懸架する「マウント」金属板でを作ることにした。しかしマウント自体を自立型にするとボディーに孔を穿ったり、重量や振動対策で強度が必要になって、工作が面倒。薄くて柔らかいアルミ板でちゃちゃっと作り、底部は燃料タンク固定ボルトに、上部は固定バンドにもたれ掛かるように固定する、と。

これならポンプの結構な重量はマウントの足元で支えるし、固定バンドには前後左右へ倒れるのを防ぐだけの力しか掛からない。たまたまバンドにφ6〜8mmほどの孔が沢山開いていて、マウントの上部をそのうちの一つにネジ止めし、下部はバンドをボディーに締結しているボルトで止める。(孔が開いてなかったらわざわざドリルで穿つより、バンドに平板でも挟んで止めればいい)

ちゃんと測らずに目分量でサイズを決めて図面を引き、アルミ板から切り出して、いつぞやの染め物蒸し器の製作のためにでっち上げたベンダーでテキトウに曲げて、あっという間に完成。喜び勇んで取り付けたら、、、天板が長すぎて、垂直であるべきポンプの前傾が甚だしい。傾きに気がついたのは取り付けた後(ちゃんと仮止めとか寸法当たりとかせえよ!W)。下部のボルト孔が小さくて嵌め込みに苦労したし、もう一度外すのも面倒なのでレンチやらペンチやらで無理っくり天板を捻じ曲げて、ポンプが垂直になるようにしてやった。

おっと、その前に、、、材料を切り出してから、取り付け直前になて1.5mm厚のアルミ板では下すぼまりのマウントの下部の剛性が心配になり、急遽、垂直面の縁に折り目を付けて撓まないようにした。バイスに挟んで木片やプラハンマーでドツキ回せばそれなりに丈夫にはなる(見た目はともかく、、、)。

無計画なやっつけ仕事な上に、取り付けてから捻る、叩くのアブユーズしまくりで、せっかくキレイに切り出したアルミ板がキズと凸凹だらけになった。おかげで仕上がりは見苦しくなったが試運転の結果は上々。マウントの剛性は問題なく、オマケとしてポンプのカツカツ言う作動音もいくぶん静かになった。取り付け位置やマウント方法の違いでこんなにも違うものか、、、(ていうか、いままでがうるさすぎた)

反省:

  • 作図前の寸法当たりは正確に、念入りに。
  • 図面ができたらボール紙のモックアップで取り付け状態の実地検証。
  • 剛性と板厚の検討を考慮(板厚を増やすか、縁の曲げしろを追加)
  • ボルト孔は大きめか、長孔に。
  • 天板の開口部はもっと大きくないと内側のナットへのアクセスにならない。

以下、制作過程(試行錯誤の顛末)

要るもの:t1.5mm x 95mm x 250mmのアルミ板、M6 x 15mmの皿ネジ、M6ナイロンロックナット、M6ワッシャー、M6スプリングワッシャー、「M8」ワッシャー、t1mm程度のプラスチック板またはプラスチックワッシャー(電食防止用ワッシャー)、t5mm x 25mm x 60mmのスポンジラバー、t10〜15mm x 25mm x 25mmの木片、接着剤、塗料、銀ロウ

ポンプの取り付けネジはポンプ付属のものを使うが、プラスチックワッシャーを使ったので、緩み止めにナットだけはM6ナイロンロックナットに交換。


追記:

やはり、やっつけ仕事は寝覚めが悪いので、作り直した。↓

FIAT 500 電磁フューエルポンプのマウント製作 その後


FIAT 500 ヘッドライトの総取っ替え(ていうか、でっち上げ)

前半:なんで?(暇な人はこちらから)

後半:作り方(うだうだと能書きを読みたくない人はこちらだけどうぞ)

    1. ヘッドライト・リムの加工
    2. ヘッドライトマウント金具の加工と製作
    3. ガラスレンズと反射鏡の加工
    4. 塗装
    5. 最終組立
    6. 試運転

注)最後に追記あり。

前半

ヘッドライトの絶えない苦労

FIAT 500のヘッドライトに苦労する人は多いらしく、以前に車検場で声をかけてくださった方も「私もFIAT 500に乗っていたが、光軸がどうしても合わなくなり、車検に通らないので乗るのを諦めた」と。僕も、チンクの軽い車体と短いホイールベースのせいで僅かなガソリンの量やなんかの重量バランスの違いが光軸を大きくズレて、ユーザー車検ではいつも落っこちては現場で目見当の調整で無理やり通すという綱渡りを毎度やっている。さらには、ノーマルの白熱電球のランプでは光度が足りず、そんならとハロゲンに替えたついでにワット数もアップしたら電流が足りなくなり、余計に暗くなって車検に落っこちたりもしている。(おかげで本ブログでも「ヘッドライト」や「LED」という投稿や文字が氾濫している)

光軸についてはヘッドライト検査で落っこちた場合に車検コース出口でもらえる「ズレ具合」の数値と、FIAT 500のヘッドライト調整ネジの回転でどれくらい光軸(の先の点)が移動するかの関連をある程度把握できたので、次回からはハラハラ・ドキドキは無くなる(はず)。光度不足の問題は電力消費(ワット数)の少ないLEDヘッドライトにすることで対応できた。

ところが、明るくなった期待のLEDのランプの発光部は、白熱球やハロゲン球のようなコイル状フィラメントではなく、面発光のLEDチップがある程度の厚みのある壁を隔てて左右に配置されているので、旧来のヘッドライトの反射鏡ではうまく配光できない、という別の問題が新たに出てきたしまった。

LEDランプの発光面は左右に分かれている。
現在使用中の電球(ハロゲン)色LEDヘッドライトのロービーム配光。クラシカルな色と明るさは申し分ないしカットラインもくっきり。ただ、配光ムラと中央部の暗さ、それにカットアングルの異常なアンバランスはとても気に入らない。(旧車の車検はハイビームなので、これでもパスするが、、、)

ウチのチンク嬢のヘッドライトはCarelloというちょっと高めのブランドのものが付いてきたんだけど、どもうこれはLEDランプとの相性が悪いようで、いままで3〜4種類のLEDヘッドライトを試したが、どれも乱反射・乱屈折によるあらぬ場所に多数の輝点が出るうえに、ロービームの中央部分が暗くなってしまう。それなりに明るい照射範囲の真正面が抜け落ちたように暗いのは、夜間走行で相当なストレスになる。

もとから付いていたCarello左側通行用ヘッドライト

あれこれ実験するうちに、ライトの基部に下駄を噛まして少し発光点を後退させるとそれなりに良くなった。ところが、こんどは光軸がズレる。夜間、真正面が暗くて恐る恐る走るか、ズレた光軸で対向車に目潰し食わせて怒られるか、、、。どちらも嫌なので、いっそヘッドライトを取り替えることにした。

どんなヘッドライトを選ぶか、、、:

    1. Carelloの反射鏡に相性の良いLEDランプを入手。
    2. Carello以外の別のブランド(あるいはノーブランドやオリジナル)のFIAT 500用ヘッドライトを購入。
    3. 別の車種のヘッドライトを流用(当然、相当程度の改造が必要)。

1は、過去3回の人柱体験で、あるかどうかもわからない「相性の良いLEDランプ」に出会うには金がいくらあっても足りないと悟った。(そもそも数十年も前の設計のCarelloヘッドライトはLEDのことなど全くこうりょされていない)

2は、上等のCarelloでダメなのなら他も似たりよったりだろうと推量。希少車のFIAT 500用ヘッドライト本体は下手するとLEDランプより高い。さらに、もとより売っている種類が少ない(ウチのは右ハンドルなのでなおのこと)。全く財布に優しくない。

3は、レンズ径が130mmという小さなヘッドライトって、古いホンダ・モンキーやXL250Sのショボいものくらいしか選択肢がない。それでも、モンキー用はそれなりにドレスアップパーツが売られているので、それこそマルチリフレクターヘッドライトなどもある。よく調べてみたらH4という一般的に普及しているタイプのランプ口金のものも売られているので好都合。ただし、たいていは反射鏡がプラスチック製でハードな改造に耐えられないかもしれない。一瞬、マルチリフレクターヘッドライトに手が伸びそうになったが、後の苦労を想うととてもポチれなかった。

結局選んだのは3の「他車部品を流用・改造」なんだけど、モンキーではなくカワサキ・エリミネーター125用のヘッドライト。

特にエリミネーターのをを探したわけでないが、ヤフオクに「直径130mmφ」というタイトルで程度の良いものが2つ同じ出品者から出ていた。エリミネーターのライトの口金は二輪にもかかわらずH4だしなお好ろし。早速、出品者に問い合わせて「一番外側の直径」を実測してもらったら「約130mm」だとのこと。しめしめ、これならFIAT 500の小さなヘッドライト・リムの内側に収まる。そんで競合者なく無事落札。2ケで4000円也。送料は同梱で安くなった。

ところが出品者ときたら、質問からズレた「レンズの有効径」を測ったらしく、届いたのは正しくエリミネーターのヘッドライト(Stanley製)だが「一番外側の直径」は145mmもあるじゃん!!!しかもレンズ部分は前方に10mmほど突出している(つまり分厚い)。ったくぅ!(145mmならもっと別の車種のも選び放題だったのにぃ。CibieやKoitoの4灯ハイ/ロービーム兼用タイプがこのサイズ)。

左手側の黒い方がエリミネーター用。右のCarelloより一回り大きいのが見て取れる。ガラスレンズも10mm前方にせり出している。

おかげで「無加工でヘッドライト・リム内にスッと収める」という夢は潰えて、苦難の改造作業が始まる。

以下は、その作業内容。


その前に、追記:

この記事を書いてから、よくお世話になるFiat 500 の『Online Manual Wiki』に似たような、しかももっと加工作業が少なくて簡単なヘッドライトの「作り方」があることに気が付いた。ただひとつ、Wikiの記事ではリムの折返し切断にサンダー(ディスクグラインダーを使うとなっていることについては、僕の「ブロックで気長に擦る方法」(後述)で代用できるから実質必要な道具はドリルと金ノコくらい。

こちらから⇒『左側通行用ライトに置換える』


後半

用意するもの:Kawasakiエリミネーター125用ヘッドライト、旧FIAT 500用アルミ製ヘッドライト・リム、光軸調整ボルト、テンションスプリング、M5-15mmの高ナット、T字金具、厚さ5mmのスポンジ(裏が接着面になっているのが便利)、アロンアルファ4020、エポキシパテ(金属用)、ラッカースプレー塗料、木片(長さ140〜150mm程度)、M5ビス2本

1,ヘッドライト・リムの加工

  • 折返しの切り取り(前方):前方にせり出した分厚いレンズと、反射鏡後方にあるライトのマウント位置の整合を保つために分厚いヘッドライトを前進させないといけない。ヘッドライト・リム前方の内側への折り込みを10mm切り取る。小型ボール盤にダイヤモンド(ディスク)カッターを付けて切削すると折返しを一定幅に正確な切断ができる。
    ダイヤモンドディスクでヘッドライト・リムの切断。

    前方の折返しを切り取る。左側は未加工。右側は切り取り後。
  • 折返しの切り取り(後方):FIAT 500のアルミ製ヘッドライト・リムの内径はカツカツの145mmプラスアルファ。しかし、縁には補強の折り込み加工が邪魔くさい。予定より10mmも大きい直径145mmのエリミネーターのヘッドライトを収めるためにリム後縁の折り込みを切り取り、少しでも開口部の直径を拡大する。
    折返しを切り取るというより、コンクリートやセメントで削り取る。

    リムの縁をキレイに切り取るには「缶切り無しで缶詰を開ける方法」の動画を参考に、セメントブロックの上で擦り続けると、キレイにリング状に折り込みが取れる。

2,ヘッドライトマウント金具の加工と製作

  • マウント金具の位置決め:ヘッドライトの周囲に4ヶ所、等間隔に印を付ける。1ヶ所は上記にスプリング基部。スプリング基部の対向位置はヘッドライトの固定ポイント。残り2ヶ所は光軸調整用ネジ(M5長ナット)の取り付け位置。

    時計の1時半、4時半、7時半、10時半の位置に印を付ける。
  • 金具の取り外し:エリミネーターのヘッドライトから、光軸調整用ネジ受け金具のスポット溶接部分をドリルで揉んで外す。
    スポット溶接をドリルで外す。

    取り外した光軸調整ネジ受け金具
  • 接着面の整形:スポット溶接跡を金工ヤスリやサンドペーパーで平らに整形。
  • スプリング取り付け基部の形成:ヘッドライトの固定台座(台形)を高さ、幅、共に切り詰めて、穴を開け、マウント用テンションスプリングの基部にする。(ディスクグラインダーでカットする際に「食い込み」に注意!)
    ヘッドライト固定台座(右奥の台形の出っ張り)

    台形の金具を切り取り、バネを引っ掛ける孔(2〜2.5mmφ)を穿つ。
  • 高ナット受けを作る1:光軸調整のネジ受け金具を上下半分にカットし、光軸調整ネジを受け入れる高ナットの補強材を作る。
  • 光軸調整ネジ台座金具をカット。
  • 高ナット受けを作る2:切り取った台座のL字形の下半分をM5長ナットの幅(8mm)の隙間を開け、先に目印を付けたの位置(1時半と7時半)に接着。耐熱性、耐衝撃性に優れたアロンアルファ4020を使用。(前もって接着面はサンドペーパーで塗料を落とし、金属を露出させておく)

    M5の高ナットの幅(8mm)の間隔を開けてL字型の金具を接着する。
  • 光軸調整ネジの位置決め治具:高ナットを配置する間隔128mmと同じ間隔で木片にM5のビスを植える。それぞれのビスにM5の長ナットを取り付け、位置を移動した光軸調整台座にその状態のまま長ナットを挟み込み接着。

    光軸調整ネジの位置決め治具。
  • エポキシパテで補強:光軸調整ネジにはかなりのストレスがかかるし、アロンアルファ(シアノアクリレート)の耐水性はあまり期待できないので、補強に長ナットと台座をエポキシパテ(金属用)で包み込み、整形する。

    光軸調整ネジをエポキシパテで補強。
  • 固定ポイントを作る1:市販のT字金具を固定ポイントのアームにする。1ヶ所を折り曲げ、足になる部分をヘッドライトの周囲の曲線(円弧)に合わせてディスクグラインダーで削る。

    T字金具をライトのフランジ部分に合わせて整形。
  • 固定ポイントを作る2:古いヘッドライトから、調整ネジと固定ポイントのノッチ(ボディーの孔へ差し込む部分)の距離(99mm)を測り、それに対応するようT字金具から作ったアームの先を折り曲げ、切削して加工。

    光軸調整ネジ孔から固定ポイントのノッチまでの距離を計測
  • 固定ポイントを作る3:スプリング基部の対向位置(4時半)に、上記のアームをアロンアルファで接着(前もって接着面はサンドペーパーで塗料を落とし、金属を露出させておく)。本当はロウ付けか、せめてハンダ付けにしたかったが、ガラスレンズを外したくなかったので諦めた。

    固定ポイントのアームの先を、ボディーに差し込むように加工。

3,ガラスレンズと反射鏡の加工

  • スモールランプ用孔:反射鏡の裏側(外側)から、スモールランプ用の孔(15mmφ)をドリルとリーマーで開ける。切り口に塗料(透明)を塗って錆止め、メッキの剥離止め。

    ヘッドライト背面。大きい孔はH4ランプの受け金具。小さい孔はスモールランプ用。
  • ブレ止めと防水:ガラスレンズの周囲に厚さ5mm、幅10mmのスポンジを貼る。レンズ下側(6時の位置)には排水用の隙間を開ける。(これでヘッドライトがリムの内側でぐらつかないようにし、また正面からの風圧を伴う雨による水の侵入を防ぐ)

    スポンジラバーをレンズ周囲に貼り付け。

4,塗装

  • マスキング:ガラスとランプ口金受け部分にマスキングを施し、ネジ穴とスモールランプ開口部には筒状に巻いた紙を差し込んでおく。
  • 塗装:金属用プライマーを15分間隔で2度塗り。さらに1時間おいてラッカースプレー(黒)を15分間隔で2度塗り。

    マスキング後にスプレー塗装。
  • 焼付乾燥:最終乾燥は、赤外線グラファイトヒーターで焼付。

    グラファイト赤外線ヒーターで焼付乾燥

5,最終組立

  • 固定ポイントの接着:固定ポイントのアームには強い引張りの力がかかるので、アームとリムの間を埋めて側面からも接着するために、エポキシパテ(金属用)をアーム基部外側に塗りつける。
  • ライトとリムの合体:ヘッドライトをリムに差し込み、はみ出たエポキシパテを掻き落とす。
  • リムの接着:正面から見てリムとガラスレンズの間に隙間が開かないよう、ヘッドライトを後ろから押し付けながら、ヘッドライトの裏側からアロンアルファで接着する。
  • ポップリベット補強:固定ポイントのアームを更に補強するために、リム外側からアームまで貫通する孔を開け、ポップリベットでカシメる。
    リベッター
    ポップリベット(表)

    ポップリベット(裏)
  • 余計な仕事:(エクストラ・ワーク:スモールランプ用の孔の一つを、うっかり大きめに開けてしまったので、1mm厚のアルミ板をワッシャー条に加工し、曲面に合わせて形状修正し、Super Xで接着。写真上中)

6,試運転

  • 暗くなってから、平坦な地面と垂直の壁を求めてスーパーの駐車場に行った(ちゃんと買い物もした)。古いヘッドライトを取り外し、できたてホヤホヤの新しいヘッドライトに交換。
    まず運転席側のヘッドライトを交換。
    独眼竜、、、

    運転席側(右ハンドル):新、助手席側:旧。新しい方が光の滲みが少ないように思える。乱反射が少ないからなのかも。
  • 壁にライトで投光。光軸調整ネジで上下と左右の方向を「大雑把に」調整。レンズカットは左右対称(右側、左側通行の区別がない)だが、LED発光体のマスキングによりそれなりに左側上がりの「カットライン」が出ている。
    オリジナルのCarello+LED。配光ムラがひどいし、各ライトの中央部が暗くなっている。左側のカットアングルは酷い。

    左は以前からのCarello。右(運転席側)が新しいヘッドライト。ムラがない。
  • 家の近所まで戻り、貸倉庫の壁に投光して少し離れた位置での光軸や照射範囲を確認。
    ロービーム

    ハイビーム
  • 10mほど先の壁にロービームを照射したときの配光。境界が少しボケてるが、カットラインのエルボーも確認できる。
  • 原谷から御室へ抜ける峠には街灯が一切ないので、道路でのライトの照射具合を確認しやすい。
    Low Beam
    ロービーム
    ハイビーム
    ハイ/ロー切り替え(Gifアニメ)


 

追記:

ここではKawasaki エリミネーターのヘッドライトを使っているが、最大径がφ145mm以下であれば、自動車用4灯式のロービームタイプを使うことも可能だと思う。それ以外のオートバイ用でも工夫次第でいくらでも選択肢はあると思う(例えばアフターマーケットパーツが比較的豊富な旧型HondaモンキーのヘッドライトなどにはH4ソケットのタイプもある)。ただし、Fiat 500のヘッドライト・リムには収まるが、光軸調整ネジやマウントのフック、スプリングなどの取り付けにはそれぞれ個別の工夫が必要。つまり用意したライトがリムにさえ収まれば何とかなるという話。

その中でもっとも簡単な方法は、ご自身もFiat 500のオーナーである大塚氏が「Fiat 500 Online Manual Wiki」に寄稿されている『左側通行用ライトに置き換える』という記事が非常に参考になる。(ライトやリムの加工が最低限であり、そのため応用が利くライトの選択肢が増えるので、そちらを読めば、私のダラ長い記事は読まなくてもいいかも、、、ここまで読まれたのなら、遅かりしですが、、、W)

Online Manualの記事でひとつだけ注意すべき点がある。大塚さんのやり方で、ヘッドライト自体の加工が最低限である理由は、光軸調整ネジのナットがボディー側に移されていること。具体的に言うと、本来なら調整ネジの頭が嵌る孔にナッターでM5のナットを打ち込んであり、そこにボルトをねじ込み、その先でライトを押して角度を調整する、という算段。これはFiat 126などで採用されている方式と同じなので機能には全く問題がない。強いて言えばナットの先を丸めてやるとライトに優しい(あるいは126用のボルトを調達すれば先端はボール状になっている。)