先日来から続いている足回りとステアリング整備の最後の仕上げは自分でやった。Fiat 500は古い車なので、近頃は少なくなったウォームギアを使ったステアリング機構を持っている。ウォームギア(図の18)はウォームセクター(図の17)と共にステアリングコラム(ハンドルの軸)の先にあるオイルバス式のギアボックスの中に組み込まれている。これが曲者、、、
先日、キングピンのブッシュ(前輪舵取り軸受のメタル)が摩耗してたのを整備工場で修理してもらい、直進性は見違えるように良くなっていた。それでも直りきらなかったのがハンドルの「遊び」の多さ。10°〜15°の範囲で全く抵抗のないフラフラの遊びがあり、その両端でコツンと手応えがある。
このフラフラ・コツンはウォームギアのバックラッシュ(歯車間の僅かな隙間)が大きすぎるためで、整備手引書によると、偏心ブッシュ(図の28)を回すことでウォームホイールの軸をウォームギア側へ寄せて調整するようになっている。
ネジを2本緩めて、偏心ブッシュを止めているプレートを少しずらすだけでなので、夕方から前輪の間に仰向けで頭を突っ込んで作業を開始した。(車に轢かれてると近所のひとから感違いされそうなので、身体の周りに大げさに工具をぶちまけておいた、、、)
床下の窮屈な場所で苦労しながら、やっとのことでネジを緩めてプレートの調整限界一杯まで回し、這い出してハンドルを調べてみたが遊びは取りきれていない。今度はボルトを抜いて、プレートを浮かせてスプライン(軸に付いている周り度目のギザギザ)の溝を一つずらし、もう一度調整限界まで回してやった。
ギヤボックスのハウジングにはネジが切ってあり、ボルトはそれを貫通していて、更にご丁寧にスプリングワッシャーと緩み止ナットが締めてある。三日月レンチとアーレンキーで僅か数センチのボルト・ナットを一本外すだけで何分もかかる。
抜いたボルトをまた苦労して復旧し、床下から這い出してハンドルの動きを確かめると、リンケージに由来するわずかな遊びはあるが、ウォームギアのバックラッシュによるフラフラ・コツンという感じではない。しめしめ、大成功!
油まみれの手を洗い、服の汚れを叩いて、いざ試運転。。。
あれ?ハンドルが回らない。いや、めちゃくちゃ重い。小さくなった遊びを越えるといきなり尋常じゃない手応えで抵抗がある。もとよりパワーステアリングじゃないけど、これじゃ走れない。。。
実は先日、整備工場の社長から、ウォームギアを締めすぎるとハンドルを切ったときに復元力が無くなって云々(「でんでん」じゃない)と聞いていた。しかし、これは「復元」どころかハナから回らないのだ。。。
家の前から路上に出ることもできず、(;´д`)トホホ…な心でまた床下へ、、、
今度はネジを外す必要のないことだけが救いだ。それでもボルト・ナットを緩め、プレートを少しずらし、締め戻して仮止めし、這い出してハンドルの重さを確認し、また床下へ、、、を何度も繰り返しているうちに日が暮れてしまった。
でも、その甲斐あってFiat 500は見違えるほど素直になった。先日、整備工場で足回りの安定性は直してもらっているし、今度のステアリング機構の調整で、クルマとしての機能はうちに来て一番完成度が高い状態にある。
ハンドルの遊び調整、Before/After↓
嬉しくて晩飯も忘れて夜のテストドライブに出かけた。↓
(タイムラプスなので、車酔い注意!)