前半 :なんで?(暇な人はこちら から)
後半 :作り方(うだうだと能書きを読みたくない人はこちら だけどうぞ)
ヘッドライト・リムの加工
ヘッドライトマウント金具の加工と製作
ガラスレンズと反射鏡の加工
塗装
最終組立
試運転
注)最後に追記 あり。
前半
ヘッドライトの絶えない苦労
FIAT 500のヘッドライトに苦労する人は多いらしく、以前に車検場で声をかけてくださった方も「私もFIAT 500に乗っていたが、光軸がどうしても合わなくなり、車検に通らないので乗るのを諦めた」と。僕も、チンクの軽い車体と短いホイールベースのせいで僅かなガソリンの量やなんかの重量バランスの違いが光軸を大きくズレて、ユーザー車検ではいつも落っこちては現場で目見当の調整で無理やり通すという綱渡り を毎度やっている。さらには、ノーマルの白熱電球のランプでは光度が足りず、そんならとハロゲンに替えたついでにワット数もアップしたら電流が足りなくなり、余計に暗くなって車検に落っこちたりもしている。(おかげで本ブログでも「ヘッドライト」や「LED」という投稿や文字が氾濫している)
光軸についてはヘッドライト検査で落っこちた場合に車検コース出口でもらえる「ズレ具合」の数値と、FIAT 500のヘッドライト調整ネジの回転でどれくらい光軸(の先の点)が移動するかの関連 をある程度把握できたので、次回からはハラハラ・ドキドキは無くなる(はず)。光度不足の問題は電力消費(ワット数)の少ないLEDヘッドライト にすることで対応できた。
ところが、明るくなった期待のLEDのランプの発光部は、白熱球やハロゲン球のようなコイル状フィラメントではなく、面発光のLEDチップがある程度の厚みのある壁を隔てて左右に配置されているので、旧来のヘッドライトの反射鏡ではうまく配光できない、という別の問題が新たに出てきたしまった。
LEDランプの発光面は左右に分かれている。
現在使用中の電球(ハロゲン)色LEDヘッドライトのロービーム配光。クラシカルな色と明るさは申し分ないしカットラインもくっきり。ただ、配光ムラと中央部の暗さ、それにカットアングルの異常なアンバランスはとても気に入らない。(旧車の車検はハイビームなので、これでもパスするが、、、)
ウチのチンク嬢のヘッドライトはCarelloというちょっと高めのブランドのものが付いてきたんだけど、どもうこれはLEDランプとの相性が悪いようで、いままで3〜4種類のLEDヘッドライトを試したが、どれも乱反射・乱屈折によるあらぬ場所に多数の輝点が出るうえに、ロービームの中央部分が暗くなってしまう。それなりに明るい照射範囲の真正面が抜け落ちたように暗いのは、夜間走行で相当なストレスになる。
もとから付いていたCarello左側通行用ヘッドライト
あれこれ実験するうちに、ライトの基部に下駄を噛まして少し発光点を後退させるとそれなりに良くなった。ところが、こんどは光軸がズレる。夜間、真正面が暗くて恐る恐る走るか、ズレた光軸で対向車に目潰し食わせて怒られるか、、、。どちらも嫌なので、いっそヘッドライトを取り替えることにした。
どんなヘッドライトを選ぶか、、、:
Carelloの反射鏡に相性の良いLEDランプを入手。
Carello以外の別のブランド(あるいはノーブランドやオリジナル)のFIAT 500用ヘッドライトを購入。
別の車種のヘッドライトを流用(当然、相当程度の改造が必要)。
1は、過去3回の人柱体験で、あるかどうかもわからない「相性の良いLEDランプ」に出会うには金がいくらあっても足りないと悟った。(そもそも数十年も前の設計のCarelloヘッドライトはLEDのことなど全くこうりょされていない)
2は、上等のCarelloでダメなのなら他も似たりよったりだろうと推量。希少車のFIAT 500用ヘッドライト本体は下手するとLEDランプより高い。さらに、もとより売っている種類が少ない(ウチのは右ハンドルなのでなおのこと)。全く財布に優しくない。
3は、レンズ径が130mmという小さなヘッドライトって、古いホンダ・モンキーやXL250Sのショボいものくらいしか選択肢がない。それでも、モンキー用はそれなりにドレスアップパーツが売られているので、それこそマルチリフレクターヘッドライトなどもある。よく調べてみたらH4という一般的に普及しているタイプのランプ口金のものも売られているので好都合。ただし、たいていは反射鏡がプラスチック製でハードな改造に耐えられないかもしれない。一瞬、マルチリフレクターヘッドライトに手が伸びそうになったが、後の苦労を想うととてもポチれなかった。
結局選んだのは3の「他車部品を流用・改造」なんだけど、モンキーではなくカワサキ・エリミネーター125用のヘッドライト。
特にエリミネーターのをを探したわけでないが、ヤフオクに「直径130mmφ」というタイトルで程度の良いものが2つ同じ出品者から出ていた。エリミネーターのライトの口金は二輪にもかかわらずH4だしなお好ろし。早速、出品者に問い合わせて「一番外側の直径」を実測してもらったら「約130mm」だとのこと。しめしめ、これならFIAT 500の小さなヘッドライト・リムの内側に収まる。そんで競合者なく無事落札。2ケで4000円也。送料は同梱で安くなった。
ところが出品者ときたら、質問からズレた「レンズの有効径」を測ったらしく、届いたのは正しくエリミネーターのヘッドライト(Stanley製)だが「一番外側の直径」は145mmもある じゃん!!!しかもレンズ部分は前方に10mmほど突出している (つまり分厚い)。ったくぅ!(145mmならもっと別の車種のも選び放題だったのにぃ。CibieやKoitoの4灯ハイ/ロービーム兼用タイプがこのサイズ)。
左手側の黒い方がエリミネーター用。右のCarelloより一回り大きいのが見て取れる。ガラスレンズも10mm前方にせり出している。
おかげで「無加工でヘッドライト・リム内にスッと収める」という夢は潰えて、苦難の改造作業が始まる。
以下は、その作業内容。
その前に、追記:
この記事を書いてから、よくお世話になるFiat 500 の『Online Manual Wiki』に似たような、しかももっと加工作業が少なくて簡単なヘッドライトの「作り方」 があることに気が付いた。ただひとつ、Wikiの記事ではリムの折返し切断にサンダー(ディスクグラインダーを使うとなっていることについては、僕の「ブロックで気長に擦る方法」(後述)で代用できるから実質必要な道具はドリルと金ノコくらい。
こちらから⇒『左側通行用ライトに置換える』
後半
用意するもの:Kawasakiエリミネーター125用ヘッドライト、旧FIAT 500用アルミ製ヘッドライト・リム、光軸調整ボルト、テンションスプリング、M5-15mmの高ナット、T字金具、厚さ5mmのスポンジ(裏が接着面になっているのが便利)、アロンアルファ4020、エポキシパテ(金属用)、ラッカースプレー塗料、木片(長さ140〜150mm程度)、M5ビス2本
1,ヘッドライト・リムの加工
2,ヘッドライトマウント金具の加工と製作
マウント金具の位置決め: ヘッドライトの周囲に4ヶ所、等間隔に印を付ける。1ヶ所は上記にスプリング基部。スプリング基部の対向位置はヘッドライトの固定ポイント。残り2ヶ所は光軸調整用ネジ(M5長ナット)の取り付け位置。
時計の1時半、4時半、7時半、10時半の位置に印を付ける。
金具の取り外し: エリミネーターのヘッドライトから、光軸調整用ネジ受け金具のスポット溶接部分をドリルで揉んで外す。
スポット溶接をドリルで外す。
取り外した光軸調整ネジ受け金具
接着面の整形: スポット溶接跡を金工ヤスリやサンドペーパーで平らに整形。
スプリング取り付け基部の形成: ヘッドライトの固定台座(台形)を高さ、幅、共に切り詰めて、穴を開け、マウント用テンションスプリングの基部にする。(ディスクグラインダーでカットする際に「食い込み」に注意!)
ヘッドライト固定台座(右奥の台形の出っ張り)
台形の金具を切り取り、バネを引っ掛ける孔(2〜2.5mmφ)を穿つ。
高ナット受けを作る1: 光軸調整のネジ受け金具を上下半分にカットし、光軸調整ネジを受け入れる高ナットの補強材を作る。
光軸調整ネジ台座金具をカット。
高ナット受けを作る2: 切り取った台座のL字形の下半分をM5長ナットの幅(8mm)の隙間を開け、先に目印を付けたの位置(1時半と7時半)に接着。耐熱性、耐衝撃性に優れたアロンアルファ4020を使用。(前もって接着面はサンドペーパーで塗料を落とし、金属を露出させておく)
M5の高ナットの幅(8mm)の間隔を開けてL字型の金具を接着する。
光軸調整ネジの位置決め治具: 高ナットを配置する間隔128mmと同じ間隔で木片にM5のビスを植える。それぞれのビスにM5の長ナットを取り付け、位置を移動した光軸調整台座にその状態のまま長ナットを挟み込み接着。
光軸調整ネジの位置決め治具。
エポキシパテで補強: 光軸調整ネジにはかなりのストレスがかかるし、アロンアルファ(シアノアクリレート)の耐水性はあまり期待できないので、補強に長ナットと台座をエポキシパテ(金属用)で包み込み、整形する。
光軸調整ネジをエポキシパテで補強。
固定ポイントを作る1: 市販のT字金具を固定ポイントのアームにする。1ヶ所を折り曲げ、足になる部分をヘッドライトの周囲の曲線(円弧)に合わせてディスクグラインダーで削る。
T字金具をライトのフランジ部分に合わせて整形。
固定ポイントを作る2: 古いヘッドライトから、調整ネジと固定ポイントのノッチ(ボディーの孔へ差し込む部分)の距離(99mm)を測り、それに対応するようT字金具から作ったアームの先を折り曲げ、切削して加工。
光軸調整ネジ孔から固定ポイントのノッチまでの距離を計測
固定ポイントを作る3: スプリング基部の対向位置(4時半)に、上記のアームをアロンアルファで接着(前もって接着面はサンドペーパーで塗料を落とし、金属を露出させておく)。本当はロウ付けか、せめてハンダ付けにしたかったが、ガラスレンズを外したくなかったので諦めた。
固定ポイントのアームの先を、ボディーに差し込むように加工。
3,ガラスレンズと反射鏡の加工
4,塗装
マスキング: ガラスとランプ口金受け部分にマスキングを施し、ネジ穴とスモールランプ開口部には筒状に巻いた紙を差し込んでおく。
塗装: 金属用プライマーを15分間隔で2度塗り。さらに1時間おいてラッカースプレー(黒)を15分間隔で2度塗り。
マスキング後にスプレー塗装。
焼付乾燥: 最終乾燥は、赤外線グラファイトヒーターで焼付。
グラファイト赤外線ヒーターで焼付乾燥
5,最終組立
6,試運転
追記:
ここではKawasaki エリミネーターのヘッドライトを使っているが、最大径がφ145mm以下であれば、自動車用4灯式のロービームタイプを使うことも可能だと思う。それ以外のオートバイ用でも工夫次第でいくらでも選択肢はあると思う(例えばアフターマーケットパーツが比較的豊富な旧型HondaモンキーのヘッドライトなどにはH4ソケットのタイプもある)。ただし、Fiat 500のヘッドライト・リムには収まるが、光軸調整ネジやマウントのフック、スプリングなどの取り付けにはそれぞれ個別の工夫が必要。つまり用意したライトがリムにさえ収まれば何とかなるという話。
その中でもっとも簡単な方法は、ご自身もFiat 500のオーナーである大塚氏が「Fiat 500 Online Manual Wik i」に寄稿されている『左側通行用ライトに置き換える 』という記事が非常に参考になる。(ライトやリムの加工が最低限であり、そのため応用が利くライトの選択肢が増えるので、そちらを読めば、私のダラ長い記事は読まなくてもいいかも、、、ここまで読まれたのなら、遅かりしですが、、、W)
Online Manualの記事でひとつだけ注意すべき点がある。大塚さんのやり方で、ヘッドライト自体の加工が最低限である理由は、光軸調整ネジのナットがボディー側に移されていること。具体的に言うと、本来なら調整ネジの頭が嵌る孔にナッターでM5のナットを打ち込んであり、そこにボルトをねじ込み、その先でライトを押して角度を調整する、という算段。これはFiat 126などで採用されている方式と同じなので機能には全く問題がない。強いて言えばナットの先を丸めてやるとライトに優しい(あるいは126用のボルトを調達すれば先端はボール状になっている。)