Day 30 photo / 0918

アビスコ山岳ステーション(Kungsleden終点) 

昨日、Kungsleden北端のゲートをくぐり出て、昔観た映画「太陽のかけら」の舞台になった道を歩くという今回の旅の目的はすでに終えている。

南から北へ、映画とは逆のコースを歩いてたどり着いたのは、アビスコという小さな街の外れにある山岳ステーション。映画の冒頭シーンに登場する鉄鉱石を積んだ貨物列車もここを通っている。昨日はトレイル終点のほんの少し手前の木立の間から、ノルウェーの積出港ナルヴィクに向かう鉱石輸送貨車の列が通過するのを眺めた。

今日は、いよいよスウェーデンを離れる日。列車の時刻まで近くにある「キャニオン」を散歩。ここも映画の冒頭に映っていた。そのシーンには50年前の山岳ステーションが中世の城のようにぼんやりと霧の中に浮かんでいた。

出発の時が来た。旅の途中で仲良くなった友達に別れの挨拶をして一人で駅に向かう途中、また貨物列車が目の前を走り過ぎて行った。今度は鉱山のあるキールナに戻る空の回送列車。映画の始めに出て来るキールナ〜ナルヴィク鉄道の意味はKungsledenを歩く内に初めて理解した。その鉱石輸送列車には二度とも偶然行き当たったのだけれど、昨日、出迎えてくれて、今日は見送ってくれているように思った。

さよなら、Kungsleden。

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アビスコのキャニオン
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キャニオンからアビスコ山岳ステーションを望む。
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谷の向こうに、トレッキング途中で出会った人がいた。別ルートでここアビスコにやってきていた。

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シンギ小屋から5日間、同じコースをたどったオーストリア人青年アンドレアスくんと。

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アビスコ・ツーリストステーション駅
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東南のキールナ方面

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SJ(スウェーデン国鉄)の電気機関車。ノルウェー、ナルヴィク行に乗る。

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昨夜のツーリストステーションのディナー、レストランの値段は高過ぎてパス。ショップで買った冷凍ピッツァをキッチンの電子レンジで温めて食べたが、朝飯はそれほど高くなく、しかもちゃんとしたものが食べれるのでレストランに行った。昨夜のメンバーとは違うが、道中の山小屋で顔を合わせた人たちとつるんで良く喋り、良く食べた。が、やはりアンドレアスくんの姿はなく、誰も彼を見かけなかったとのこと。早く着いて列車に乗っちゃったか?ただ、話をした一人から午後の同じ列車でストックホルムへ向かうはずから、昨日のうちに帰ってしまったということはない、と聞いた。ただ、僕のナルビック行きの列車は彼らのより早い時刻に出るので、見送るわけにもいかず、このまま会えないかもしれないと思った。

みなにさよなら言って戻る途中に、レストランに反対側に一人ポツンと座っているアンドレアスくんを見つけた。なんかホッとした。黙ってこっちを見て、微笑んでる。いかにも彼らしい。そういうところがいい。チェックアウトの10時が迫っていたので、またその辺で、と声をかけて部屋に戻った。

荷物を預けにロビーへ行くと入口に、テント泊まりでコースもKungsledenのトレイル周辺を歩き、途中で僕と出会ったりしばらく会わなかったりしてきたドイツとフランスのカップルがいた。彼らは今着いたところのようだった。彼らにも別れの挨拶をした。

さて、発車時刻までまだ3時間もある。暇つぶしに同じ敷地内にあるミュージアムへ行ってみた。ちょうどアンドレアスくんが、アビスコ周辺の自然や動物たち、サーミの人たちのことを説明する案内板を読んでいるところだった。ミュージアムは休館らしい。日曜日なのに!?シーズンが終わってる?でもオーロラはこれからなのになあ、、、。

まあ、屋外の案内板だけでもと読み始めたら意外と面白い。説明の中でサーミ語の地名表記に使われる単語の説明があり、興味深く見たた。最近は、地図の地名も道標もスウェーデン語化された綴り(ちょうど、和人がアイヌ語地名を漢字で当てたようなもの)ではなく、サーミ語のアルファベット綴りの表記に改められつつある。舌を噛みそうな地名ばかりだと思っていたが、チェクチャの管理人ステファンさんが説明してくれたことは、これを知っていたらもっと良くわかっただろう。

アンドレアスくんが昼飯までの間。キャニオンに行くと言う。食事の時は別にして、僕はこの旅で今まで一度も誰かと「一緒に何々しないか?」と言ったことはなかったが、この時は、一緒に行っていいか?と訊いてみた。この5、6日で彼の行動志向はわかっているし、また迷惑でもダメとも言わない性格の人間だろうと思うけど、まあ最後だし、、、

で、ツーリストステーションから歩いて数分のところにある、岩石のキャニオンへ行った。岩の裂け目の数十m下を流れる渓谷の水は昨日歩いてきたアビスコヤウレの湖から流れ出た川で、この高みから数km先に見下ろすさらに大きな湖にデルタとなって流れ込んでいる。

鉄道の駅のほんのすぐ近くまでほぼ手付かずの自然が迫っていて、アクセスに車やバスを使わなくていいし、半日歩くだけでKungsleden以外にもいくつもの山小屋があり、もちろん途中の景色も素晴らしい、とアンドレスくんはアビスコの立地が好きだと言う。オーストリアはじめヨーロッパのアルプスではこうはいかないらしい。手軽に行ける「山小屋」のレストランにはシェフがいて、ホールでは音楽が生演奏されている。山小屋らしい山小屋に行くにはずっと上まで登り、それなりの山の装備や技術がいるのだとか。

キャニオンには車椅子が通れる遊歩道が巡らされ、一般の人も気軽に「自然」を楽しめるように工夫されている。途中に「アビスコ国立公園のシンボル」と銘打たれた金ピカのデカイ「物」が鎮座している。野外彫刻とか記念碑とかが景色の一部となって自然と共存することに異存はないが、これはないだろう、、、。あまりに馬鹿馬鹿しいのでアンドレアスくんに写真を撮ってもらった。

ここからは遥か山の上にオーロラを観るためのスカイステーションが見える。アンドレアスくんにもレーザー照射で偽オーロラのプロジェクションマッピングしたら、曇りの日でも日本人はじめ、オーロラを目的に来た人たちから料金とってガッポリ儲けるぜ(がタダ観も続出するだろう)という話をしたら、やはり大ウケした。

対岸の岩壁の上で写真撮ってるのは、アビスコヤウレから別ルートを取ってこちらに向かったスウェーデン人のおっさんくさいお兄さん。アンドレアスくんも彼もサウナが大好きなので、山小屋のサウナに行くと必ず彼らがいた。アンドレアスくんとは対照的にサウナでもどこでも軽くて良くしゃべるが、面白い人だ。彼ともお別れの挨拶ができた。

やがて時間が過ぎて、僕の乗る列車の時刻が迫ってきた。アンドレスくんとツーリストステーションまで戻って荷物を取ってきたら、別のスウェーデン人で、映画のことならスウェーデン政府の映像アーカイブで調べてみたら、と教えてくれた人が山から戻ってきていた。旅の後半のそのまた後半で出会い同じ北向きコースを取った人たちの大部分にさよならが言えるとは、、、

いよいよ、アンドレアスくんたちとも別れの挨拶をし、駅に向かって歩き出したが、すぐ思い直してとって返し、スウェーデン人くんにお願いしてアンドレアスくんとのツーショットを撮ってもらった。

Kungsledenでも、「あ、さっき会った人のところまで戻って、、、さっき見たあの景色のところまでとって返して、、、と写真を撮ることを何度も何度も考えたが、なぜか踵を返すことはなかったのか。ま、いいか、とそのまま歩き続けた。たぶん余裕がなかったんだろう。今回は特別。記念写真で本当に最後の最後。さようなら。どこかの道をゆっくり歩いていたら、また会えるかな。

駅までほんの200m。線路の高架に沿った道路を渡ろうとしたら列車の警笛が聞こえてきた。こんどは鉄鉱石の積み出し港ナルヴィックからの回送貨物列車。昨日見た時、まるでフィルムを逆回しして映画の最初のシーンに戻ったような感じになったが、今一度、二重連の機関車に牽引されて空のバケットの列が西から東へ戻って行くのを見送ると、昨日Kungsledenの最後で出くわした時よりもっと、ダメ押しのように僕の「旅の終わり」を悟らされることになった。