Day 29 photo / 0917

アビスコヤウレ⇒アビスコ

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昨夜泊まったアビスコヤウレは「山小屋(ストゥーガン)」と呼べる最後の小屋。Kungsledenの北端、アビスコまで道はあらかた下りで距離も短い。

黄葉した森を抜けるトレイルの眺めを楽しみながら歩いた。ブルーベリーも一杯食べた。。。かったが、アビスコが近づくにつれて人が多くなり道端のを摘んで食べる気がしなくなった。

みんな山歩きというよりピクニックか何かみたい。いままでみたいに一日に数人しかすれ違わないという状況ではなく、若者のグループがワイワイ喋りながら歩いていたり、イヤホンで音楽聴きながら歩いてる。挨拶しても見向きもしない人たちもいるしなあ。。。(別に、挨拶を強要するわけじゃないし、Kungsledenを独り占めしたいわけでもないけど、、、、)

アビスコの街からひと駅離れたところに山岳ステーション駅があり、めちゃめちゃ立派な山岳ステーションが建っている。その手前がKungsledenの終点。いや、殆どの人にとってはスタート地点となる。

終点のゲートに至る少し手前で、木立の隙間から鉱山のあるキールナから積出港のナルヴィクへ鉄鉱石を運ぶ長い長い列車が通過するのを見た時、旅の終わりを実感した。

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この夏に新造された車椅子スロープ。他の山小屋にはなかった。 近々「エライ人」がヘリコプター来るので作ったのだとか、、、。バリアフリー化に反対ではないが、そういうのが理由ってのはなあ、、、
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振り返ると最後の山小屋アビスコヤウレストゥーガンが見えた。

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時々道幅が広くなり、トラクターか何かが通った跡が残る。STFの山小屋以外の小屋も木陰に見え隠れするが、このあたりの小屋への補給はヘリではなく、トラクターかスノーモービルでソリを曳いているのかも。。。少々興ざめ。

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手の甲にトレッキングポールのストラップでタコができてる。。。2016-09-17-13-30-52

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Kungsledenの北端にあるゲート。映画Kungsleden(邦題:太陽のかけら)には出てこなかった。
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ゲートを出て、僕のKungsledenの旅は終わった。

Day 29 text / 0917

管理人のボッセさんとマルガレータさんに出発の挨拶がてら、オヤツの甘いものを買いに行く。チョコレーズンみたいなのを買おうと思ったら、お金はいいから持って行きなさい、って。ありがとう!最後の行程のエネルギーになります。

出かけて、いきなり道を間違える。小屋から100mも離れてないのに、、、。一度戻り、大久保さんを知っているアメリカ人の青年に方向を訊いて、再出発。最後の行程、気が緩んでるな。

湖の畔に沿って数km歩くとプライベートの山小屋らしい小さな建物がいくつか出てくる。そこを過ぎた辺りから今までのトレイルと違い、幾分か道が広くなる。トラクターの轍のような跡も出てくる。薪やその他の補給物資を運ぶのだろうが、だんだん「文明」の地へ近づいている感じがする。

Kungsledenの前半からシンギ以南までは一日中歩いても数人しか人を見かけない日も多かったが、アビスコが近づくにつれ出会う人も増えてくる。中には高校生くらいの若者たちのグループが引率されて歩いてる。おしゃべりに夢中で、ヘイヘイっとスウェーデン風に挨拶しても一瞥もしない。まあ挨拶なんてしないといけないわけじゃないし、いいんだけれど、、、彼らはあまりこういう所へ来たかったわけじゃないんだろうな。。。携帯プレーヤーかスマホのイヤフォンで音楽聴きながら歩いてるひともいる。出会ってきた山歩きの人たちが言う「Civilizastion=文明」の地に戻るのも近い、ってことか、、、

それでも僕はこの最後のレグを楽しみたいから、これまでも早く歩かなかった(歩けない?)のに、今日はことさらペースを落としてる。できる限り周囲にそびえる岩山や遠くの残雪の景色を見、谷を吹き抜ける風や岩に跳ねる水音を聞き、そのせせらぎの水や敷き詰められたように実るベリーを味わい、森の空気をいっぱい吸い込んで木の葉や苔の匂いを嗅ぎ、Kungsledenに満ちているものを体中に染み込ませたい。

そうやって青空の下、明るいきれいな樺の樹林帯を歩続けていたら、僕のKungsleden追想の旅は、貨物列車の警笛であっけなく終わった。映画『太陽のかけら=Kungsleden』始めには、鉄鉱石鉱山のあるキルナとノルウェーの不凍港ナルビックを結ぶ線路を走る長い長い鉱石輸送列車が通過するシーンがある。今までと何も変わらない木立の陰のほんの数十m先に、キルナの鉄鉱石を山積みした逆三角形の鉱石バケットの列が見え隠れするのを立ち止まって延々と眺めた。

第二次大戦中、スウェーデンがドイツにこの路線を通じて鉄を供給したことがこの映画の何かに結び付けられているのかも、ということは、何も知らない15歳の頃に初めて観たときは勿論、この旅に出る前に50年ぶりにdvdで観直した時も気付かなかった。しかしKungsledenを歩くうちに図らずも出会った人たちと語り合う中で、戦時中のドイツとの関係について、’60年代になってもまだスウェーデン人が心に持っていた複雑な感情について知ることになった。まさかその象徴的な貨物列車が出迎えてくれるとは、、、

線路の手前に、きっと映画が撮られた頃には無かったであろう、ログで作られたKungsledenの北端ゲートがある。特に仰々しいわけでもなく目障りなこともないが、、、出発した南端のヘマヴァンにはポツンと道標だけが立っていたなあ。多くの人たちにはこのゲートがスタート地点になるが、へそ曲がりの僕には終点。でも、ナルヴィックに向かう鉱石輸送列車を見送った後には映画の逆回しを観てしまったような気持ちがしたが、ゲートに至った時には特に何も感慨は無かった。普通にくぐり抜けてKungsledenをオフィシャルに終えた。

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ここで、29日間の旅の記録を終わらせるつもりだった。実際Kungsledenの旅はここまでだったし、これから先、残りはただの観光でしかない。ただ、北に向かってアビスコ至る道を辿り、途中の山小屋で何度も同宿だった、僕と同様にへそ曲がりのトレッカー達とアビス・コツーリストセンターで再会した顛末くらいは書いておこうと思い直した。

大きなメインビルディングを中心にコテージなどが立ち並ぶコンプレックスのアビスコ・ツーリストステーションは個室のベッドルームは勿論、ちょっと高めのレストラン、土産物や登山ギアのショップもある、ほぼホテル。ヘマヴァンの山岳ステーションが、飛行場まであるスキーリゾートに建っていたのに、何と慎ましやかに思えることか。まさに文明へ戻った感じ。しかし、今夜はここに泊まるのかよ。。。と半分怖気ながらレセプションへ行ったら、ドミトリー式のホステルもあるって。だろうな、、、 見回したら普通の旅行客とトレッカーが入り混じって行き来している。

受付カウンターで嫌な思いをさせられた。僕の前に、カウンターで手続きか問い合わせをしている人がいて、僕はその後ろで、あまり近づくといかにも急かせているように思われるのもナンだな、とちょっと距離を開けて待っていた。女性の用事が済んで、さてと前に進もうとしたその瞬間、僕の目の前をダッシュでカウンターに飛びついて割り込んだ人がいた。日本人。。。おじさん、本能の赴くままに行動してる。おじさんに近づくのもやだな、って距離をとってたら、今度はおじさんが終わってないのに、僕の前に割り込んだ人がいて、日本人のおばさん。。。僕の方を振り向いて、あら、ごめんなさい、って言うけど退くわけじゃない。。。日本に来る中国人観光客を悪く言う人がいるが、何ほどの違いがあるのかねえ。。。何十年か前に話題になった「恥ずかしい日本人」という本を思い出した。

僕は日本を出るまで知らなかったが、アビスコは日本人の間でオーロラの鑑賞地として有名らしい。残念ながらその夜、ここ数日とは違ってベッタリの曇り空だった。

アーレスヤウレで知ったKungsledenの伝説の日本人、大久保さんのことを思いながら、この北極圏の山の中に来る日本人も様々だな、、、と考えた。(アーレスヤウレやアビスコヤウレで、いろんな人から、次はお前が伝説になれ、と言われたが、、、僕は、大久保さんのような善意に満ちた影響を残すこともできないし、無邪気に振る舞っている観光客のような足跡の残し方もしたくはない。そっと気づかれずに通り過ぎるのが理想。しかし、その割にはいろんな人と関わり過ぎたなあ、、、)

夕方、キッチンでこれまでの小屋泊まりで一緒だった何人かと顔を合わせたので日本人の話題になった。彼らはアビスコにとっては良い客なんだろうけど、僕は、山から下りてきて一番見たくないタイプの人間がわんさかいてガッカリだと言った。ついでに、どうせ儲けるのなら、全天が曇りの日でもオーロラ鑑賞ができるように、雲底にレーザーでプロジェクションマッピングしてやればいい、って言ってやった。大ウケ。開始時間きっちり決めて、ガッポリ料金取って、、、あ、どこからでも見えてしまうからそりゃ無理か、、、

オーストリア人のアンドレアスくんも先に着いているはずだけど、見かけなかった。これまでの山小屋と違い、ホステルでも部屋が多すぎて出会わない可能性が高い。それとも、早く着いて列車で帰っちゃったんだろうか。。。一番ちゃんとさよならを言いたいヤツなんだけどな。。。